気になる事
朝。
僕は朝食を食べている。
目の前には王国騎士の先輩サーシャさん。
もぐもぐもぐもぐ
二人は向かい合って黙って朝食を食べている。
そして僕を見れば歪に歪んでいて腫れ上がっている、顔。
対して僕は、先輩の顔を見れないでいた、、、
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サーシャ「話は理解した。」
先輩は朝食を食べながら
サーシャ「私が酔い潰れてしまったのを介抱してくれたのだろ?」
もぐもぐもぐもぐ
サーシャ「それは、感謝する」
もぐもぐもぐもぐ
もぐもぐもぐもぐ
もぐもぐもぐもぐ
ごっくん
サーシャ「しかし」
と、先輩の動きがピタリと止まる
そしてジロリ、とこちらを睨みつけ
サーシャ「私の裸を見て、あまつさえ、む、む、む、」
サーシャ「む、む、む、胸を」
サーシャ「胸を!」
サーシャ「揉むなどと!!」
ザンッ!!!
机にフォークを振り落とす。
(ひいいいいいいい)
ギシギシ ギシギシ ギシギシ
その衝撃で机が小刻みに揺れている
サーシャ「万死に値する」
その目は、、
確かに殺気を放っていた、、、、、
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もぐもぐもぐもぐ
ごっくん
サーシャ「しかし!」
サーシャ「しかしだ、」
サーシャ「お前の息の根を止めたいのは山々だが!」
もぐもぐもぐもぐ
サーシャ「私にも不備があったのは確かだ」
もぐもぐもぐもぐ
ごっくん
サーシャ「だから」
サーシャ「だから殺さん」
サーシャ「殺さん」
サーシャ「殺さんが」
サーシャ「忘れろ」
サーシャ「いいな?」
サーシャ「思い出したら」
サーシャ「殺す」
先輩のそれは、その道の人もビックリの威圧感で
僕は
人生において、人の手にしたフォークにこれ程震え上がる事があるとは思わなかった。
だから
僕「は、、、はい、、、、、」
僕に与えられた選択肢は はい の一言だけだった。
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サーシャ「良いか!私が先に城へ行く!お前はその後から来い!
くれぐれも私と出動時間が重なるなよ!」
サーシャ先輩はそう言い残し、僕の家から出て行った。
バタン!
勢いよく扉が閉まる。
僕「ふう、、、、、」
それを見て僕は思わずため息をつく。
ようやく緊張の糸を解く事が出来る。
、、、、、、。
今回のはちょっと大型の台風だったな、、、なんて事を思いつつ、城へ出動する時間まで余裕は無いな、と時計を見て思いながら、僕はそそくさと出動の準備を始めた。
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僕は、この国で王国騎士団の一員として 働いている、、、、
今僕は城の中の騎士の駐屯所で朝のうちミーティングを聞いている。
ミーティングには騎士の殆どが参加している。
サーシャ先輩も僕の前方のほうでミーティングを聞いている。
(、、、サーシャ先輩に触れるのは今はやめておこう。)
話しているのは主に騎士団長。
隣に席する騎士団の頭領たる大貴族、ガレスベイル様は全て団長に任せているようで何かを語る事は殆ど無い。
さて、団長の話している内容はいつもと至って変わらず、最近の盗賊団の事とか何処かで事故が起きたとか市民の声とかそういう程度。
特に聞き逃してもあまり問題にはならないだろう。
だから僕はミーティングの最中、別の事を考えていた。
まあ、勿論、昨日の死体安置所の件も気になるけれど、僕が気になっているのは
昨日の夢に出てきたナナミの泣き顔だった。
僕「、、、、、、、、」
ナナミは今、ある人と結婚して幸せにやっているはずだ。
その、ある人とは
団長の隣に座っている大貴族ガレスベイル様。
この人程の財力と統率力を持ってすればナナミが幸せで無い筈がない。
でも、結婚というものは色々あるだろうから、絶対に幸せ、という訳でも無いだろう。
正妻や第一夫人、第二夫人からいじめられてるって可能性も否定出来ない。
あちこち動き回りたいナナミが、家にずっと閉じこもっている事をストレスに感じてるかもしれない。
考えれば考えるほど可能性はいくらでも出てくる。
僕「、、、、、、、、、」
そう。
そうだ。
だから、いくら、考えたところで答えが出るわけでもない。
だから、僕は聞いてみようと思った。
、、、今まで、僕はナナミの事をガレスベイル様に尋ねた事は無かった。
何か聞きづらくて、、、。
、、、、、。
聞くことを躊躇っていた。
でも。
このミーティングが終わったら。
聞いてみようと思う。
ナナミは元気ですか?って。
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