新たなる日常
ナナミが大貴族ガレスベイル様と結婚してから、
僕は騎士団に入団するため村を出た。
村のみんなや、老師はとても喜んでくれて、祝福してくれた。
しかしそこにはもうナナミの姿は無かった。
だから、僕は長年過ごしたこの村を離れるのに、何の躊躇も無かったんだ。
「、、、行ってくるよ、父さん、母さん。」
僕は涙目の母と父に、別れを告げ、
この国の中心都市、のさらに中心の
城下町に、やって来た。
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住み慣れた村を離れてからというもの、戸惑う事が多かった。
都会と田舎の差、知っている人が誰一人いないという差。
王国騎士団長と女性騎士は顔は知っていたが、顔を知っているだけ、の関係だったから、
僕の中ではこの城下町に僕を知っている人は誰一人としていない、という感覚だった。
、、、、、、、、、、。
その生活も一年も続けば慣れてくる。
一日中明るくて、賑やかな街や、家族以外とは馴れ馴れしくしない人間関係、食べるもの、便利な器具。
僕はいつしかこの都会という街に慣れてしまっていた。
そして、
月明かりの、夜。
からん、、からん、、、からん、、、
扉を開けるとお客が入って来ましたよ、という鐘の金属音が鳴る。
僕はいつもの場所に、どかっと、座り、
マスターに"いつものヤツ"を頼む。
マスターは、あいよ、と言って"いつもの酒"を僕は差し出す。
僕「ありがとう」
と、僕は一声かけてから、それに口付けた。
僕「、、、、、、、、」
、、、僕はこの街に来てから酒を覚えた。
何かを忘れようと、
何かを忘れようと思ったら、それは酒が丁度良いと、思ったんだ、、、、、
僕「、、、、、、、、、、」
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マスター「リオウ君、飲み過ぎはダメだよ」
と困った顔して何杯目かの酒を差し出してくる。
僕「分かって、ますよ、、、」
と、言って僕はその何杯目かの酒を受け取る。
僕「、、、、、、、」
僕「、、、、、、、」
僕「、、、、、、、」
僕は仕事終わり、、、、
(いや、仕事終わりだけじゃ無い、か。)
僕は、この時間、毎日の様に、マスターの店に通っていた。
酒を飲んで、帰って、寝るの繰り返し。
そんな繰り返しの毎日、を僕は過ごしていた。
僕「ご馳走様、マスター。おやすみなさい」
マスター「うん、おやすみ、リオウ君。気を付けて帰るんだよ」
からん、、からん、、、からん、、、
扉を開け、店を出る。
残されたマスターは一人呟いた。
「なんだって、王国騎士なんていう立派な職業に就いていながら、彼女の一人もいないのかねえ」
と、
マスターは僕がいた席を片付けてから、店の扉を開け、「OPEN」の札から「Closed」に付け替え、
そして、ガチャン、と扉を閉めた。
、、、、、、、、、、夜は、更ける、、
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ガチャ
僕は郵便受けの中を手で漁り、何も無い事を確認すると扉を開けて家に入った。
僕「はあ、、、、」
僕「疲れ、、た」
と、僕はその着の身着のまま、ベッドに横たわる。
僕「はあ、、、、」
僕は自室に帰ってきた。
家。自室。
石で出来た簡素な作り。
気密性が高く、そこが気に入っていた。
部屋は簡素な作りで物も殆ど何も無かった。
最近は使っていない机と椅子が一つずつ。レターセットとペンとインクが一つずつ、
あとは仕事の為の衣服やら鎧やら、書類やら、武器やら、、、だけ。
最近は手紙を書くのもおざなりになっていた。
だから、家でやる事と言えば寝ることだけ。
別に寝巻きに着替えなくても誰も何も文句は言わない。
だから、僕はそのままの格好で微睡みの中に落ちていった、、、、、、
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夢、、、、
夢を見ていた。
久しぶりに見る夢。
そこは、山の中で、僕は誰かと手を繋いで歩いている。
ぼくは泣いていて、誰かが励ましてくれている。
僕は、その人が好きだったんだ。
大好きだったんだ。
ずっと、ずっと、ずっと、
一緒に、いたかったんだ、、、、、
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ちゅん、、ちゅん、、、
スズメが鳴いている。
朝の光で目が醒める。
僕「ん、、、、、ふあああぁあぁあ」
(朝、か、、、、、、)
僕は伸びをして、起きようとして、
部屋の椅子に誰かが座っているのに気が付いた。
ん、、、?誰、、?
寝ぼけ眼でその人を見ると
「まったく、なんだ、この部屋は、酒臭いぞ!」
と、開口一番、文句を言ってきた、女性騎士
、サーシャがそこに居た、、、。