表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

檸檬味(百合)

作者: 飛鳥井 作太


 夕暮れの教室。

 向かいに座っている麻衣が、ふと本から顔を上げて言った。

「飴玉を口移しするのってあるじゃん?」

 かろん、ころん

 私は、口の中で飴玉を転がしながら、首を傾げた。

「あるじゃんって言われてもねぇ」

「小説とか、漫画でだよ」

「うーん、意外と私はそのシチュ見てないなあ」

「とにかく、あるんだよ」

「はいはい、それが?」

 から、ころん

 飴は、檸檬味。ほどよい甘みと酸味が、癖になる。

「あれって、マジで出来るのかな?」

「ふむ?」

「だって、何か落ちそうじゃない? 途中で」

「ふぅむ」

 かろ、ころ

 飴玉は最初、それなりに大きかった。口を大きく開けなければ、放り込めないほど。

 けれど今はかなり小さくなって、普通の飴玉くらい。いや、もうちょっと小さいかも。

「よし」

「え?」

 私は、彼女の頬に手を添え、顔を寄せた。

 そして。

 ちゅ、と唇と唇が合う。相手の唇をぺろりと舐めて、ノック。開かせてから、こちらの舌を侵入させて。

 ……ちゅる、ころん、ちう

「……出来たね」

「!?」

 麻衣の顔をのぞき込むと、案の定、顔を真っ赤にしていた。

 耳まで真っ赤。よく見ると首も、かな。

 なんて可愛い。

「な、なっ」

「意外と落ちないもんだ」

「初ちゅーだったんですけど!?」

「奇遇だねぇ、私もだよ」

 初めての割には、良く出来た。

 たぶん、こうして、こうかなーくらいだったけど、出来るもんだ。

「ふ、普通、恋人同士でやるもんでしょーが!?」

「恋人になってくれたらいいなあって、脈有りそうだなあって相手にならしてもいいと思わない?」

「!!」

 私は鞄を開けて、また、飴玉を取り出した。

 ぽい、と口の中に放り込む。檸檬の香りが、ふわっと広がる。

 から、ころん

「……ね、どう思う?」

「……いいんじゃない」

 麻衣が、顔を赤くしたまま俯いて言った。

「そりゃあ、良かった」

 私がそう言って笑うと、飴も美味しいしムカつく、という謎の悪態をつかれた。

 けれど、そんな姿も可愛くて、私はもう一度キスしてみようかと少し迷う。


 END.


ベッタベタのネタは、たまに無性に書きたくなります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ