終章 物語の終わり、そして…?
あの事件から大体一年の時が過ぎた。先生たちにたくさん怒られて、警察にも事情聴取をされて、目まぐるしいほどに時間が過ぎていった。私は、兄と唯一無二の親友をなくして放心状態になってしまった。周りの大人やみんなが放心状態の私を放っておいてくれたのは結果としてはよかったかもしれない。
授業も全く身にならず、一部の人間から好奇の目にさらされ続けて、自分自身も何がなんだかよくわからなくなっていた。もしかしたらこれは夢で、目を覚ましたら結衣も、Kもいてなにもかもが元通りになっているとなんども思い続けながら生活していたそんなある日…私は、あの日以来、全くさわっていなかった鞄のなかに一枚の紙切れと時計が入っていることに気がついた。
それは、おにいちゃんの時計と…『mist of the end』の作り方が書いてあった紙であった。それを見た瞬間に私は思った。
「おにいちゃんを殺したのは、この世界なんだ。もしも、この世界がこんなに汚くなかったら今頃おにいちゃんと一緒にくらしていたかもしれない…」
私は気がつけば、またあの日と同じようにトーキョーのなかの実験施設に足を運んでいた。Kと結衣が死んだ場所はもう焼け焦げていたけど、いくつか無事だったところにあの水槽と、たくさんの薬品がある場所を発見した。
今思えば、結衣もきっとこんな気持ちであの施設にいたんだろうな。心の拠り所を失って壊れた心を治すために、無理矢理世界という敵をつくって平穏を保つ。そんなことをしないと生きられないほどに私の心は弱っていたのだ。
静かな研究所に私のポツリポツリと声が響いた。はやく、完成させて仇をとってあげるからね、おにいちゃん。だから、ずっとまっててね。
「この世界に救済を、この世界に終焉を。」