表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/97

45 試験開始

ちょっと遅れました(><)

「第一試験は筆記試験だ。全員用意された机の前に座ってくれ」


 部屋の中に入ってきた男性の指示に従って、グロウ達は部屋の中に用意されていた机の前に座る。リックの話によると、試験の内容は毎年変わらないらいらしい。その中の一つがこの筆記試験だ。Bランクの冒険者ともなると、それなりの権力を持つ立場になる。その立場ある者が読み書きも出来ないのでは話にならないと、この筆記試験では最低限の読み書きや知力を審査するらしい。


 グロウ達が机の前に移動すると、机の上には数枚の用紙が置かれていた。用紙には簡単な問題が書かれている。


 集まった冒険者が全員席に着いたのを確認した試験官の合図で、グロウは問題用紙を眺めた。問題内容は、冒険者規約の確認に魔法数学、そして地図の穴埋め問題だ。


 この程度の問題であれば、ギルドで見た知識と元々知っていた知識で解く事が出来る。魔法数学ならば、ナケアは過去の一流と言われた魔法大学の入試問題まで、エリカも高等学校までの知識を教えてあるのだ。後の冒険者規約と地図は一般常識の範囲であるので、ナケアもエリカも高得点を狙える筈である。


 グロウは安心して、問題用紙に答えを書いて行った。全ての回答を書き終え、3回程見直しを終えた頃に、試験官が終了を告げる。


「次は実力テストだ。戦闘職の者は俺に着いてきてくれ。補助職はあっちにいる職員の元に向かってくれ」


 男がそう言うと、いつからか部屋の後ろに立っていた、グロウ達をここまで案内してきた女性の職員を指差した。


「それじゃあ、ナケア少しの間ナケアとは別行動だな。良いか、ナケア。絶対に、本気を出しちゃダメだぞ? 前の人の魔法を良く見て、その魔法を少し強めた出力で魔法を使うんだ」


「えー、お兄ちゃん達と一緒じゃないの? つまんな〜い」


「でもナケアちゃんは聖術士ですから、補助職なんですよ。ナケアちゃんなら絶対に昇級出来ますから、少しの間頑張ってください。帰ったら美味しい物でも食べに行きましょうね」


「美味しい物! ケーキが良い!」


「良いですね。昇級出来たら、みんなでケーキを食べに行きましょう」


 頬を膨らませているナケアをエリカが宥めると、ナケアは嬉しそうな笑みを浮かべてトテトテとギルド職員の元へ向かって行った。随分とナケアの扱いに慣れたものだと、グロウは心の中でエリカを称賛する。


 その様子を見届けたグロウとエリカも、試験官の元へ向かった。戦闘職の冒険者は多く、部屋にいた冒険者の殆どが試験官の元へ集まっている。補助職の方へ向かった冒険者はナケアを合わせても三人だけ。戦闘職の方へ集まった冒険者の中には、グロウ達を除き魔法が使えそうな者はいないため、魔法がどれだけ軽視されているのか分かると言うものだ。


「戦闘職は全員集まったな。今から訓練場に向かう」


 試験官の男はそう言うと、部屋を出てすぐ近くの扉を開けた。扉の中にはかなり広い空間が広がっている。ギルドの外観からは考えられない位広いその部屋には、微弱だが幾重にも重ねられ、この時代の魔法にしてはかなりマシな精度の魔法が施されていた。

 この部屋ならば、多少の衝撃には耐える事が出来るだろう。


(手加減すれば、俺の攻撃にも一撃なら耐えられそうだな。エリカなら十と言った所か)


 魔法で算出した部屋の耐久度から、グロウは使えそうな魔法を幾つか考えておく。出来る限り、威力の低い魔法を。


 グロウが魔法を考えているうちに、試験官が部屋の中心に魔法陣を描き出した。魔法陣の構成を見るに、召喚獣と言われる、魔力で作られた生物を召喚するタイプの召喚魔法陣だ。魔法陣に込められている魔力から、召喚される召喚獣はBランクの魔物に匹敵する実力を持っているだろう。


 実戦では発動が遅すぎて使えないが、Bランク相当の召喚獣を召喚できる魔法陣を難無く描いているあの試験官は、恐らくAランクの冒険者か、それに匹敵する実力を持っている筈だ。試験官の纏う雰囲気は、騎士であるクライヴやヴォルグに匹敵している。


「この魔法が衰退した時代で、よくあれだけの魔法陣を描けるな」


「そう言えばあの人、何処かで見た事あると思ったら、元シルト騎士団副団長のシルバー様ですよ! 過去に足を怪我して騎士団は引退してしまいましたが、今でも魔法学の研究を続けている、魔法の第一人者です!」


 エリカが床に描かれる魔法陣を食い入る様に見つめながら、興奮して矢継ぎ早に試験官について説明している。勉強熱心なのはグロウも歓迎しているのだが、エリカは偶に知らない魔法に興奮して周りを見なくなる傾向にあるので、これから治して行きたい所だ。


 グロウが周りを見てみると、エリカの説明で試験官が有名人だった事に気が付き、様子を見ていた冒険者がその魔法陣を見て驚いていたり、「おお〜」と声を出している者もいた。


 魔法は使えなくても、このくらいの冒険者になれば魔力を感じる事くらいできる様だ。準備を待っている冒険者達は、すぐさま気持ちを切り替えて、真剣な眼差しを魔法陣に向けていた。


「第二試験は一人一体、この魔法陣から召喚される召喚獣を倒す事だ。倒せなかった者はその時点で失格になるが、死ぬ前に助けてやるからそこは安心してくれ」


 かなり簡単に試験官の男ーーシルバーは第二試験の説明をすると、描かれた魔法陣に魔力を注ぎ込んだ。魔力を注ぎ込まれた魔法陣が光り輝く。


 そして間も無く、魔法陣の中から鋭い爪を持った、雷を纏った虎が姿を現した。


「【召喚魔法:雷光虎(ライトニングタイガー)】か。中々良い魔力をしている」


「制限時間は十分。さあ、準備ができた者から挑戦すると良い」


 雷光虎(ライトニングタイガー)は冒険者を威嚇する様にグルルと唸る。それだけで、何人かの冒険者の腰が引けてしまった。腰の引けた冒険者は失格になるのだろう。シルバーは鋭い目つきで、冒険者の様子を見つめていた。


「では、この俺“水刃のミュレイ”が先陣を切ろうではないか!」


 数人の冒険者が怯んでいる中、一人の冒険者が前に歩み出てきた。その冒険者は、全身を青い光沢を放つ美しい鎧で包んでおり、背中には鎧と同じく青い光沢を放つ両手剣が背負われている。


「グロウさん、あの剣って……」


「ああ、魔剣だな。ただ出来はイマイチだ。低難度のダンジョンで手に入れたか、何処かの付与術士にでも作って貰ったんだろう」


 あの男が背負っていた両手剣は、僅かにだが水属性の魔力が感じられた。強力な効果は期待出来ないだろうが、何故かあの冒険者は自身ありげに雷光虎(ライトニングタイガー)へ向かっていく。


「この程度の獣、我が最強の魔剣の前では無力よ! 唸れ! “激流の水渦(メイルストローム)”」


 冒険者が両手剣を手に取り、雷光虎(ライトニングタイガー)に向けて斬りかかる。その一撃で雷光虎(ライトニングタイガー)が倒れると信じて疑わないその冒険者は気付いていなかった。


 水は電気を通すと言う事に。


「アババババッ⁉︎」


 案の定、その冒険者の剣が雷光虎(ライトニングタイガー)に当たった瞬間に、その剣を通して冒険者に電流が流れる。冒険者が剣を離すころには、丸焦げになった冒険者が頭から煙を上げて倒れていた。それでも一応生きているあたり、あの冒険者は耐久だけは目を見張る所がある様だ。


 その冒険者の様子を見て、グロウは本気でこの時代の冒険者は大丈夫なのかと心配になるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ