0009マスターゴーレムの胃の中で
これでいったん終わりです
「は!? 今なんて!?」
果てしなくとんでもないこと言ってない?
「だからここはマスターゴーレムの体内だよ! マスターゴーレムは生体ゴーレムなのさ。ここは胃にあたる部分でも、生体ゴーレムは食事ではなく空気中のマナを栄養としているから胃はないんだけどね」
「マジか敵の胃の中……また大ピンチじゃん……それにしてもイトウさんずいぶん詳しいんですね」
「そりゃそうさ僕たちがいるマスターゴーレムの体内は僕が作った生体ゴーレムを素体としているからね。いきなり家を襲撃されて生体ゴーレムを奪われこのありさまさ。たぶん外は占領されているだろうし、まだ研究途中で主である僕が死ねば僕の生体ゴーレムの機能を停止するからここに軟禁されているのさ……悪いけど君……僕を殺してくれないかい?」
「三日月っちに人殺しさせる気! 絶対だめだよ!」
「おちつけ月兎俺にその気はない!」
「じゃあどうする気だい? このままマスターゴーレムを放置すけば腕の一振りで小国を消しされる大きさになるだろう……完全に育っていない今しかないんだ……」
「それでも三日月っちに人殺しさせないんだから!」
「美しいお嬢さん……これしか方法がないんだ……僕は魔法のせいで自殺はできない……ツッコミというスキルがあれば別の道があるんだけどね……」
「なら大丈夫だよ! 三日月っちツッコミ大得意だもん!
これでデート再開だね!」
「美しいお嬢さん……これは得意不得意のレベルの話じゃないんだ……スキルとしてツッコミが必要なのさ……」
「大丈夫です! 俺ツッコミスキルとして持っています! てか月兎お前の中のデートの定義はどうなってんだ!?」
「ほんとうかい!? あの稀有なスキル持ちとは……君多分召喚勇者だね……なら光明が見えてきた! 僕のささやかな抵抗でここの警報は切ってあるけど。檻を壊せばさすがにマスターゴーレムも気づかれるだろう……そこで君のツッコミの出番だやり方は――」
◇
「マスターゴーレム様一体どこまで大きくなる気なんた? もうすでにこの屋敷の二倍の大きさはあるんだろ?」
「さあしらね噂だと拳一振りで小国滅ぼせるレベルだとか……」
「マジか人間積みだな! 魔族に寝返って良かったぜ!」
「まあ確かに俺たち頭に角生えている以外普通の人間と変わらんしな! 最近までどっちつかずでやってきたが時代は魔族だな! 故郷の連中も寝返ればいいのにな!」
「確かになここの守りは鉄壁反逆者ももう出てこないだろうし、市民たちは軟禁済み。そういや聞いたか! 魔族が世界を取ったら全ての人間魔族の奴隷だってよ! こりゃ気合がはいるな目指せ奴隷ハーレムだぜ!」
「俺ら下っ端の給料じゃ無理無理!」
「なんだ夢がねーな! 奴隷ハーレムだぜ! 奴隷ハーレム!」
「はいはい! その夢のためにも今だ成長中のマスターゴーレム様見張らないとな! もし何かあって首になったらおしまいだぞ!」
「だけどよ暇すぎだろ……大きくなってるのはわかるが一日中見張っても特に変化がねえ……」
「まあ確かに楽なのはいいが暇すぎだな……」
「いっそ最近召喚されたとかいう勇者が攻めてきてマスターゴーレム様とバトらんかな!」
「いいねそれ! いくら勇者といえこのサイズ差だ絶対負けるだろうし見ごたえありそうだ!」
「いいね! 実はもう勇者がマスターゴーレム様の体内で侵入済みだったりして!」
「はははははははははははははは! ありえねーって!」
「グロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ! 体内ニ侵入者! 体内ニ侵入者! 警戒レベル4二移行!」
「一体いつマスターゴーレム様の体内に入ったんだ侵入者……大丈夫なのか? 最高の警戒レベルって確か5だろ?」
「もしかして転職を考えないといけないかもな……」