残虐のきずな
また時は戻り、白井と黒田が駅の出口の前まで来た頃。
「扉は空いていないみたいだな、それに外のフェンスにも南京錠がかかってる」
「じゃああいつらも出れてないだろうな」
白井が冷静に状況を見た後に黒田が補足する。
とびぬけた観察力、周りにうまく合わせる適応力、二人の能力はよく似ていた。
だからこそ両者とも相手の考えや性格をすぐ把握出来た。自分の性格を知っている人を相手するのはとても楽だった為、二人はいつの間にか常に一緒にいるようになった。
「あいつらの事だから鍵を探しに行っただろう。多分駅長室だな」
「取り合えず合流しなきゃな」
ピローン
黒田が話していると近くから携帯の着信音が鳴った、二人が近くを見渡すと口型の通路の内側にある店の中にある机の上に紙と携帯が置いてあった。
「全く気付かなかった、白井は?」
「俺も気付かなかった、案外精神的に来てるのかもしれないな」
白井はそう言いながら携帯と紙を取りに行った。
今なら仕込めるか、黒田は白井が見ていない間にそれをポケットの中にしまい込んだ。
「携帯取って来たぞ、メールの内容は……箱のパズルが動かされました、なんだこれ?」
「そっちの紙の方は何て書いてんだ?」
「えっと」
ガタッ
「――!?」
白井が読もうとした瞬間、店の棚の裏から物音がした。そして。
「た……助けてぇ、死にたくないよぉ」
助けを求める声。
「俺たち以外にも誰かいたのか」
「そうみたいだな」
黒田の発言に反応した白井は女の声の方へ歩み寄る、黒田もその後ろに続く。
「君大丈夫か……」
棚の裏でうずくまっていたのは女ではなく、黒い何かだった、何かはすでに作られていた槍のようなもの白井に突き出した。
「あっぶねぇぇ!」
すぐに気付いた白井はすぐに後ろに飛んだが、後ろにいた黒田とぶつかり二人まとめて倒れこんだ、しかし黒田はこうなることを知っていたかのように体勢を立て直し左へ飛ぶ。
白井もすぐに右へ転がったがそれでも飛び込んできた黒い何かを避けるだけで、追撃には反応できない。
白井は助けを求めるように黒田の方を向いた、しかし黒田の顔は笑っていた。
黒田は先ほどポケットに入れたナイフを取り出した、それと同時にこの怪物を殺せると確信した。
白井は気が付いていた、この何かは形を成形した場所には攻撃することができると。
黒田は気付いていた。この何かは人を殺す瞬間、無防備になると。だから白井を生贄にした。
白井は別に絶望はしなかった。黒田の性格は理解している。しかし、黒田の憐みの目を見た瞬間、視界が黒くぼやけた。それと同時に突然絶望が込み上げてきた。
俺のために死んでくれてありがとよ。黒田は別に申し訳なさなど感じなかった。そんな感情生き残る為には必要ないと消し去った。しかし、白井の目を見た瞬間、視界が白くぼやけた、それと同時に黒田の心が真実を叫んだ。
白井を殺したくない。
次の瞬間、何かは向きを変え、成形された槍のようなものを、黒田の心臓に突き刺した。
通路が黒田の血で赤く染まる、白井は携帯と紙を抱え無我夢中で逃げ去った。
To be kontinued