ファーストファインド
「渚、お前が黄雷に言ってた……あんただってきれごとじゃないって、どういう意味なんだ?」
沈黙のまま駅の出口を目指している途中、海は何とか沈黙を破ろうと聞いてみた。
「私たちはあの兄弟は互いに競い合って絆を築いていると思っていたわ、多分彼らもそう思っていたでしょうね、でも黄雷は言っていたわ、よくもお兄ちゃんをって、所に行かせてって」
「つまりあいつらの絆は一緒にいることで築かれていたけどそれは表向きに出してなかったと」
「そう、それをプライドのために嘘をついて……火村みたいに人を守るために死んでった」
そう話している間に駅の出口に着いた。しかし。
「鍵が開いていねぇ」
「ここに来る前は壊れてた南京錠も直っているわね」
渚が扉の外のフェンスに付いている南京錠を見ながら言う。
来た時はフェンスの南京錠も扉の鍵も壊れていたはずだ。
「くっそ、ホームのえぐれてた所といいこの鍵といい、まるで時間が戻ってるみたいだ!スマホだって圏外だし!」
「お兄ちゃん、この扉は外側から鍵を開けるつまみって無いの?」
「駅員が消えた事件の時に駅長が用心のために取ったって」
「じゃあ鍵がないとこの駅から出られないってことね」
「……探すか」
「とりあえず駅長室から探しましょう」
渚の提案を飲んで駅長室から探すことにした。
駅長室には沢山の本と資料が棚に入っており、一番奥には大きな机があった。
「壁に鍵とかは……かかってないな」
「棚にも無かったわ」
「机にも鍵はなかったけど……変な資料と箱があったよ」
「お、よくやったぞ陸、渚ちょっと資料の方読んでみてくれ」
「はいはい」
この紙を読んでいる君はきっと僕と同じように変な怪物のいる駅に飛ばされた人だろう、僕は後に飛ばされた人のために、僕の気付いたことを記していこうと思う。
ここに飛ばされもう半日になる、初めは五人いた仲間もあと二人だ、だが分かったことがある、あの怪物は心の弱った者から殺していく、だがそれに気付いた石井がおびえている竹田を犠牲にしようとこけさせたが、何故か竹田を無視し石井を殺した、何故だろう。
きおつけろやつにはぎ
「……そこで終わりかよ、なんだよ、ぎってなんだよ!?」
「書いてる途中に殺されたんでしょうね。なんで書きたかったのかしら」
「うーん考えても分かんねぇし、とりあえず箱見て見るか。陸、箱は?」
「えっと、持ち上げられなかったからまだ机の上にあるよ」
机に近づいてみるとそこには変な模型のようなものが乗った箱が机に固定されていた。
「なんだこれ、上に載ってるのは……チェスのキングとルークか」
「箱の側面にも何か書かれてるわよ、えーと、この中には駅の鍵が入っている、取り出すにはキングを縦横に動かしクイーンのマークが入っているマスまで動かさなくてはならない。ただしキングとルークは障害物に当たるまで曲がれず、二つ合わせて四回しか動かせない」
「なんで謎解きゲームみたいなのがあるんだよ!?」
「いや知らないわよ、意外と防犯性能あるんじゃないの」
あるわけね―じゃんと思ったが渚に言っても意味ないから話を変えることにした。
「どんぐらいムズイかわかんないけど、とりあえず渚解いといてくれ、俺は白井と黒田を探してくる」
「分かったわ、陸はどうするの。ここに残す?一緒に行く?」
「陸は任せる、動き回るより安全だろ。陸、ちゃんと渚の言うとおりにしてるんだぞ?」
「うん、分かった」
「じゃ行ってくる」
俺は用心しながら扉を開けた。