駅の噂
今から丁度十年前の事。
とある高校生がこの駅で投身自殺したそうだ。
どうやらその高校生は高校を留年し、それが原因で親から虐待を受け、投身自殺に至ったらしい。
そして今、俺達はその駅に肝試し大会として来ているのだ。
メンバーは七人。
まず火村とその妹の黄雷、兄弟揃ってかなり強気な性格。
白井、グループ内で一人はいるリーダーシップを持ってる人。
白井と仲が良い黒田、結構黒い性格なのに白井と仲がいいのはなぜなんだろうか。
渚、俗に言うクールな女性、頭はかなりいい。
そして俺、海と妹の陸、陸はかなり怖がりだけどそこが可愛い。皆俺のことをシスコンって呼ぶけど妹思いなだけだからね?
黄雷が中一、陸が小四、他のメンバーは中三だ。
「ここが変な噂のある駅かー、楽しそうだな黄雷」
「肝試しなんて腕が鳴るね、お兄ちゃん?」
後ろで盛り上がっている兄弟をほっておいて俺は肝試し大会のルール等を説明する。
「今日は俺たちの卒業祝いとして肝試し大会をすることになったんだけど、もう一度ルールの確認するぞー、まず…
……以上のルールでやっていきまーす。なんか質問ある人いる?」
「ほーい、ここの怖い噂調べるなって言われてたけどなんで?」
「いい質問だな黒田、そこが今回の肝試しのミソだ。」
「大方肝試し中にその話をしてビビらせようって魂胆でしょ」
「渚お姉ちゃん……お兄ちゃんが悲しそうなんだけど」
「いや、いいんだ、どうせ俺の考えることなんてたかが知れてるんだ……グスン」
「まあ、大体予想つくわな」
「気づいていながらもあえて聞いたのだ、悔しかろう?」
「ただし白井、火村、特に黒田、お前らは許さん」
三対一で勝てるわけなかった。
「じゃあ前置き長くなったけど駅ん中入っぞ!」
ギィィィ
入口のドアは重々しい音を立てながら開いた。
大体八年ぐらい前に肝試しに来た人がカギを破壊したため、今では誰でも中に入ることができる。
「やっぱり汚いな」
「そりゃあ十年も放置されてれば汚くもなるだろ」
「おい白黒コンビ、そろそろ話すから」
グッ カタカタ
「ちょっと皆待っててくれ、り、陸……服掴まられると上手く歩けないんだけど」
とりあえず手を繋いでおくことにした。
「お待たせ、じゃあ始めようか」
今から丁度十年前、高校二年生の浦見思惟という人がいた。
彼は運動も勉強もできないし、友達も全然いないようなまさにダメ人間だった。
彼は高校二年生の最後、留年を知らされた、その後母親からの暴言、暴力で次第に心を病んでいった彼は、留年を知らされた一週間後、投身自殺を行った。
「そこだけ聞くとその思惟って奴、不幸な奴だな、……素晴らしい」
ここには心が腐ってるやつがいたか。
「おい、さっきから怖い話になってないぞ」
「そーよ、全然肝試しになってないよ」
「じゃあ続きを話すとするか」
彼がその駅に行くところは何人もの人が目撃していて、その全員が彼と好井我意という人物が一緒に駅に向かっていたのを目撃している。
我意は自殺直前まで近くにいたため、警察に質問をされたが我意が答えた質問はたった二つだけだったらしい。
だがどんな質問にどう答えたのかは、いまだに公表されていない。
この後我意は学校やインターネット上で、思惟を殺したのは彼なのでは、などの噂が広がり我意は高校を中退、その後我意の居場所は分からなくなってしまった。
「「「「「怖い話をしろってば!」」」」」
「あぅ……だってこの話しないと本命の話ができないんだもん……」
「じゃあサッサと本命の話をしろ!」
「そこまで言うなら仕方ない、本命の怖―い話をしてやろう」
どうせそんなに怖くないんだろうなぁ。
なんか今、皆の心の声が聞こえた気がする。
思惟が投身自殺をした後も、しばらくの間駅は平常通り運行していた。
だがある日を境に悪夢のような事件が立て続けに起こった。
それは線路の点検の日、この駅は労費を減らすため、点検を行うときは行う人だけしか駅内に入ってはいけないように決めていた。
点検日の夜、本来来るべき点検終了の通知が来なかった。
心配になった駅長は急いで駅に向かうと、そこには点検用の道具があるだけで整備士はいなかった。
警察が行方不明となった整備士を探している間も、駅は平常通り運行を続けた。
そして整備の日、また一人整備士が消えた。
流石に危機感を覚えた駅長は次の点検の日、整備士とともに警察官を配置した。
だがその後、その整備士と警察官は姿を消した。
その後、何度も様々な方法で消える理由を突き止めようとしたが整備士や整備に費やした費用が消えるだけだった。
そしておぞましい最悪の事件が起こる前日の夜、ついに雇う整備員も費用もなくなった駅長は自腹で監視カメラを用意し、自分で整備士のように路線の点検を行った。
すると駅長は消えることなく、無事に点検を終えた。
なぜ自分だけ消えなかったのか。もしかしたらカメラを持って行ったのが良かったのかもしれない。
だがそんな考えはすぐに打ち消された。
ガンッ、ガシャァァン
駅長室にいた駅長は驚き部屋を出ると……地獄絵図を見た。
電車は駅のホームで横たわり、ガラスが飛び散り、鮮血がほとばしる。
人々は叫びもせず、ある人は時が止まったように動きを止め、またある人はゾンビのようにうめき声をあげていた。
駅長は警察へ事情聴取をうけ、その夜に姿を消した。
警察は事情聴取と現場の状況から、駅長の行った点検がおろそかだったために起きた事件だと公表した。
それからはこの駅は閉鎖となり、神隠しの起きる心霊スポットとなった。
「「「「怖すぎんだろ!」」」」
スーーーー
「やべえ!陸の血の気が引いている!」
「ううん、これは話のせいじゃない、何か嫌な予感ってよく当たるんだよな。」
「さっきから何おびえてるのよ、怖いって思うのはただの人間の思い込みよ」
さっき叫んでたやつが少ないと思ったら渚か……。
ここに来る途中にはだだっ広いロビー、おそらく本来はたくさんのお店が仕切りを立てて商売をやっていたのだろう、そして改札を越えると……床の一部が大きくえぐれているホームに出た。
「ここで沢山の人が死んだのか、流石の俺も同情するぞ」
「あの程度の話じゃ私たちは怖がらないわよ、見て見て!線路が折れ曲がってる」
黄雷が指さす方を見ると線路が大きく欠損している。
「これは……あんまり見れない光景だな」
皆が線路へ降りてえぐれた部分を眺める、勿論俺も陸を連れて線路へ降りる。
「あわわっ!」
「あぶね!」
突然陸が倒れかける、そして。
「ここにいたら、危ない……」
「そういえば陸って少し霊感があったよう……な?」
なんだ?今線路の先から、光が……。
目を凝らしてみるとそれは。
走ってくる電車!
その電車は他の皆にも見えているらしくそれぞれの声を上げる、「なんでっ!?」「はぁ!?」「ちょっ!?」
陸の嫌な予感は当たってしまった。
ドンッ
To be continued