ヤキモチ
僕、五月雨 氷央は駒井 穂高と付き合っている。と言っても穂高は男だし、ちゃんとした理由もあるのだがまだ言えない。
穂高は会う度にキスやSEXを要求してくるが、僕はそれが嫌いではなかった。僕はMなのだろう。そして今日も彼は要求する。
「氷央、今日はヤらないか?」と彼は言う。いつも直球。そのせいで僕は赤面をせざるを得ない。でも僕はいつも二つ返事をしてしまうんだ。
「はい///」
と。
ドサッと背後から音がし、振り返るとそこには
佐藤 朱夏という僕の本命の彼女がいた。
「え、朱夏?!」
「なんで?氷央は私のものなのに!」
彼女の目にはたっぷりの涙が溜まっていた。
「…す。」
「え?」
「殺してやる!お前なんかァァァァァ?!」
と叫びながら彼女はカバンから刃物を取り出し僕に切りかかってきたのである。彼女はメンヘラだ。
ザシュッと刃物が刺さる音が周りに響いたが僕の体に痛みはない。ゆっくりと目を開けると目の前の床は赤く染まりその中心には穂高がいた。
「…穂高?穂高!!」
僕は穂高に走りよった。
「氷央、良かったじゃないか…ヤキモチ…焼いてもらえたじゃない…か」
穂高の腹部からは血が流れだし止血しようにも抑えただけでは止まる気配はなかった。
「もう喋るな、死んじゃダメだ。」
急いで救急車を呼んだ。救急車が来る間、朱夏はというとカタカタと震え、
「私、わ、私なんて事を…」
と我を失っていた。
病院に搬送された穂高は一命を取りとめたものの、傷口に細菌が付着し感染症を引き起こして亡くなってしまった。
数日後
穂高の葬式が行われた。僕と朱夏も出席したが僕らは自分を責め続けた。
人を殺めてしまった朱夏は自ら命をたち、僕は唯一の親友をなくした悲しみから塞ぎ込み自室へ引きこもってしまった。