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コウタノヤツメ! *翔平 おまけ


 いやに可愛い姿が俺を誘うのだけれど、ぐっと堪えてめいちゃんを送り出し。

 一応、紘太の友達として家にいなければならないので、泣く泣く姉ちゃんと一緒に過ごすことにした。


 紘太のやつめ!


「翔、のど乾いた」

「……何が良いの?」

「炭酸」


 リビングに置いてあるソファーに優雅に座り、自分はテレビを見ながら指先一つで俺を呼びつけ、飲み物の催促。

 逆らう先には後悔しかない事が分かりきっているから、ぐっ、と我慢して種類を聞いておく。


 これで間違っても怒りの鉄槌が降ってくるのだから、姉という生き物は理不尽にしか感じない。

 それでもあまり狭まっていない解答には、一か八かの賭けに出るしか道はなかった。


 番組の最中に何度も質問するとキレるのだ。ほんと、理不尽しか感じない!


 冷蔵庫に冷えている炭酸を探すと、コーラとソーダと果汁の入ったソーダ。


 さて、どれにするか。

 三択なのを喜ぶべきか、三択もある事を嘆くべくか。それもまた問題だ。


「……まぁ、これで」


 片眉をあげながら、どこか投げやりに。それでも運命はかかっているのだけれど。

 一番手前にあった果汁入りソーダを選んで、持っていく。


「はい、どーぞ」 

「ありがと」


 俺の声に反応し、こちらを見ることなく差し出された手に渡し、運命の時を待つ。

 例によって番組が放送中なので蓋を開けて口に持っていくまで気は抜けず。


 ごくりとつばを飲み込み、果たして審判は……。


「っ、何よこれ! 今はコーラに決まってんでしょコーラ!!」


 おら見ろよ、と言わんばかりにここでやっとメンチ切って俺の方を向いた姉ちゃんは、あごをしゃくりCMに入った画面を示す。


 そこに映っていたのは、演技派女優が爽やかにぷはぁと飲んでいるコーラ。


 察するに、さっきもこのCMが流れていたか、番組にこの女優が出ていたか。

 どちらであろうとも、怒られている今はもう遅く。ただだまって説教を受けるばかり。

 CMが終わるまでだとは分かっていても、そのCMがこんな時にはフルバージョンで流れていく。


 のどかなはずの休日に、そんな風にめいちゃんの居ない家で二人きり。地獄である。


 なんで俺はここに居なくちゃいけないのかと思ってみても、分かり切ったこと。


 紘太が悪い。

 紘太がめいちゃんを悲しませたのが悪いんだ!


 そもそも紘太がどうという訳ではなく、姉ちゃんの気質の問題だという事はおいといて。


 見ないふりして。


 悲しいことに!

 辛いことにっ……!!


 もう、それはどうにもならない事だからそっとしておいて!


 全部紘太が悪いということにさせてもらう!


 コウタノヤツメ!


 好きなことを言う割に、威力のなさは自分でも紘太は悪くなく、むしろ不憫な子と分かっているからだった。


 あー、紘太。

 早く来てほしいような、来てほしくないような。

 友達としては複雑な心境です。



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