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もやもやするのも、ぐるぐるするのも。


 昨日から、何だかみんなの様子がおかしい。

 朱莉ちゃんはやけに機嫌がいいし、翔くんは何だかどこか哀れんだ目で私を見てきて。

 あげく、


「めいちゃんは、そのままのめいちゃんでいてクダサイ」


 ははっとどこか疲れたように笑ったのだ。

 私が一体何をしたっていうのさ。まったくもう! 失礼な翔くん。


 それに……紘太先輩も何だか元気がない様子で。いつもの魔性の笑みも、何だか威力が低下していた。


 不思議に思いつつ、たまたま今日も校内であったので、そういえばスイーツバイキングの日にちを決めてないなと思って話しかけると、


「あ、うん! バイキングの方だね! うん。えっと、めいちゃんの都合の日だったらいつでもいいよ?」

「? なら、来週の土曜日は大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫」


 何だか慌てたような反応をされた。


 どうしたんだろうと思いながらも、紘太先輩の言葉に、日曜日は混みそうだなと思って土曜日はどうかと聞いてみる。

 来週なら学校も休みなのでちょうどいいかなと思って。


 するとあっさりと提案が通ったので待ち合わせ場所と、時間も決めて別れたのだけれど。

 昨日よりも様子のおかしい紘太先輩に、不思議さは増した。

 

 さっちゃんもさっちゃんで、昨日の私と紘太先輩と翔くんのやり取りをまるっきり同じに繰り返すことになったし。

 締めの言葉まで翔くんといっしょ。


 なんだか仲良しさんだなぁと思いつつ、なんだか逆に馬鹿にされている気分になるってものです。


 もやもやした気持ちで帰り道を歩いていると、お菓子屋さんが目に留まり。ガラス張りなので、窓の向こうでクッキーを手に取っている人が見えた。


 確かにクッキーも美味しいのだけれど、このお店なら私のおすすめはだんぜんプリン。

 つまり、ここが紘太先輩がプリンを買ってきてくれるお店で。自然と紘太先輩へと思いは飛でいく。


 来週の土曜日が楽しみだな、なんて気分は簡単に上向きになる。


 何を着ていこう?

 バイキングの後はどうしよう?


 先輩と初めてどこかに行くので、楽しみと少しばかりの緊張感を抱いてしまう。


 それに、思ってもみれば翔くんの居ないところで二人きりというのも初めてで。家で翔くんがちょっと席を外しているとか、学校でお話したりはあるけれど。

 どこか外に出て二人きり、という状況に緊張感がより増してしまうのは当然だと思われます。


 うむ。


 そんな風に思いをはせていた、そんな時。

 お店の中から出てくる人がいて、少し距離はあったけれどふと気になって眺めてみれば、それは紘太先輩だった。


 噂をすれば影、ではないけれど。

 思った時に、それに一日に二回も会えたことに心はそっとはずんだ。


 けれど、


「あ、」


 先輩は一人じゃなかった。


 声を掛けようなんて思う前。先輩が出てきたお店から、続いて綺麗な女の人が出てきて。

 そして、先輩の腕に、その女の人の腕がそっと伸びて、拒まれることなく添えられた。


 あまりに自然になされた事に、先輩がそれをそのままにしている事に。


 目が、離せなくて。


 その場にとまってただ、先輩と、その女の人をずっと見つめてしまう。

 すると私の視線に気づいたんだろう、女の人がふいに私の方を向いて。


 目が、合った、ら。

 その人は目を瞬いて、素敵な笑顔で私に向かって手を振った。


 えと、

 あ、


 戸惑いながら、困惑しながら。

 反射的にそれに返そうと力の入らない手で振り返すと、またとびきりな笑顔で返されて。

 そのまま歩みを止めることなく、去っていく。


 繋がれた腕のまま、私たちのやりとりを気にすることなく、一度も振り返らずに先輩も去っていく。


 背を向けた、女の人の髪がふわりと風になびくのが、綺麗で。そんな様子があまりにも、自然で。

 お似合いの、二人だったから。


 だから、なんだか。

 私はなんだか、もやもやして、ぐるぐるした気持ちになった。


 なんだろうと、胸に手をあてて考えてみるけれど。よく、分からなくって。


 けれど、さらに言うなら頭の奥が鈍い感じ。


 あ、これ後で頭、痛くなるかも。遠くで感じる鈍い痛みに、そう感じ取って。


 ……あれ? これって。


 そこまで思って原因に思い当たる。



 家に帰ってみてみると、思った通り。月に一度の女の子の時だった。


「だからかぁ」


 もやもやするのも、ぐるぐるするのも。


 全部、これのせいだと私は思った。



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