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獣人の国 1ー3

お久しぶりです!

随分と更新をしておりませんでした!


「まずはどこの何を案内するべきでしょう?」


 街並みを見る分には襲撃は受けていないようだ。

 一見、賑わった平和な国にも見えるが、これは空元気というやつだろう。民の顔には疲弊の色が隠れきれず、現れている。


「観光名所とかはどうでもいい。出来れば軍事施設のある場所とか、それまでに隠れられそうな場所、情報屋の所とかかな」


 観光名所を本命とした襲撃などあるわけが無い。軍事施設付近の隠れられそうな場所は特に注意しておくべきだろう。

 一般人から見れば、魔人も獣人も変わらないだろう。違和感なく軍事施設に近づける程の脅威はないかもしれない。真っ向勝負よりもよっぽど厄介だ。


「なら、ひとまず情報屋のところに行きましょうか。この時間は仕事前のはずです」


 仕事前なのに会えるのか? という素朴な疑問が生まれたが、会えるというのなら会えるのだろう。

 俺達は覇気を感じられない声が飛び交う大通りから外れ、裏路地へと入っていった。




「へい、いらっしゃい! 開店前に店内に踏み込んでくるとはいい度胸してんじゃねぇか!」


 寂れた扉を開くとそんな、威勢のいい声が飛んできた。

 扉からは想像出来ないほど店の内装はシックで趣のある造りになっていた。


「そこは常連の客ということで大目に見てくださいよ。表の方でも裏の方でも経済的に貢献してるでしょう?」

「まったく、しょうがねぇなー。……で、そこの嬢ちゃん達は? こんな危ない世界に足を踏み込むにはちと年齢が足りてねぇ気もするぜ?」

「一時的な顧客ですよ」


 ワイルドな店主はテーブル拭きを終えたのか、私達の真正面に仁王立ちしていた。

 とてもではないが情報屋をやっているようには見えない。酒場の店主と言った感じの方がしっくりくる。

 しかし、何故かこの店の雰囲気にはマッチしているのだ。不思議、不可解だ。


「あなたが情報屋? 人は見かけによらないものなのね」

「はっはっは! 言ってくれんじゃねぇか、お嬢ちゃん! っても、まぁ俺は情報屋って柄じゃねぇよ。情報屋は俺のかみさんだ」


 やっぱり情報屋ではないらしい。この体で情報を仕入れるのは暴力以外の手段がない気がするしな。

 女性の方が、隠密、色仕掛け、潜入、様々な方法で情報を仕入れやすい。そのため、情報屋は女性の方が多いと相場は決まっていた。


「ミネラさんはお休みで?」

「いーや、あっちの世界の会合に出向いてここにいない。あんたは予約の客にいなかったんだが急用か? こっちのミスなら遠慮なく言ってくれ」

「今日は顔合わせに来ただけですのですぐに帰りますよ。…………もうすぐ稼ぎ時になるとお伝えください」

「……りょーかいだ。国民に手ぇ上げんなよ」

「もちろんです。国民に罪はないのは重々理解していますから」


 なんなんだこの国は? 一体どんな状況で、魔人と獣人が普通に交流しているんだ?

 ここの情報屋も、魔人達の居場所の情報も手に入れているだろうに。それを国に売った時点で破格の報奨金と安全が手に入るだろう。


 それに街の様子もおかしい。国が襲われているからと言って、あそこまで活気が無くなるのはほかの原因がなければ不自然だ。


「ここが情報屋でした。カウンターの左から三番目の席からエールを二杯注文することで利用できます」


 一通り説明を告げられた俺達は店の外に出た。


「さて、次はどこを案内しましょうかね?」

「次は西の時計台、お前達のアジトに案内してくれ。そこで改めて地図とこの国の状況を詳しく知りたい」

「おや? よろしいのですか?」

「さっきお前が情報屋に稼ぎ時になると言っていただろう?」

「ヤハハ、抜け目のないお嬢様ですね。……分かりました、アジトに向かいましょう」


 情報屋にとって稼ぎ時、つまり何かが起こるということだ。

 国規模で騒動が起これば、国からの依頼が来るかもしれない。

 そして、それをこいつが事前に知っていた。つまり、こいつら、第三勢力が事を起こすことに繋がる。



「罠などは外してありますのでご安心を」


 西の時計台、それはこの王都にある巨大な時計台の一つだ。

 その裏手にあたる無人の警備室の床の仕掛けを外すと、不気味な地下へと続いている階段が現れた。


 一同揃いも揃ってビビる……なんてことはなく、普通に階段を降りていった。


「ヤハハ、まずは何を話すべきでしょうかねェ?」

「…………この状況はなに? この国に来て一番不可解だわ」

「フムフム、それは仲間であり、敵であり、尊敬すべき人だからですよ」

「この仕打ちが?」

「すぐに解放します、少しの間だけそうしていてください」


 俺たちはこの部屋に入ると同時に手を拘束された。

 壊そうと思えば壊せるが、相手の意図がわからない。こんなもので身動きを封じられるとは考えていないはずだ。


「ヤハハ、そう固くならないでください。我らは身の振り方を迷っている。力を、素質を、そして心を確かめなければならないのです」


 目に見える範囲にいるのはサフラだけだ。

 だが、気配は数十は感じられる。闇に潜んでいるのは丸見えだ。


「皆殺しにされるとは考えなかったの?」


 イアの疑問は当たり前だ。今ここでフェーカスを含めた全員が暴れださないとは限らない。

 そこまでしても守らなければならないものがあるのか?


「そのための手枷と思っていただきたい。手枷を外す手間があれば……一人はコロセますので」

「っ、今のは敵のセリフよ?」

「そうならないことを願っております」


 殺意はない。だが、目は笑っていない。

 こいつらは殺るだろう。例えこの部屋にいる同士が全滅してでも俺たちを殺しにくる、来なければならない理由があるのだ。


「では、まずは私達の王の話をしましょう……」


 闇に包まれ、静寂に支配された地下で、世界の偽りの秩序が語られようとしていた。

読んでくださってありがとうございます!

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