旅路の冒険 1ー3
「あちゃー、これもダメなのか~。私の所までそろそろ来ちゃうな。あっ、おもてなししなきゃ!」
慌てたように部屋を出て鍵を閉める。物理的などと優しいものではない。壁で閉めるのだ。
「おもてなしって言ってもすることないな〜。落とし穴でも作っちゃおう!」
そう言って、金髪に赤毛という珍しい髪色をした少女は楽しそうに指をくるんと回した。
特に変化は起きていないようにも思えるが、今の行為も大いに迷惑な行動だ。
「ここで終わりね」
「あれは……魔人じゃないわね」
客人達が登場した。二人とも女の子で、見た目通りの年齢だとしたら十代前半、私の年齢を百で割ったくらいかな? けど、魔力は有り得ないほど強い。油断出来ないなー。
「やぁ、よくここまで辿り着いたね! 歓迎するよ!」
「お前が永劫の教団の今のボスってことでいいの?」
あるかな、かるとって何だっけ? どこかで聞いたことがあるような、ないような……思い出せないや。
「その何とかかるとって言うのは分からないけど、とりあえず自己紹介から始めよう! 私の名前はラプラス! よろしくね!」
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こいつはなんなんだ……アジトの一番奥に居座りながら組織のことを知らないのか?
「魔人達はいなかったの?」
「いたよー? お願いして出ていってもらったけど 」
お願いしてって、そんな訳あるか! 組織化した魔人に武力交渉しただけだろ。
いや、洗脳系統の魔法を使って『お願い』したならば、いとも簡単に魔人達を追い出すことが可能か。
どちらにしろ侮っていい相手ではない。何せ、こいつの魔力は……神代の魔力だ。
「……イア、どうしたい?」
「とりあえず、パンドラの情報を聞きたい」
「じゃあ、捕まえるか!」
「ええっ!? なんでそうなったのさ!」
最優先事項はパンドラのことだ。ここがアジトならば彼女が封印されているはず、その鍵は俺の魔力らしいのだが勿論のことながら自覚はない。
てか、こいつ……バレてないと思ってるのか?
これなら、利用できるな。
「えーと、ラプラスだっけ? これはお返しだと思ってくれるといいな(【氷獄魔法】の魔法陣を構築、展開)」
「へっ?」
俺は【氷獄魔法】を遠慮なく発動させた。そしてすぐに【浮遊魔法】を俺とイアに付与した。
これは飛ぶというよりはその場に浮くといった感じだ。この状態で移動するのは骨が折れるのがデメリットだが、【飛翔魔法】よりは魔力消費が大幅に抑えられる。
「あっ、ちょちょちょっと!」
「足元に気をつけた方がいいよ〜」
こいつは俺たちの目の前に落とし穴を掘っていた。どうやったかは分からないが、中々の大きさの空間が空洞となっていた。
俺達はその穴が何らかの魔法によって維持されていると見ていたのだが……間違いではなかったようだな。
いい感じにその空間に土が集められ、狙い通りにラプラスの足元も崩れた。
俺に罠を仕掛けるなど二百年早いわ!
「やってくれるなー! ちょっと遊ぼうよ!」
「イア! 私だけでやる!」
中々の魔法使いだと見受けられた。魔力量に関しても俺とそう大差は無さそうだ。
こんなやついなかった気がするけど……俺の記憶は頼りにならないからなー。
【氷塊魔法】で氷の杭を五本作り出し、掃射した。十分なスペースがあるここならば、戦いの幅も広がるというものだ。
さて、どう来るか?
「んにゃ、こりゃやびぃー!」
魔法を使った気配はない。しかし、俺が放った五つの氷の杭はラプラスに掠りもせずに壁に突き刺さった。
彼女の足は止まらない。そのまま無防備に突っ込んでくる。
「舐めないで!(【爆裂魔法】展開)」
殺す気は無いが舐められていて悔しかったのだ。【爆裂魔法】を展開し、手のひらを彼女の方に向け標準を合わせた。
「ふふっふー! 【結界魔法】発動!!」
「ぶち破れ!(【爆裂魔法】発動!)」
距離は五メートル。その先の彼女の足元に【爆裂魔法】を放った。土煙に飲まれないために後ろに下がった。
「あまいね! このラプラス、このくらいじゃやられないよ!」
バキ、ズドォン。
「…………怪しい」
「ああ、イアの言う通り……怪しい」
「はうっ! わかった、わかったよ! おふざけはここまでにして君達の質問に答えるよ!」
五つの氷の杭のせいでヒビが入っていた壁が崩落した。その中から怪しい培養機などが並んだ、人目で研究室と分かる代物が登場した。
ラプラスは俺たちの放つ『怪しいな〜光線(ただの疑いの目)』に耐えられなくなり、俺達をその研究室の中に招き入れたのだった。
「ここはなんなの? ラプラス、あなたの部屋か何か?」
研究室の奥にはさらに一つ部屋があり、そこは完全に私部屋となっていた。
「うん! 元々はパンドラって人が封印されてたみたいなんだけどね」
「っ! パンドラ! 彼女は復活したのか!?」
彼女が復活するとこが何をもたらすのか、それを俺達は知らない。ただ、世界を恐怖で飲み込もうとした組織の目的だったから阻止した、それだけだ。
記憶的には、ただの女の子が封印されているはずなのだが、彼女に関する記憶のほとんどが欠けてしまっている。
むしろ、彼女の関わった出来事の記憶が欠けていると言っても過言ではない。それだけ、俺の中で大きな存在だったはずなのだ。
現に俺はパンドラが俺の魔力で復活できるのなら、そうしようと思っている。
だが、そのための情報が少なすぎた。どんな危険があるか分からない。
世界と彼女を天秤にかけて、彼女を選べる程の覚悟は、俺にはまだ無い。
「彼女、パンドラは復活したよ……それは考えられる限り最悪の状態でね」
その言葉に呼応し、真っ先に反応を示したのは俺の心だった。
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