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魔王城の双子姫 5ー3

「だ、第一学園?」

「当たり前だろ? 校内にいるくせに何言ってんだ?」


 っ!? 完全にやられた!

 第一学園がある街、アルパ。第二学園からここまで来るのに半日と言ったところか。

 王都に戻るまで、本気を出しても二時間はかかる。

 だが、確か第一学園は王城に繋がる転移ゲートが設置されていたはずだ! それを使えばすぐにでも行ける。


「校長室に案内してもらえないかな? いや、頼む!」

「校長室って、そこの二階だろ?」


 何を当たり前のことを、みたいな風に目の前の校舎を指さした。

 こういう時は校長室に行くのが手っ取り早いと相場は決まっているもんだ。


「ありがとうございます!!」


 俺は校舎に向かって走り出した。イアとフェーカスも無言でついてくる。

 やがて第三学園の校長室とよく似た扉を見つけた。


「失礼します! 第三学園のシャルテアと申します! 至急、校長に頼みたいことがあるのですが」

「第三学園? 弟のとこか! 遥々よくやってきたな! で、頼み事とは?」

「王城への転移ゲートを使わせて欲しい!」

「運がいいな、今から俺も向かうところだ!何をするつもりかは分からんがついてきていいぞ!」

「ありがとうございます!!」


 マジか!? 予想以上の出来だ。これならば敵の予想を大きく上回り王都に戻れる。


「ちょっと待ってろ、五分後に出発だ」

「分かりました、お願いします」


 この五分で方針を決めなければならない。


「イア、魔王城の様子は分かる?」

「三つ子達とは音信不通だけど、魔王様は無事みたいよ。襲撃なんてないそうだけど」


 魔王城に襲撃が行っていない……不味いな。

 戦力が王都に集中している可能性が出てきた。それに、目的も分からない。


「イアは魔王城が襲撃にあっていたら、王都と魔王城、どっちで戦いたい?」

「魔王城」


 そりゃ、即答されるか。最悪、イアとフェーカスには魔王城に行ってもらうか……三つ子達のこともあるしな。

 彼女達が行方不明になってしまった責任は少なからず俺にもある。

 そういった可能性を無視していたせいではないとは言いきれないからな。


「分かった。魔王城に異常があったらすぐにそっちに向かって。フェーカスもイアについて行くように」

「了解です!」


 しかし、何が目的なんだ? 魔人達の国か? それなら森に作ればいい事だし、街を破壊する意味が無い。

 やはり、王城には何かあるのか?

 くそっ、分からねぇ!


「よし! 準備は出来たぞ」

「お願いします!」


 至って普通の門が、壁に取り付けられている。

 しかし、門の中は不透明な何かに覆われているように見えた。

 初めてこれを使った時は、とても足を前に踏み出すのが怖かった覚えがある。


「私の後に付いてきてくれ、王の御前では静かにしてくれよ」

「分かっています」


 通った先が火の海とかだったら洒落にならないが、王城の中に火の手が回っていた場合は手遅れと見て間違いはないだろう。


 その場合は魔力探知を最大限で行い、先輩達を探し出す。第二王子も、一緒の所で捕まえられていれば楽なのだが、どちらにしろ探し出さなければないだろう。


 先に校長が通り、その後に俺が続く。その後すぐにイアとフェーカスも入ってきた。


 景色は王城内部に移り変わった。

 見たところ、戦闘の後はない。目的は魔王城みたいだ。


「ようこそお越しくださいました。第一学園の校長」

「恐縮です、サンドラク・ウィズマーク王」


 目の前に王が現れた。久しぶりという訳では無いが、公演の時よりも顔色は明るくなっている気がした。

 この国には何も起きていないのだろう。


「いきなりで悪いのだが、勅命だ。第一学園の校長、その連れ共々ーーーー死ね!」


 護衛に連れてきていたであろう騎士達が前に出てきて俺達に剣を向ける。


「な、なんの冗談ですか王!」

「聞こえなかったか? 勅命だ」


 まさか……最悪の想定が的中した。

 王は既に敵陣営だ。それならば、大方目的も見えてきた。


「横槍を入れるようで申し訳ございません。王、そこの騎士達は全員が魔人。これはどういうことでしょう?」


 厄介だな。魔力反応を見分けられなければ魔人と吸血鬼の違いが分からない。

 フェーカスと校長は話についていけてないみたいだが、イアは感じ取っていたようだ。


「それがどうかしたか? より強い護衛を使うに決まっているだろう?」


 王が手で合図を送ると、護衛の騎士達はその魔法を解除した。

 黒色の皮膚、間違いなく魔人だ。


「貴様は……エリスフィアの報告にあったシャルテアか。いや、第二王子のシャルク・ウィズマークか?」


 ここで答えることに意味は無いだろう。

 それに、あのことのカラクリを知らない時点で父と母には信頼されていなかった可能性が高い。


「イア! フェーカスを連れて魔王城まで行け! 私も後で追いかける!」


 無言で頷き、ポカーンとしていたフェーカスの手を掴んで走り出した。普段の三倍以上の速度は出ていただろう。すぐに曲がり角へと姿を消した。


「どういうつもりだシャルク、勅命だと言ったであろう? それは無論お前達も含まれていたのだが?」

「私たちの中に吸血鬼はいない、吸血鬼の王たるもの力を示してはどうでしょうか」


 別にこの国に執着する必要は無い。もはや、人間の国に逃げ込んだ方が生きやすいだろう。

 ここで戦闘になれば、隙を見て校長は逃せる。俺は正直いつでも逃げられるが、王の力を見ておきたい。


 現状、盤上の駒をひっくり返す程の奇策は何も無い。だからといって、ただで敗北する訳にはいかないのだ。


「ふん、何処にでも逃げるがいい。その代わりお前の先輩達、母の命はないと思え」


 くっ、人質もこっちが持っているのか! 魔力反応はこの王城にはないが、妙に阻害されている場所がある。そこに捕えられている可能性が高い。


「校長、貴方は戦闘が始まり次第すぐに逃げてください」


 校長の方を見るが、その目は虚ろになり思考は停止しているようにしか見えない。


「無駄だ。貴様は運良く人間だが、基本は吸血鬼の国だ。この指輪がある限り吸血鬼は俺には逆らえまい」


 あれはっ!? 神代の時にも一度見たことがあった。どこぞの神の遺品か!


「種族単位での洗脳ですか」

「知っているようだな。龍脈に接続している、魔力切れを狙うのは得策ではないと言っておこう!」


 王は言い終えると同時に手で合図を送った。

 護衛の騎士達五人が襲いかかってくる。

 あの指輪の有効範囲はそう広くないのだろう。校長をここに呼び出さなければならなかったことから分かる。


「校長、貴様も殺せ」


 校長の腕が不自然に動く。ブリキ製の人形のような動きだが、魔法は構築できるようだ。


「なぜ、魔人と手を組んだんですか!?」


 剣を避けながら情報を抜き出そうと試みる。相手からしたら死ぬのは確定した相手だ。

 情報を与えてくれる可能性は高い。


「強さだ。強くなければこの先の時代は生き抜けない」


 強さ、強さって何をそんなに恐れているんだ?

 それにしても、あまり質の良い魔人たちではないようだな。


「何をそんなに恐れているんですか! (【爆裂魔法】の魔法陣を多重展開、【特殊付与魔法】を展開、付与)」


 話しながらも、【収納魔法】の中から剣を取り出した。

 急がなければ魔王城の方が危ないかもしれない。先輩達には悪いが後回しにさせてもらおう。

 王が人質を持っているならば、まだ人質の価値はある。俺を引き寄せる餌として使えるだろう。


「時代の流れだ。ターニングポイント、再び神代は訪れる!」


 ちっ、記憶が無いだけあって、その後のことは分からない。再び変遷とやらが来ると思ったらいいのか?

 とりあえず、脱出だ。


「そうですか。情報提供ありがとうございます」

「逃げられるとでも?」

「ええ、簡単です」


 魔人達の剣の太刀筋は良くない。鎧には防御系統の魔法がかけられているのか、反撃を考えていない大振りばかりだ。


「こうするんですよ」


 一太刀で二人の鎧に剣を当てる。それと同時に【爆裂魔法】は効果を発揮し、爆発を起こす。

 三人目、四人目、五人目。一発目を防がれても関係ない。

 何のための多重展開か。もちろん確実に吹き飛ばすためだ。


「っ!? そこまでの力を持っているとはな」


 王は驚きながらも腰の剣を抜く。

 装飾が豪華なだけの剣ではないのは見てわかる。指輪と同クラスの兵器だろう。

 無論、そんなものと戦うつもりは無い。


「さようなら!」


 剣を後ろに振り下ろす。一撃で壁に大穴を開けたが、多重展開で爆発し続けるが、それを止めるつもりは無い。

 やがて大穴からは風が差し込んだ。五枚くらいの壁をぶち抜いたようだ。


「無茶苦茶な!」


 焦ったように飛び込んでくる王。隙は無いとはいえないが、悪くない突撃だ。剣の効果によっては負けも十分考えられる。

 迷いなく【飛翔魔法】で、穴を通り抜け、外に出た。

 思いのほか情報も集まった事だし、そんなに悪い結果にはならなかった。


「……不味いな」


 森から発生した魔人は全て魔王城へ向かっていた。

 圧倒的な力も数の前には膝をつく。

 そんな現象が目に見えて起ころうとしていた。

読んでくださってありがとうございます!!

感想等宜しければお願いします。

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