魔王城の双子姫 4ー1
「ということで、学校は辞めて母を追おうと思います」
「そういうと思っていたよ。隣町の第二学園に避難したそうだから行ってみて。それと」
「日常研究部の方は休部ということでもいいですか?」
先輩達との関係を絶つつもりは全くない。上に第一王子がいるのならば色々便利な面も出てくるだろう。今では第一王子ではなく国王だったか。
「ああ、そっちの方は全然構わないよ。それとどうしても君と話したいと言っている人がもう一人いるんだよ」
「誰ですか?」
この後はイアを訪れる予定なので手早く済ませてほしい。
「イアちゃんだったかな? 四つ子のうちの一人が話したいって。夕食の後でも話を聞いてあげてほしい」
「もちろんですよ。俺も彼女には聞きたいことがあるし」
「そうか。じゃあ夕食の時間だ! 好きなだけ食べてくれよ!」
「ありがとうございます先輩」
その後、先輩達と一緒に貧相な食事を楽しんだ。貧相なと言っても貧民街での食事以上だったが。
それとキールなどは俺を死ぬほど探し回っていたという情報を得ている。
今は母の護衛に付き添っているそうだ。そのうち会えるだろう。
「待たせたな」
「いや、本題に早速入りたい。アルフォード、君は何を知り何を知らない? 変遷、その前のことは?」
改めて記憶を探ろうとする。
前と同じ様にあの少女と出会うところまでは思い出せた。しかし、そこからは断片的な記憶しか出てこない。
「パンドラ、ノルン、アポロン、ポセイドン、フレイ、オーディン……あとは思い出せない」
「変遷については?」
「全く知らない」
思い出そうとすると名前が時々、断片的な光景に潜り込んでいた。
「彼らとの関係は?」
「分からない。父との記憶以外はほとんど一人だけだ。イア、お前は何を知っている? 教えてくれ、お前は何者なんだ?」
「…………私はイア。貴方に教える義理もなければ、教えるべき知識も持っていない。でも、一つだけ言える。過去を知っても今は何も変わらない、貴方が気にするのは現在だけでいい」
「……分かった」
確かに過去を知ったからと言って都合良くパワーアップするなんてことは無いだろう。
今は母を守りつつ、父を殺した奴を殺すだけだ。
「もう一つ、これはお願いに近いかもしれない。私はしばらく貴方に同行する」
「理由は?」
「……秘密。それに貴方の魔力の質と同じ魔力を私は使える。リスク対策にも役立つと思うけど?」
「ほ、本当か!?」
俺の魔力が神代の魔力だというのは疑うまでもないことだ。それを持つということは少なくともあの時代と関わりがあるということだが……それが秘密だということか。
「ありがとう、よろしく」
「こちらこそ。で、いつ出発するの? 王妃達が避難したのはナルカだった?」
「あ、ああ。明日の朝に出るつもり」
「そう、じゃあ明日の九時にここで。おやすみなさい」
「う、うん」
こんなタイプの子だったか? 完全にペースを掌握されている気がするんだが、気のせいだろうか?
それにおやすみなさいと言いつつすぐに魔王城に向かってるし。
魔力反応がそれなりの速度で魔王城に向かって行った。
あと俺がすることと言えば、フェーカスはどこだ?
先輩達からも話は出なかったし、探知してみるか。
あれ? この王城にいることになってるな。しかも先輩達の横にいる。……行ってみれば分かるか。
暗闇の中に格段に大きな影はない。むしろ小さな影が一つ。あれ? 人数が一人多い。
……まさかな。
見慣れない顔の少年をポンポンと叩く。
「すいません、まさかフェーカスじゃないですよね?」
「う、……どうしたのアルフォード君」
えっ?マジで?
「お前、まさかフェーカスか?」
「そうだよ? 寝る前もずっと隣にいたよ」
そう言えば、あの時も、この時も、先輩達のところにいた気がする。
「魔法か?」
「んー、あとから獲得した特性って感じだよ」
「その少年がお前なのか?」
「軽く千年は経ってるけど……変わらないよ」
まさか、不老不死? おかしくはないのだが、ペットがここまでとは思っていなかった。
「そ、そうか。起こして悪かったな」
「ううん。それよりもこれからどうするんです?」
「明日の朝この街を発つ。お前もできればきて欲しい」
フェンリルの姿ならば邪魔になるからここの復興でもして貰おうかと思ったが、人型になれるなら話は別だ。
移動手段としてこれ程優秀なペットもそうそういないからな。
「もちろん行きます! ではまた明日……」
これでメンバーはイアとフェーカスか。イアの同行はいつまで続くか分からないが、フェーカスはついて来いと言えば、ずっとついて来てくれるだろう。
このメンバーで組織、『永劫の教団』を滅ぼすのは無理だろうな。
その時になれば魔王達にも手伝ってもらえばいいだろう。
翌朝、
いつかの出国の時と同じ様に雨が降っていた。
「じゃあ行くか」
一応校長には別れを告げておいた。何かあれば頼っていいらしいので、他の学校に何かあれば色々工面して貰おう。
フェーカスは素手、イアは戦斧だった。イアの戦斧も含めいくつかの武器を【収納魔法】に収納している。
この姿はあと四日後の夕暮れ時に元に戻る。
魔力供給さえして貰えるならば反動のことはさほど気にしなくてもいいだろう。
俺達は雨の中、ひび割れた街道を走っていた。
その日の昼過ぎ、雨は止み空には曇天が広がっていた。
そんな頃、俺達は第二学園を訪れていた。
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