魔王城の双子姫 2ー2
皆様、オバケが出ました。
「今お化けだと思ったでしょ!ねぇ、お姉ぇ様」
「ええ、そうね。確信していたわ」
「こら! ミラも、ラミもそんなこと言っちゃダメじゃない! 」
「…………」
初めに話した二人が戦った奴らだろう。
で、念話していたのがもう一人。沈黙している子は分からない。しかし、その子から激しい感情が漏れ出しているのは分かった。
「四つ子なのか?」
バタンと一つ、扉の開く音がした。
コツコツと足音が聞こえる。
「「「魔王様!!」」」
「ほら、ミラも、ラミも、アイも、イアも部屋の外に出ていなさい。このお嬢さんと少しお話するから」
「「「は〜い」」」
「僕も出ていますね」
「ええ、お願いするわ」
走って出ていく四つ子達のあとを、俺に手を振りながら歩いていったエリスフィア先輩。何がどうなっているのか……。
「貴方が魔王か……普通だな」
「ふふ、そのような反応を見せるのはお前だけだ。神代を生き抜いた神共と比べられると流石に分が悪い」
黒髪に黒色の服。目は赤い瞳で、顔は整っていると思う。パッと見たところ、人間と言われても不審には思わない容姿だ。
魔力も桁が違うが……ああ、なるほどな。確かに神を自称しても問題ないかもしれないが、神代でやっていけたかと言われると迷うところだ。
「神とは違った、この世界の真祖ならお前くらいなのか?」
「む、真祖がどう言ったものかが分からないが……心当たりが無い訳でもない。そんなことよりも現状が知りたくないのか?」
「そうだった……なんで私は生きている? 走馬灯も見た気がしないでもないのだが……」
「助けるのは簡単だったぞ? といっても今さっきまでいたお前の連れが居なければどうなっていたか分からないがなーーーー」
俺は気を失った時から今までの事の顛末を聞いた。
墜落していた俺を助けてくれたのはイアという少女で、その時はまだアルフォードの姿のままだったそうだ。
魔王が魔法を解除し姿が元に戻るとイアという少女は何故か大層悲しんだようだが、これは特筆すべき事ではないか……。
そして、魔力の受け渡しを行おうとしたが魔力の質が違う為、俺の体は魔王やカルナムート先輩達の魔力を受け付けなかった。
しかし、その中で魔力の質が似ているエリスフィア先輩が、通常の魔力の受け渡しよりも効率は悪いが何とか受け渡しに成功した。
そして、二週間以上経った今目覚めたそうだ。
「そうか……これは礼を言う必要は無さそう」
「ああ、それはお門違いだ。礼を言うならイアにでも言ってやってくれ」
「……どれ? というかあいつらはなんなの? 四つ子だよね」
「彼女達は私の最高の眷属だ。少々クセが強くなりすぎたが……力はある。四つ子に間違いはないが本人達には言わない方が身の為だぞ?」
「なんで? まぁ、いいけど。それよりイアって子にはどこに行けば会える? あの四人が並んだところで見分けられないよ?」
「イアの部屋はここを出て左の突き当たりの部屋だ。後で訪問してやるといい。それはひとまず置いといて……本題だ。魔人達の計画とはなんだ? 正直鬱陶しいだけだが、嫌な予感もする」
そう言えば、俺達は魔王に会いに来たわけではなかったな。魔人達の計画を阻止するためだったか。
「正体は不明だか、奴らの切り札は不死殺しの魔法……の派生かな。私が知っているものよりも威力は大幅に落ちているけど一応気をつけた方がいい」
「ふむ、お前が目覚める前にも何度か襲撃はあったものの四つ子達の一人がいれば対処できた。ほんの小手調べと言ったところか……。これで以上だ、君達は我を手伝ってくれるのだろう?」
手伝う必要性もない気はしないでもないが、命令ならば仕方がない。仮にも兄からの命令だしな。
「こっちが手伝って欲しいくらいだけど、私達は魔人達の計画を止めるために来た」
「ならば歓迎しよう! 計画とやらを潰すまでゆっくりしていってくれ」
そう言って部屋を出ていった。
とりあえず、イアという助けてくれた少女の所へ行きたいのだが……体が重い。
まだ魔法を使える状態でもないし、身動きがとりづらいな。
いきなりヒマになったな。
あの魔王への仕返しはいつにするか……今じゃ出来ないしな〜。
あっ、でもエリスフィア先輩が他の先輩達に俺が目覚めたということを伝えれば来てくれるだろう。
それまで……気長に待つか…………。
「ん……寝ちゃってたか」
いつの間にか寝てしまっていたようだ。しかし、そのお陰もあってか、魔力はかなり回復した。
これならイアという少女を訪ねることも出来るな。
ドタッ、ゴソゴソ、ベッドの横に誰かいる。布団の裾と擦れる音がした。
俺は布団から出て立ち上がると、そこには赤面した一人の少女がいた。
「えっ……と、大丈夫?」
あまりのことに絶句した。
多分この子は俺の横で俺を見ていてくれたんだと思うのだが、俺が起きたのと同時に落ちてしまったようだ。
どうしてこうなったかは分からないのだが……すごく残念がられている。
顔はすごく整っている。潤いに溢れた空色の瞳、端正な顔立ちは見るものを離さない魅力がある。
「君の名前は?」
「……イア。それより……貴方はアルフォードなの?」
なんで知ってるんだ? ああ、どっかの駄犬が話したのか……おしおきだな。
「アルフォードは男の時、今の私はシャルテアだよ」
「アルフォードにはなれないの? もう会えないの?」
「……多分、会えない」
「そう、やっぱり嫌いだわ」
「えっと、理由は?」
「教えない」
何故か嫌われた。なぜそんなにもアルフォードのことを気にするのか全く心当たりがないな。
「それはともかく、君にはお礼を言わなきゃいけないと思っていたんだ。助けてくれてありがとう!」
「……ふーん。貴方はーーーー」
ドガン!! ドゴォン!!
イアの声を途中で遮るように騒々しい音が響いた。
すぐに探知で確認する。
「まさかっ! イア、君はここにいろ!」
「ちょ、待ってーー」
イアが後ろで何かを言っていたが気にかけている余裕はない。
この部屋から少し離れた場所に二つの大きな魔力反応があった。
一つは魔王、もう一つは何故か懐かしく感じる魔力反応だが、敵なのは間違いない。
俺はこの二人の衝突の被害を軽減すべく現場へと走った。
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