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日常研究部 3ー3

「初等部で暴走した者の手当を急げ! 手が空いている生徒は俺と一緒に他の校舎の救援に行くぞ!」


 一時はどうなるかとキモを冷やしたが何とか持ちこたえた。


 生徒を暴走させていた魔力が途中で途切れた為この程度の被害で抑えられたが……あのまま続いていれば殺すことも考えなければならなかっただろう。


「やぁ、第二王子。今年の初等部は優秀だね」

「中等部ナンバーワン、エリスフィア先輩。校内では第二王子はやめていただきたい」


 王城には顔を出さず、どこの貴族の出かも分からない男。

 あの女と同じ、忌み子ながらに魔法を使うという噂まである。

 登録上吸血鬼となっているが……この男の物は吸血鬼の匂いではない。

 けれども忌み子のものでもない。


「そうだね〜。それよりも、王城はどうなったの?」

「王城っ!? 何の連絡も入っていません! 何かあったのですか!?」


「王城が魔人の集団に襲われたんだ! ここはま」

「任せました! 俺は王城に行く!」


 父上! 母上! どうかご無事で!!


 急いで王城に向かう。使用をまだ許されていないが無属性魔法を使う。


「なんだこれは!?」


 外に人の気配はない。衣服などが散乱しているだけだ。

 しかし、それに構っている時間もない。


「あ……あれは……なんだ!?」


 西の空。

 曇天の闇の中、宙に浮かぶ巨大な影があった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 もう、そろそろか。魔力反応が大きいからすぐ分かるな。

 さっきみたいに全速力で突っ込んでくることは無さそうだ。


「来たな!!」


 化け物が通った場所は森が潰れている。深刻な自然破壊だな。


 倒せるのは倒せるだろうが、学園の裏か……目立つの嫌だな。単に目立つのはいいが、目立ち過ぎるのは好きじゃない。


 あっ! いいこと思いついた!


「オォォーーーーーー!!」


 化け物が吠える。

 地は震え、学生や街に残った人々の絶望の視線が化け物に集まる。


「(【特殊付与魔法】を剣に付与、【無炎魔法】と【氷獄魔法】の魔法陣を展開、付与)」


 無属性と火属性、無属性と水属性で構築されたそれぞれの魔法陣が剣に刻み込まれる。


【特殊付与魔法】は武器などに付与して使われる魔法だ。

 別々の魔法陣の効果を合わせることが出来るようになる。


 今の例で行くと【無炎魔法】の火、【氷獄魔法】の氷、両方の特性を合わせ持つ物質が新たに構築される。

 その新たな物質は魔力を『焼き切る』という効果と、『凍結させる』という効果を合わせ持つだろう。


「さぁ、仕上げだ!(【威力累乗魔法】で三倍の魔力を!)」


 効果を上げるのは三乗、つまり通常の二十七倍の威力を発揮する。

 これ以上の効果を出せば天変地異でも起こせるかもしれない。


 本当の最後の仕上げだ……指輪に魔力を込める。


 これで一分間はシャルク・ウィズマークの姿だ。

 現在の第二王子とそっくりの双子の姿が上空にあったら、本物と見分けがつくだろうか?


「オォォーーーーーー!!」


 化け物の体が光る。

 ーーーー自爆の兆候だ。


 しかし、それを許す道理はない。


 俺は【飛行魔法】で飛び上がり、宙に浮きながら自爆しようとする化け物へ突っ込む。


 紅蓮と天色の魔法陣の刻まれた剣を手に。


「終わりだ!(全魔法陣、発動!!!!)」


 化け物の肉を切り裂く。切断面は凍りつき、周囲は焼け焦げた。


 化け物から発せられた光は収まることは無い。

 操られ、強制的に自爆させられている場合はもう止まることは無いだろう。


 操っていた本人はこの光景を見て笑みを浮かべているのかもしれない。


 光は街を包み込むほどに広がり、やがて消えた。


 しかし、街は無傷、何一つ傷付いてはいない。


 なぜなら、暴走した魔力の繋がりは焼き切れ、拡散した魔力災害をもたらすほどの膨大な魔力は凍りつき、停止したからだ。

 ーーーーーー全ては狙い通りだ。


 すぐさま【魔力探知】で、微かな魔力の動きを感じ取る。


 竜脈の魔力ではない、後付けの魔力にかけられた【氷獄魔法】を解いてやる。

 すると、その魔力は律儀に持ち主の元へと帰く。


 これが洗脳系統の魔法の弱点だ。

 洗脳した相手の中に残った魔力は異物として吐き出され、持ち主の元へと帰っていく。


 魔力を再利用できる点では有効なのかもしれないが、それ以上に逆探知されることの危険性の方がはるかに大きい。


 魔力は王城の方へと帰っていく。

 俺はそれを追い、王城へと向かった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あはっ! 残念だったなぁアスタナ! やっぱりそれを使ってもお前はダメなやつだよ!」


 王城の裏、国の周囲の半分を占める森の中で大きな魔法陣を刻み込んでいる魔人がいた。


「お前は生け贄、本命はこっちだってんの!!」


 ぎゃはは! という下品な笑い声に誘われたのかそこに十数人の影が押し寄せた。


「なんだおめェら? 殺す!」


 その女魔人が目をつけたのは先頭に立つ二人の赤毛。

 どこから取り出したのか、小型の鎌のような武器を両手に持ち、その首を狙う。


「散開しろ! 遠距離魔法で攻撃! 無理はするな」

「「「はっ!」」」


 一人の首が突然闇に消えた。

 しかし、もう一人は悠然と立っている。


 スカッ! スカッ! ガキィィーーン!!


「ひゅ〜、危ない危ない」


 一太刀、二太刀避けられた。

 そして三太刀目は刀で防がれる。

 闇から突然現れた刀。【収納魔法】とは違うだろう。


「この国の……闇の奴らか」

「そんなつもりはないんだけどなー」

「死ねっ!!」


 ザシュッ。ザシュッ。ザシュッ。ザシュッ。ザシュッ。


「はい、お疲れ様。帰ろうか」

「これだから兄は……回収してから帰りますよ」


 影は消える。何事も無かったように。


 俺が着いたのは全てが終わり、もぬけの殻となった時だった。







読んでくださってありがとうございます!!

感想等宜しければお願いします。

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