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日常研究部 3ー2

 ここにいる敵は五人。

 前に偶然遭遇した魔人の方が格上だ。

 力を使わずとも勝てない敵ではない……それでも私は力を解放する。


 道端には生命力を吸い取られ灰となって消えていった大勢の人達の遺品がある。

 それを見ていると力を抑えるなんて考えは吹き飛んだ。


「許さない!」

「ひっ怯むな! 緑髪に帯刀! 間違いない、アスナタ様に報告を!」


 体が変化していくのが分かる。

 血を求めて暴れ狂う理性、それを押さえつけ力を馴染ませる。


 抜刀した抜刀した抜刀した抜刀した抜刀した


 その間、時は止まっているように見えた。

 固定された人形の首を跳ねる感覚。幾度となく繰り返した単純作業。


 ブッシューーーー!! 赤い雨が体に降りかかる。

 きっと理性を持とうが持たまいがやることは変わらないのだろう。


 やり過ぎた……意識が……もう……少し眠る。


 その場に倒れ込んだことまでは分かった。そこからの記憶はない。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「レチエールさん!」


 血まみれの状態だが、本人は無傷で気を失っているだけのようだ。

 一般人が見たら卒倒不可避の光景だ。


 余りにも綺麗な切断面は血の放出を止めることは無い。

 この切断面、まさかレチエールが?


 しかし、今は避難が先だ。魔人の服装も気になる。

 統一されたローブ、これをここに来る前に……まさか!?


【探知魔法】をかける。

【空間探知魔法】の下位互換、魔力反応だけならこの国を覆う範囲を一気に探知することも容易い。


 そこで俺は魔人特有の魔力反応を見つけた。

 数は十一、向かっている先はーーーー王城だ。


『エリスフィア先輩! 王城が狙われた! 私が行くから街のことを頼む!』

『ごめんシャーちゃん! 学園で数十人が暴走した! こっちからは手を貸せそうにない!』


 ブチッと通話が切れる。

 相手は洗脳系統の魔法を所持しているみたいだな。

 ナーサス・コメラも操られていたということで間違いはないだろう。


 そんなことを考えている暇はない。こうしている内に既に王城への侵入を許したようだ。


 魔力反応からして魔法を使用しているようだが……直後に補充されている。


【探知魔法】の範囲をさらに広げる。

 すると、魔人の反応が他にもあった。



 森の中、地図上では何も無いはず。

 ということは……そこか?


 王城も心配だが俺の今の魔力量では勝ちきれるとは断言できない。

 それに……この場所は一番初めの世界で魔力が集まっていた竜脈の真上だ。


 すまない父さん、母さん。


 俺は森に向けて飛んだ。

【飛行魔法】は消費魔力が多いため今までは使うのを避けていたのだが、ここから森までは距離がある。


 時間にして三十秒で一キロ以上の距離を移動した。


 百メートルのところで【隠密魔法】も併用しているが、魔人ならば気づくことも不可能ではない。


 だが、魔力反応からしてそこまで強い魔人はいなさそうだ。

 森の木のせいでまだ視認はできないが、ここまで来れば後は魔力タンクを潰し、魔人を殺すだけだ。


「(【空間探知魔法】、範囲を拡大。これかっ!?)」


 地に埋まった竜脈の魔力がねじ曲げられている。

 竜脈に流れている魔力も俺のものとは違っているが、莫大な量なのには変わりはない。


 竜脈の魔力を探知するのにはちょっとしたコツと慣れがいるため扱いが難しい。

 少しのミスが魔力災害に直結することも不思議ではない。

 そのため、竜脈には制御装置を付けておくものなのだが……。



 しかし、ここまで近づいてもバレないとは、弱すぎないか?


「(【爆裂魔法】の魔法陣を構築、展開)」

「真上だ! 真上に何者かがいるぞ!」


 もう遅い!


「えいっ!(連続して【爆裂魔法】の魔法陣を構築)」


 紅蓮の衝撃が十数人の魔人を襲う。

 手加減? もちろん容赦無しだ。


 しかし、魔人や吸血鬼、竜人族ともなれば、今の俺の【爆裂魔法】では雑魚でも一撃では倒せないだろう。


「支柱を守れ! 守りながら反撃しろ! 敵は一体、高火力の魔法だが、正体は不明!」


【爆裂魔法】を知らない? こんな分かりやすい攻撃魔法を知らないとは……弱いな。


「お前達の目的はなんだ!(【結界魔法】を自身を中心に半径一メートルで展開)」

「構うな! 相手は【結界魔法】 を使用するぞ!攻撃を一点に集中させろ!!」


 対処としては間違っていないが……魔法の選択が悪すぎる。それに威力が低い。


「もういい……さよなら(【爆裂魔法】に【威力累乗魔法】を付与、発動!)」


 俺が使用可能な魔法の中で最も強い魔法の一つ【威力累乗魔法】。

【威力累乗魔法】は魔力を二倍使用した時、効果は二乗向上するといった効果を持つ魔法だ。


 魔力に比例して効果が上がるだけでは物足りなくなって生み出した魔法だ。

 この国……大陸すら吹き飛ばすことは可能だろう。


 今回は二倍に抑えてある。

 それでも十分すぎるのだが……。


 ドッガァァァーーーーーーン!!!!

 予想通りの威力が出たのだが、予想外に被害が大きい。

 予想以上に抵抗が小さかったせいだ。


 青く茂っていた森には半径十メートル以上の穴ができており、完全に地表、そこに緑は一片も存在していない。


 その中央には息がある魔人が五体ほど横たわっていた。


「アスタナ様……ここまでのようです。計画を……進めてください!」


 俺のいる上空七メートルほどの所まで飛んでくる。

 七メートルを筋力だけで飛び上がることが出来るのには本当に感心するが……自爆は許さない。


 魔物を倒した時ほどの大きさは必要ない、一回り小さい、脳を貫くに必要な大きさの氷の槍を作り出す。


 グスッ!グスッ!グスッ!

 ドォォーーン!


 一体、一際マシな魔力反応は自爆するつもりはないらしいが……一体間に合わなかった。


 小柄な俺は爆風を完全には防ぐことができなかった。

 咄嗟に氷の槍と同時構築していた【爆裂魔法】を後に放ち衝撃を和らげ、【飛行魔法】で体勢を元に戻した。


 感覚では二十メートル程だったのだが約百メートルほど吹き飛ばされてしまったらしい。


 ーーーーーーその百メートルが国に大きな被害をもたらした。


 竜脈の魔力を取り込み異形の怪物と成り果てた元魔人が雄叫びを上げた。

 奴の魔力量と俺の残りの魔力量は同等か……それ以上だ。


「オォォーーーーーー!!」


 肉体が進化を遂げ、羽根を生やした化け物が正面から飛んできた。


「やばっ!?(【結界魔法】を最大強度、最低限の範囲で展開!!)」


【抵抗力操作魔法】で重力や空気抵抗力も力に加えるが足りない!

 押しきられっっ!?


 ドガァァーーーーン!!


 痛った!!

【結界魔法】のおかげで外傷はないが、衝撃で肋骨の骨がやられた。


 どうやら俺は街まで吹き飛ばされ、ド派手に突っ込んだようだが悲鳴は上がらない。


 一度飛んだらクールタイムが必要なのか飛んできている気配はない。


 しかし、躊躇しているほどの余裕もない。

 このままではこの国の文化を喰らい尽くすまで暴れ回るだろう。


 俺は【収納魔法】から剣を一本取り出した。

 この世界で初めての本気の攻撃を繰り出せるのはあと二回。


 ーーーーーー俺は魔力を完全に解放した。




読んでくださってありがとうございます!!

感想等宜しければお願いします。

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