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日常研究部 1ー1

 あれから一ヶ月が経ち校内での生活にも慣れてきた。水無月、六月中旬の今日。外は雨が降っている。

 訓練所の音は地面に激しく打ち付ける雨粒の音に上書きされ、学校はザーザーと単調な音に包まれていた。

 いまいちテンションは上がらない。しかし心の中には激しい怒りが燻っていた。

 ーーーーここまで長かった。


 今日、俺は『日常研究部』に本当の意味で初めて参加しようとしていた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 一ヶ月前、この物語が始まった日、五月十五日。


 俺は初めての先輩、カルナムート先輩に呼び出されていた。


「シャ〜ルテ〜アちゃ〜ん!! 呼び出された理由はもうお分かりかね? お分かりだよね?」


 放課後、いつも通り帰宅しようとするところを呼び出された、もとい拉致されていた。


「まあ〜検討はついてます」

「言ってみなさい! ここには日常研究部員しかいないのだから! ほらっ!」


 ……はぁ。軽くため息をひとつ。

 カルナムート先輩とティナ先輩とあと二人。先輩の言動からしてあの二人もここの部員なのだろう。


「私がいつまでもこの部活に足を運ばなかったことですか?」

「そうだよ! なんでなんだい!?」


 ……はぁ〜。深くため息をひとつ。

 まあ理由は無きにしも非ず。これ以上立場が悪くなるような肩書きは欲しくなかったのだ。

『あの部はこの学校の七不思議の一つになっているんだ』

『あの部って地下室みたいなのも持っている怪しい組織らしいよ』

 といったようなデマから真実味があることまで、いい評判はデマでもひとつも聞かなかった。


 とはいえ、ほかの部活も貧民というレッテルを貼られている俺では入部できなかった。


「ここの部活のいい噂を聞かなかったからですよ」

「だろうね! でも、ここの顧問を聞いて驚かずにいられるかな? ここの顧問はっふにゃっ!?」


 後から耳をにぎにぎしている男がいた。顔はニッコリと笑い、細められた目から瞳は見えない。


「ダメだよヤーちゃん、まだ部員になるって決まってないんだしさ。だよね部長?」


 コクリと頷くもう一人の男。眉間にシワがよっていて今にも怒鳴り散らしそうな表情だ。


「……そうですね」


 しょんぼりとした様子に伴い尻尾もしょんぼりとなる。さっきまでフリフリしてたのに……かわいいな〜和む〜。


「シャルテアちゃんだったかな?」

「はい」

「僕達は『日常研究部』。確認だけど吸血鬼じゃないね?」


 コクリと首を縦に振る。


「オーケー。ここの部員は六人、ここにいるメンバーに女子が二人いる。そこで黙っているお兄さんが部長だ」


 ああ、カルナムート先輩一人じゃないんだな。ペット枠にしか今まで見れていなかったけどちゃんと部員なんだな。


「それ以外は話せない。基本的な活動は……そうだな、特にない! というより僕達に仕事がないのが一番なんだけどね」


 どういうことだ? はぐらかされているような、何か重要なことを言っているような……読めないな。

 数百年生きているが、ここまで考えを隠せるのは正直ほとんど出会ったことがない。


「それは入部したら教えてもらえるものなんですか?」

「もちろん、君にもすぐに活動に参加してもらうことになるだろうね、ナンバーツー」


 不敵にニヤリと笑う目の前の男。柄にもなく体に力が入る。

 はぁ、子供相手に何をムキになっているんだか。


「そうだな〜、入部したいと仮定して入部試験を受けてもらおうかな」

「にゅ、入部試験ですか!?」


 こんな部活に入部試験があるのか!? 活動内容が分からないからなんとも言えないじゃないか!


「そうそえ、要は実力を見たいんだよ。今回の相手はティナっちにお願いしようかな」

「俺でいいのか? この禁断の力を解放すればここら一帯焦土と化するぞ?」


「焦土にされちゃったらシャーちゃんの負けだね」


 おおっ!ティナ先輩の厨二変化球をサラリとまともに返球しただとっ!? なかなかやるな。


「ティナ先輩よろしくお願いします」

「ふんっ瞬殺で終わらしてやるぞ後輩」

「決まったようだね、訓練所が空いていたはずだからそこに行こう」


 先輩? っぽい男に先導され第六訓練所にやってきた。訓練所と言ってもこの第六に関してだけは少し違う。

 三十メートル四方の試合場が四つ。下克上試合に合わせて作られた訓練所だそうだ。


 互いに立ち位置につく。対辺の中央に構える。共に武器なし……だったら良かったのだが向こうは槍を装備し、こっちは素手だ。

 武器を買う金を貯めている途中なのだ。半端な武器ではすぐに壊れてしまうだろうし、自分で作るにしても資源がない。


「それじゃぁ〜始め!」


 距離を詰められないことを前提に魔方陣を構築し始める。

 竜人族はその硬い皮膚組織から防御に優れた種族だと言われている。ティナ先輩は火属性を使うことは確定している。

 種族で防御力を、魔法で攻撃力をしっかりと補えているだろう。


 経験上のセオリー通りに行くのならば、【強度操作魔法】で皮膚組織を軟化した所を攻撃する。これがベストだろう。しかし、俺はまだ【強度操作魔法】を使う程の構築速度を取り戻していない。


 いつもそうなのだが、転生前の力を完全に取り戻すには数十年の時がかかる。


 もう一つは皮膚組織を凍結し破壊する。これは単なる【凍結魔法】で行うことが出来る。その空間を指定し凍結させるのだが、相手が動きすぎていると効果は薄い。効果が発揮する前に、効果範囲から離脱される可能性が高くなってしまうのだ。


 よって、セオリー外。

 ーー純粋に叩き潰すとしようか!

読んでくださってありがとうございます!!

感想等宜しければお願いします。

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