貧民街の異端児2ー5
初めてイラストを入れてみました!
主人公シャルテアです!
まだまだ下手くそなので、うまく書けたらまた更新します!
ガラガラ。お馴染みの木製の扉を開ける。足を踏み入れると同時に貴族達特有の見下した視線が肌を刺す。
慣れてきてはいるが不快だ。
貴族のくせに俺に媚を売ってくる変わり者以外は俺を見下したまま変わらない。その変わり者はまだ登校してきていないようだ。
「おはよう、ナンバーツー。何でそんな所に立ち止まってんの?」
「おはようございます、レチエールさん」
扉を開いて立ち止まってしまっていた俺の後ろから入ってきたのは翡翠の様に綺麗な長い髪と瞳が特徴的な女子生徒だ。
「いい加減に慣れないの?」
「慣れても不快なものは不快なんですよ。それよりもなぜこの教室に?」
ナンバーフォー、レチエール・スカランティア。常に帯刀していることから恐れられているが、俺に偏見を持っていない数少ない生徒だ。
呪われた子と言われているが理由は分からない。ともかく、今の俺にとっては大事なつながりだ。
「部活のお断りを入れに来たのだけれど、先生はまだのようね。また来るわ」
「そうですか。それではまた」
ふ〜ん。そういう反応をするんだ。
教室は静まり返っていた。レチエールへの礼儀はなっているらしい。
彼女が出ていったと同時に雑音がまた聞こえ始めた。
ラッキーなことに俺への視線はほとんど無くなった。
「おはようっす!」
「おはようございます」
席に座っていると元気な挨拶が飛んできた。変わり者の貴族タイト・アンフェルだ。どっかで見たようなガサツいた赤毛を持った男子生徒。
初日に勝負を仕掛けてきた馬鹿とはこいつの事だ。あの一件以来立場は逆転している。
「今日も稽古を付けてくださいっす。いや、家に来てくださいっす!」
「君の家に行く気は無いと言ったはずだけど? 稽古なら今日の剣術の時間に付けてあげる」
「ありがとうっす! それではお願いしますっす!」
元気小僧がどこかへ走っていった。何やら影では三流貴族から四流貴族に格落ちだ、アンフェル家も雲行きが怪しいなどと噂されている。
アンフェル家。王城でも噂は聞いたものの実際に出会ったことは無かった。数少ない影魔法を扱うことが出来る一族らしい。
ちなみに俺は影魔法は習得できないことは確定しているので興味はないが、対抗策だけ調べておいた。
対抗策は空中戦だそうだ。吸血鬼は飛べるという前提でしか話をしないから、嫌なんだ。
「では、魔法学を始める。今日は既に経験している者がほとんどかもしれないが魔力属性診断を行う!」
教室が賑わう。魔力属性診断、それは今後の伸び代を大きく決める要素の一つだ。
この世界に存在する魔法を誰でも魔力があれば使えるという訳ではない。四大属性、火、水、風、土に加え、光、闇。特殊例が無属性だ。
ちなみに俺は火と水と無の適性を持っている。
その為、この三属性以外の魔法は使うことが出来ない。それは何度転生しても変わらないだろう。
火属性は火に関連する魔法、水属性は水に関連する魔法、といったように属性は今後どの魔法を覚えるべきかを決めてしまう。
その為、適性がなかった属性は縁がなかったとして諦めるしかない。
これは努力でどうこうなるものでは無い……のだから。
小さな紙が配られる。魔力紙と言われ、それぞれ魔力に応じて反応する紙だ。
未熟な魔法使いは魔素回路の切り替えができず、属性の混濁した魔力が生成される。このことを利用することによって属性の数と種類が調べられるということだ。
「では、魔力を込めてみてください」
言われてすぐ行ったのは俺とタイトだけだった。今後の運命を決めるのだ。プレッシャーがかかるのは当たり前だろう。
「うわっ!? 風か〜」
空気を読まず軽薄な声を上げたのはタイトだ。手に持つ紙はバラバラに裂かれている。本人はその後の紙を見ていない。
「タイト君。最後までしっかりと見なさい。まだ反応は終わっていませんよ」
「へっ?」
「アンフェル家は必ずもう一つ反応があるはずです」
「…………何も起きませんっす!」
バラバラに切り裂かれたように反応した。それは風属性を示す反応だ。アンフェル家は他にも属性を司る血筋なのかもしれないがその紙は風属性単体の反応しか示していない。
「そうですか。アンフェル家の第三男は……残念ですね」
明らかにがっかりした様子の先生。そこまでなのか?
「それではこの用紙に自身の属性を記入してください。今後を決める大事なものです、虚偽はなしですよ」
まあ、見栄を張って誤魔化したところで根本的な才能は覆せない。
魔法は五十パーセントの『才能』と、三十パーセントの『努力』と、二十パーセントの『知識』で構築されるのだから。
その後の雰囲気は決して明るくは無かった。
無論結果が良くなかったなど自身の問題もあっただろう。しかし、一番の要因となったのは俺が無属性を持っているという事実だった。
「流石はシャルテアっす! 無属性持ちとは感服するっす!」
今は剣術の授業中、打ち合いの時間だ。稽古を付けるという約束をしていたタイトと組んでいる。
今日は初めての授業ということで全員の実力を見るために二人一組になり、打ち合いをすると前々から言われていた。
俺の魔法の才能を妬み、その分剣術で痛めつけようと企んでいたのか俺と組みたいと言ってきた奴も何人かいたが丁寧に断らせていただいた。
「始めろ! 互いに本気でいけよ?」
ほう? 保健室行きが多い理由はこれか。いいじゃねぇか楽しそうだ!
「容赦はしないっす!」
「じゃあ、ある程度本気で行く」
同じ学年と言っても相手は吸血鬼、こっちは貧弱な人間の小娘の体だ。
このアドバンテージはどのくらいのハンデになるのだろう?
「はっ!」
上段から力いっぱい振り下ろされた木刀が頭上に迫る。見え見えの太刀筋と半端な速度、体の使い方はマシだがそこまで速いとは言えない。
ーー相手にならなないな!
迫り来る木刀を最小限の動きで避ける。髪の毛が木刀に掠るが気にすることではない、想定済みだ。
次々に迫り来る木刀、想定通りの速度と太刀筋に捉えられるような鍛え方はしていない。
「それだけか?」
タイトの体力がなくなるまで避け続けた。向こうは肩で息をしている。一方俺は深呼吸ひとつで息を整える。
「まだまだっすね」
「何言ってる? まだこれからが本番!」
吸血鬼に筋力の限界はない。ただ肺が疲れただけ、続行可能だ。
「マジっすか!? くっ!」
下段からの振り上げ、中段から横腹への一撃。よろめいて出来た隙にもう一撃、溝内に突きを入れる。
鮮やかな手際に一同の目は奪われていた。
「参った、参りましたっす……」
「あっ、やりすぎた?」
周りを見渡すと嫌悪感と怯えを含む瞳が数多く見受けられる。
先生の口も開きっぱなしだ。
「おいっ、誰かアンフェルの小僧を医務室まで運んでやれ! シャルテアは今から俺と一本勝負だ!」
ざわざわと騒がしくなる。噂のアレらしい。
この筋肉マッチョの先生の名前はケーンサフという。毎年新入生をコテンパンにするという恒例行事を作った人らしい。
クラス内で最も剣術に優れた生徒をコテンパンにすることで向上心を煽るのが目的だそうだが、まぁ賛否両論だろうな。
「魔法の使用は?」
「自己の強化のみ、無属性持ちでもなけりゃ使用禁止だ」
「なるほど、では行きますよ?」
「ああ、いつでも来い!」
その日、俺のイメージは最悪となり『貧民街の異端児』などと恐れられるようになるのだが、この時の俺は知る由もない。
【身体強化魔法】と【抵抗力操作魔法】を発動し、俺は全力で懐に飛び込んだ。
読んでくださってありがとうございます!!
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