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第3話

 やっとの事で森についた俺は、折れて横倒しになっている潅木に腰を下ろす。


「どうしたものか……」


 弱気が口から零れ落ちる。

 まさか、ただ歩くだけで神経をすり減らす世界だとは……。


 しかし、冷静に考えると体力はそれほど使ってない.

 そう、体力的には、まったく疲れていないのだ。


 確か、光の空間で、


【転移先アイルにおいて、生存確率を伸ばす為に、アイルにおける成人、十五歳の身体で転移するように調整】

【副作用として、転移中継空間に存在する人間すべてが十五歳の身体に調整され転移】

【また、この調整によって、さらなる副作用として、身体に若干の変更が発生】


 と、声がしていた。


 ……ってことは?


 俺はいま十五歳で、かつ、身体に若干の変更があるわけだ?

 十五歳の身体はいいのだが、……若干の変更?

 良い事だろうな?

 身体強化とかかな?

 それで、疲れないのか?


 光の空間の神様。

 信じてますよ!

 お願いします!


 鏡を見たら豚顔の魔物になっていて、あらビックリ! 的な展開は、望んでいませんブヒッよ?

 因みに、これはフラグや、振りではありませんブヒッよ?


 ……凄く不安だ。


 そう言えば、【転移先アイルにおいて、十五歳、成人の儀で、祝福スキル授与があることに伴い、祝福スキルを授与】と言っていたな。


 成人の儀における祝福スキルとは、……ゲームやラノベで出てくる、所謂あれかな?


 成人すると、教会に行って、神様にスキルを授けていただく。

 すると、剣のスキルを得たものは、剣の扱いが上手くなる。

 魔法のスキルを得たものは、魔法が使えるようになる。

 気配遮断のスキルを得たものは、気配を消すのが上手くなる。

 ……みたいな感じかな?


 と、言う事は、ここはラノベに出て来る、剣と魔法のファンタジーのような世界?


 で、あるならば、


「ステータスオープン!」



 俺の声と同時に、頭の中に俺のステータスが現れた。


 おおっ!

 やはり、存在するのか!


 さらに、何度か実験したが、声に出さなくても意識するだけでステータスが現れるようだ。

 それにしても、頭の中に文字が現れる感覚は、例えようもなく不思議だ。


 ちなみに、俺のステータスは、





□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 名前:レオ・アイド


 種属:ハイアー(人間の進化個体)


 総合能力値:100


 通常スキル:なし


 祝福スキル:鑑定


□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□




 このステータス……。

 どうコメントすべきか?


 取り敢えず、名前は俺の名前藍土玲央(アイドレオ)が、この世界にあわせて逆になったのだろう。

 しかし、種属:ハイアー(人間の進化個体)?

 進化個体? よく解らない。

 これが、若干の変更ということかな?


 祝福スキルの鑑定は、文字通り、専門的知識・経験・データに基づく分析の、評価・判断結果を知ることの出来るスキルだろう。

 誰の行った評価・判断結果かはわからない。

 しかしそれが、この異世界と言う場所におけるスキルのスキルたる所以。

 そんなことは気にならないと言うのが、異世界的常識なのかもしれない。

 恐らくだが、この世界の神様などが作った一定の基準に基づいて、鑑定結果として示されるのではないだろうか?

 それにしても、光の空間では簡易鑑定のスキルは授与は行われないと言っていたが、それとはまた違うものなのかな?


 しかし、この鑑定スキルは、どこまで鑑定できるのだろうか?

 薬を鑑定したときなど、頭痛薬とか解るだけでなく、その成分とかも解るのかな?


 ……と、ここでふと思いつく。

 ステータスの中身も鑑定できるのだろうかと?


 『祝福スキル:鑑定』の使い方は、自分のスキルだけになんとなく解る。

 例えば、『祝福スキル:剣術』を持つものが、剣の使い方が解る様なものなのだろう。

 俺の場合は、鑑定したいものに意識を向けて、鑑定を望めばその結果が頭の中に表示されるはずだ。


 ものは試しと、鑑定を使って自分の『祝福スキル:鑑定』を鑑定してみる。




 鑑定:あらゆるものを鑑定し、鑑定対象を知る事が出来るスキル。『祝福スキル:鑑定』は、通常スキルとして現れる簡易鑑定や詳細鑑定よりも、上位版の鑑定スキル。

 言い換えるのであれば、鑑定スキルの最上位。

 空気、魔素、神聖文字の鑑定すらも可能。別名、祝福鑑定ともいう。




 と頭の中に、出て来た。やはり鑑定できるようだ。

 どうやら頭の中に現れるステータス画面上の文字や、鑑定結果の文字は、鑑定を使うとその意味を知ることができるようだ。

 頭の中に現れる文字や知識を鑑定するのは、さながら電子辞書を使ったり、インターネットで検索するような感じだ。

 この場合は、鑑定と言うより検索に近いのだろうか?

 どこかにある知識にアクセスして、その詳細を知る?

 ぜんぜん違うかもしれないが、取り敢えず今は便利で使えるスキルであるならばそれで良い。


 しかもこの鑑定スキル、更に詳しく鑑定を望むと、より細かく鑑定できるようだ。

 もっとも今は他にも気になるものがある。

 取り敢えず、気になる他のものも鑑定でざっと見て見る。




 魔素:魔力のもと。自然界に存在する。空気内に含まれる。

 魔力:魔法を使う為に必要なエネルギー体。人間や動物、魔物の体内に存在する。通常、魔素が体内に取り込まれて魔力となる。

 神聖文字:神話の時代、神々が用いたとされる文字。


 祝福スキル:十五歳時、教会神秘の間にて祈る事で、神より授けられるスキル。通常スキルよりも補正効果が大きい。

 通常スキル:生まれながらの才能や、本人の努力の結果、獲得した能力。スキルとしてステータス上に現れると、補正効果がかかり、能力の更なる向上が見込まれる。


 ハイアー(人間の進化個体):異世界からの転移時に、神により身体を調整された存在。通常の人間とは別個体となった者。

 過去のケースでは、神からの恩寵により、人間から枝分かれした種属として、種属:エルフ(人間の進化個体)や、種属:ドワーフ(人間の進化個体)などが存在する。




 ……これを見る限り、俺はハイアーという新たな種族になったという解釈でいいのかな?


 俺、人間止めた……?


 豚顔では、……ないよな?

 奴らの種族は、オークのはず……ブヒッ。


 しかしこの世界、エルフやドワーフが居るのか。

 他にも亜人の種属はいるのかと鑑定してみると、獣人や巨人など様々な亜人も居るようだ。


 まあ亜人についてはもう良いか。脱線しすぎている。

 色々と気にはなるが、後に回そう。


 それよりも、自分自身についてさらに詳しく鑑定してみる。

 するとどうやら俺は、すべての能力が通常の人間よりも全体的に高いらしい。


 具体的に、人間に比べて平均値の何倍優秀とかは解らないが、優秀なのは良いことだろう。

 優秀すぎて悪目立ちしたら困るけど……。


 しかし、能力が上がっていたから、疲れなかったのか。


 確かに目も耳も、格段に良くなっている。

 いま気が付いたが、臭覚も良くなっている。

 恐らく、筋力や五感、本当にすべての能力が高くなっているのだろう。


 ……と言う事は、記憶力などの知的能力も上がっているのだろうか?


 俺の能力の高い身体は、身体能力向上スキルを、種属特性として得ているような状態らしい。

 例えるならば、獣化していないけど、獣人同様の身体能力を得た人間みたいな感じ。

 さらに、魔力も才能ある魔法使い並み、もしくはエルフ並みにあるらしい。


 成長速度も速いようだが、どれくらいかは解らない。

 人外と言うほどの成長力では無いだろう。

 恐らく、才能ある人間と同等か、それよりもちょっと上くらいのものだろう。

 ……何の根拠もない単なる予測だが。


 そして、ステータスで気になる事が、もう一つ。

 総合能力値:100である。




 総合能力値:身体能力、魔力、知力、生命力、魂の力などの総合力。

 世界アイルのおいて、存在としてどれくらいの力を保有するかを数値化したもの。

 これは便宜上の数値であり、絶対的な数値ではない。

 例えるならば、総合能力値:80と、総合能力値:100の存在による戦闘では、その日の体調や戦略、スキルの相性によっても、勝敗は分かれる。

 また、いまだ表出していないポテンシャルなどは数値に含まれない。


 魂の力:魂が保持する力。この力が強いほど、身体能力、魔力、知力、生命力などが強化される。

 また、魂はの力は様々な経験を経ることで強化される。

 これは、筋肉の成長・強化には、筋肉への刺激が必要なように、魂の成長・強化にも、魂への刺激が必要だからである。

 そして、魔物との戦闘は、魂の力の成長・強化に必要な経験値を得るうえで特に有効とされる。




 総合能力値は、強さの指標となる数値と言うことかな?

 俺の、総合能力値:100はどれくらいの強さなのだろうか?

 この世界の平均がわからないが身体能力は上がっているし、当面は大丈夫だと信じたい。


 しかし、魔物との戦闘で、魂の力を強化か……。

 安全確保しつつ、可能ならば力は上げて行こう。

 

 もっと色々と調べたいが、いまはあまり時間も無い。

 いま知るべき事は、取り敢えず、大体終わりかな?


 いや、まて! 

 まだ、問題がある!


 そもそも、外見的特長は人間なのか?

 俺は、エルフやドワーフのように、人間から枝分かれした種族:ハイアーだ。

 もしや、豚顔ではないとしても、外見も変わっているのか?


 ……。


 河豚顔の亜人とか、……ないよね?


 まあ、それもいますぐに確認すべき事ではないか……。


 


□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□




 取り敢えず自分の事がある程度解った為、次に、周りにあるものも鑑定をしてみる。

 当然、環境を知り、安全確保の観点もあるが、何か食べ物が無いかと言うのが主な理由である。

 まあ、他にも有用な、例えば薬のもとになる草とかもあれば採集するつもりだが。


「なかなか無いもんだなぁ……」


 体感的には、森をさまようこと二時間近く。

 これといったものが何も見つからない。

 唯一の収穫といえば、二メートルほどの長さがある、中々手ごろな木の棒が見つかった事。

 鑑定して見ると、『ハドの木』という、鉄並みに硬い木だった。

 カッターで先を尖らせたいけど、硬すぎてどうにもならない。

 重さは普通の木の棒と変わらないし、取り敢えずは棍として使用する事とする。

 持ち手はゴツゴツしているが、軍手をすれば問題なく扱える。


 しかし、硬い木なのは良いが、どうにも軽すぎる。

 鉄並みに重量感があるわけでは無いので、例えば猪や熊などに遭遇した際、ハドの木でぶん殴っても、倒す事はおろか怒らせる未来しか想像できない。


「……ん?」


 しばらく森の中を歩いていると、サラサラと音が聞こえる。

 何かと思って音のほうへ近づいて行くと、小川が流れている。


「おおっ」


 だんだん咽喉も渇いてきていたので嬉しさのあまり、思わず歓喜が漏れてしまう。

 ……この世界に来て一日目だが、急速に独り言が多くなってきた気がする。

 やはり不安があるためだろう。

 精神を落ち着かせようと、無意識に声が出てしまうのだ。


 しかし、今はそんな事よりも水だ。

 鑑定をしてみると、飲み水として飲んでも大丈夫なようだ。


 良かった!

 ピロリ菌とか心配だし。

 俺、お腹弱いし……。


 でも、身体能力は上がっているはずだし、免疫力も上がっているのかな?

 それなら大丈夫なのかな?

 もっとも、この水はそんなこと関係なく飲めると鑑定結果が出ているわけだが。

 それに、何にしても、水ゲットだ!


 と、水を飲もうとして気が付いた。

 地球の鏡の様にはいかないが、川の水に映りこんだ自分を見て見ると、俺は人間のような外見である!


 おもわず、「おおっ」と歓声が出てしまう。

 凄くほっとする。


 若干、見た目が変わったように感じるが、年齢調整もされているし、気にしない。

 地球の頃に比べると、髪が明るい栗色で、肌が白くて、目がグリーンな気がするが、気にしない。

 大体において、俺である。

 豚の顔では無いので、多少の違いは、よしとしよう!




 水を飲み終わり、ひとごこちついていると、目の端に何か動くものが見えた。


「なんだ?」


 一瞬だったのでよく解らない。

 目を凝らして注意深く見るも、藪がその先にあるだけ。

 いや、あの……花? 

 木のように茶色い花が藪の中に見える。

 俺は反射的に鑑定して見る。あれは……もしかすると、ハドの木を別にすれば、初めての収穫かもしれない?

 と、鑑定しなら花に近寄ってよく見ようとした、その時……、


 んっ?


 一瞬だが、藪の先のほうから、「あっ!」と人の声らしきものが聞こえた?

 何だろう? たぶん、人の声だと思うが。

 現地人かな? それならラッキーではあるが、……俺、現地の言葉解らないのだよな。

 言語理解のスキルないし……。


 しかし、考えていても何も始まらない。

 意を決してそちらに向かう。


 棍を握る手に力が入り、唾を飲み込む。

 人の声には思えたが、万一、ゴブリンやオークとかの魔物であれば、目も当てられない。


 緊張しつつも、慎重に、藪を回り込みその先を見ると、……見ると?


 その先はなだらかな坂になっていて、随分遠くまで見える。

 いや、それは良いのだが、問題は五十メートルほど先に、ウサギがいる。

 雪ウサギのように真っ白な毛に、頭には角。

 そして何より、この距離からも解るその巨大さ。

 恐らく、成人男性の腰くらいまでの大きさがある角ウサギ? だ。


 しかし、一番の問題はそこではない。


 角ウサギの足元に倒れ付している女性。


 髪の毛が綺麗な金髪に変わっているけど、あれはたぶん、……北条院クリスティーナ、だよね?


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