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10 お風呂
わたしがお風呂に入っている時、猫はバスマットの上で待っている。基本的にお風呂に入っている時はお湯が飛び散るので扉を閉めている。たまに扉を開けると、猫が入ってくる。だが床が濡れているのが嫌なのだろう。手足を振って水気を散らしながら進む。そして、湯船に入っているわたしを見て中を覗く。お風呂の中に入ってくるかとわたしがわくわくしていると、そのまま踵を返して出ていく。わたしはそんな猫に声をかける。
「ちゃんと足拭いてから出てよ!」
しかし当然のことながら猫は聞いていない。わたしがお風呂から出ると、猫の足跡が点々とついている。
また別の日湯船のお湯を抜いていると猫が入ってきた。そして湯船の縁に飛び上がった。湯船の縁も濡れていたのだろう。猫は滑って湯船に落ちてしまった。あっ!と驚いたが、お湯はほとんど抜けていた。しかし、猫はびっくりしたのだろう。慌ててお風呂から逃げていった。そして、濡れた体を毛繕いしていた。
猫はもうお風呂には入ってこないかもしれない。




