11 いたずら
ウチのキッチンにある椅子にはわたしの上着を掛けてある。椅子の下に猫が隠れるためだ。椅子の下に隠れてわたしを驚かせるのが猫の楽しみのようなのだ。わたしが椅子の近くを通りすぎる時、猫がばっと椅子の下から出てくる。
「わー、びっくりした」(棒読み)
猫が出てくることがわかっていても驚いてあげなければいけない。わたしが驚いたことに満足した猫は尻尾を立てて去っていく。驚かせることに成功したと思っているのだろう。立て掛けてある鏡の後ろから、飛びだしてくることもある。頭だけ隠れて、お尻が出ている。「頭隠して尻隠さず」という言葉が脳裏に浮かぶ。しかし、本人(猫)は気づいていない。そこが可愛いのだが。同じようにわたしが鏡の横を通りすぎる時に飛びだしてくる。
「わー、びっくりした」(棒読み)
やはり驚いてあげると猫は尻尾を立てて去っていく。その後ろ姿をわたしはニヤニヤしながら見守る。
そんな時わたしがぼーっと歩いていると、猫がキッチンにある椅子の下から飛びだしてきた。
「ぎゃあ!」
本当に驚いた。猫は満足したように尻尾を立てて去っていく。わたしはドキドキする心臓を抑える。そうだ。猫はどこに潜んでいるかわからない。油断は禁物だ。
しかし、わたしの決意もむなしく、猫に驚かされる日々となりつつある。




