跳び箱さん
※磯貝孝雄のスマートフォンデータより。
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■テキストファイル201507202349
この文章をどれだけの人が見てくれるのか見当もつきませんが、僕には、書くという選択肢しか残されていません。
決して強制されている訳ではないのですが、ここに至る経緯から察するに、この残された時間は、自身の犯した罪を告白するために与えられたのだと、そう解釈しています。
救出される見込みは薄いでしょう。何より、この文章をどなたかが読んでいるのだとしたら、その時点で、僕は、もう死んでいるということになります。
誰が最初に読むのでしょう。警察でしょうか。それとも数年会っていない実家の両親でしょうか。しかし、そんなことはもはやどうでも良いことです。
本来ならば、先立つ不孝を、などと謝罪の言葉を書き連ねるべきなのかも知れませんが、僕にはそれよりも先に謝らなければならない人がいるのです。
もう覚悟は出来ています。その人への懺悔のため、この物語を綴ります。
事の始まりは二週間前。
幼馴染の山崎悟志から電話を貰ったのです。
高校卒業と同時に地元を離れて十年以上、親友と呼んでも差し支えのない山崎とでさえ連絡を取り合うのは久し振りでした。
そんな所為もあって随分と長く話をしたのですが、用件のみを手短にまとめますと、母校である柳野小学校が廃校になるので有志で式典を行う、とのことでした。
柳野小学校は創立八十年を越す歴史ある学校です。ところが、近年の少子化により生徒数が大幅に減少、本年一学期をもって閉校することとなったそうです。
しかし、あいにく式典の日、つまり今日は、仕事が入っていたため、僕はその後に行なわれる同窓会のみ参加することにしました。
正直あまり気乗りはしませんでしたが、山崎に来て欲しいと頼み込まれ、断ることが出来なかったのです。
彼曰く、有志は未だ地元で生活している人達が中心となっていて、自分と同年代の者がいないから寂しい、とのことでした。
事実、同窓会に出席してみたところ、四十人ほどの参加者がいたものの、老人と二十歳そこそこの若者ばかりで、知っている人は、ほぼいませんでした。
とは言え、長年同じ地域に暮らしている者同士ですから、僕が仕事を終えて会場に到着した際には、既に山崎は周りの人達と打ち解けて、楽しそうに酒をあおっていました。
なお、会場は旧校舎です。
全面木造の二階建てでレトロな風情がある建物です。僕達が在学中の頃はまだ普通に利用されていましたが、現在は封鎖され、窓は木の板で閉じられています。
僕が到着したのは夜七時過ぎで、いったい何時から飲み始めていたのかは分かりませんが、ほとんどの人が良い具合に酔っていました。その為、山崎の周りの人達は、初対面にもかかわらず、非常に親しげに話し掛けてきました。
酔っ払いなどこんなものだろうと思い、適当に相槌を打っていると、次第に話題は、其々の小学生時代の思い出話になりました。
こんなことがあった、あんなことがあった、という他愛もない会話の中、一人の青年が、ふいに聞き慣れない単語を口にしました。
『跳び箱さん』
それは、いわゆる学校の怪談でした。
深夜に旧校舎の中を跳び箱が徘徊し、その箱の中から、「ここから出して」という少女の声が聞こえてくるそうです。そして、声に応じて跳び箱を開けると、箱の中に吸い込まれてしまう。
いかにも子供が好きそうな荒唐無稽な話です。一緒に話を聞いていた人々の中には笑い声をあげている者もいました。
そんな中、山崎だけは真剣な面持ちになり、僕のほうを向いてこう言いました。
「神隠しごっこの亜種だな」
僕は小さく頷きました。
跳び箱さんの話をした青年と僕達とでは十歳ほど歳が離れている訳ですが、僕達が小学生だった頃にも似たような話があったのです。
その後、夜九時前に宴は終了となりました。
もう廃校となり、ひと月もしないうちに解体が始まるとはいえ、旧校舎は自治体の管理する施設であることに変わりはありません。その為、戸締りは必要です。
そこで山崎と僕が戸締りを請け負うこととなりました。
校舎の入り口で参加者達を見送り、山崎と二人きりになると、彼は唐突に語り出しました。
「俺達が卒業してから跳び箱さんの話は出来たみたいだな」
そういった趣旨のことです。続けて、こう僕に問い掛けてきました。
「お前、宮路のこと覚えてるか?」
忘れるはずがありません。宮路早苗は、僕が小学生の頃に好きだった子です。
僕は、「覚えているよ」と、短く返事をしました。
「磯貝。俺、思うんだけどさ、跳び箱さんって宮路じゃねえのかなぁ?」
何も返答をすることが出来ずに黙っていると、彼は提案をしてきました。
「跳び箱さんを探しに行こうぜ。お前は断れねえよな?」
亡霊など存在する訳がなく、馬鹿馬鹿しいとは思いましたが、山崎の言う通り断れない事情が僕にはありました。
なぜなら、彼女が行方不明になった原因を、僕達が作ってしまったからです。
山崎の言うまま、僕は旧校舎の中に戻りました。
その時です。背後から金属と金属が擦れ合うカチャカチャという音が聞こえてきました。振り向くと、山崎が扉を外から封鎖していました。あらかじめ持参していたのか太い鎖で観音開きの扉の取っ手と取っ手を結んでいたのです。
慌てて、「何してんだよ」と叫ぶと、彼は醒めた面持ちでこう言いました。
「宮路は行方不明なんかじゃない。お前が殺したんだろ?」
彼は、全部知っていたのです。
全ては二十年前の夏の出来事が発端です。
当時、僕達の間では、『神隠しごっこ』という怪談が流行っていました。
旧校舎の階段の下には使われなくなった体育倉庫があり、そこに置かれた古い跳び箱の中があの世に通じているという話です。
夜に跳び箱を開けると、そこにはトンネルがあり、それをくぐると二度と戻ってこられない。
よくよく考えてみれば、二度と戻ってこられないことを誰かが知っている訳がなく、作り話であることは明白です。しかしながら、子供達を怖がらせるには十分な話でした。
ご多分に漏れず五年生だった僕も山崎も、その話題に夢中になりました。
そしてある日、山崎が提案をしてきたのです。
「誰かを、跳び箱の中に入れようぜ」
その提案に対し、「誰を?」と聞き返すと、彼は宮路を指差しました。
宮路早苗は、顔立ちは整っているものの、高飛車な性格が災いして、クラスの中で浮いた存在でした。
ただ僕は、そんな彼女に密かに恋心を抱いていました。
山崎からの提案を聞いて、これは彼女と近付くチャンスかも知れない、と、子供ながらに打算的なことを考え、僕は計画に応じることにしました。
宮路に声を掛けたのは山崎です。
「神隠しごっこ、やらね?」
そう切り出して詳細を伝えると、彼女は鼻で笑う仕草をしました。
「くだらない」
そのような言葉を返してきたと記憶しています。
それに対して、山崎は嫌味っぽく述べました。
「宮路はお化けとか信じてねえんだ? だったら怖くねえだろ?」
安直な煽り文句です。
彼は最初から彼女の強気な性格を利用するつもりだったのでしょう。その後、少しばかり口論となり、結論を言うと、宮路は僕達の誘いに応じてくれました。
計画の詳細はこうです。
深夜一時、家を抜け出して三人で倉庫前に集合。それから宮路を跳び箱の中に入れる。噂ではあの世へのトンネルは深夜二時から日が昇る頃までの間に開くとされていたので、そのまま宮路には箱の中に留まって貰う。
ところが、約束の日時に山崎はやってきませんでした。
宮路と二人きり。気不味い雰囲気が漂いました。そこで、僕はその空気を払拭するために、「二人で計画を実行しよう」と述べました。
彼女は無言で頷きました。
跳び箱を開き、宮路が中に入る。すると、ずっと無言だった彼女の声が箱の中から聞こえてきました。
「ごめん、磯貝君。やっぱり怖い。出して……」
今まで聞いたことのない弱気な声です。
ここで出してあげていれば彼女と懇意になれたのかも知れませんが、子供特有の意地があり、その言葉を無視しました。
それどころか、僕は、箱の上に重石を載せました。
旗を立てるための中央に穴のあいたコンクリートの塊です。それを、幾つも、幾つも、積んだのです。
そうしなければ友人達に馬鹿にされるような気がしたのです。色気に負けて計画を実行できない奴、そんなレッテルを貼られるか否かは、幼い頃の僕にとって重大事でした。
「出して……」
その後も、悲痛な声は繰り返されました。
僕はそれを聞くのが耐えられなくなり、彼女をそのままにして家に戻りました。
そして翌朝、当然ながら彼女は教室に姿を見せませんでした。
対して、山崎は僕のところに笑みを浮かべながら近付いてきました。
「昨夜は楽しかったか? お前、宮路のこと好きなんだろ? だからさ、実はお前達をくっつけようと思って今回の計画を考えたんだ。今日、宮路は?」
僕は肩をすくめ、「自分も倉庫に行かなかった」、「宮路は神隠しにあったのかも知れない」、そう告げました。
そして、休み時間に急いで体育倉庫に向かいました。
重石を取り除き、蓋を開ける。
そこには、グッタリと横たわる宮路の姿がありました。
声を掛けても返事はなく、揺さ振っても反応がありません。薄暗い箱の中、彼女自身から闇が発せられているかのようでした。そう、宮路は死んでいたのです。
おそらく熱中症が原因でしょう。ただ、その頃の僕にはそんな知識はなく、何らかの呪いによるものと考え、即座に逃げ出しました。加えて、その日の放課後に量販店で南京錠を買ってきて体育倉庫を封印しました。
もともとそこは使われていませんでしたし、更に怪談の所為もあって、近付く人はいませんでした。また、旧校舎自体が封鎖されたため、その後、宮路の遺体が発見されることはありませんでした。
「跳び箱さんを探してこいよ。そうしたら出してやるから」
山崎がどこまで本気なのか計り切れませんでした。逃げ出そうと思えば入口のガラスを割ることも、窓にある木の板を外すことも容易です。
僕が困惑していると、彼は話を続けました。
「お前、俺も宮路が好きだったってこと知ってたよな?」
僕は目を伏せて首を縦に振りました。
「それでも俺は宮路を譲ったんだ。それが……別にお前のことを恨んでいる訳じゃない。でもさ、このままにしてたら駄目だよなぁ?」
その言葉は彼の言う通り糾弾する風ではなく、むしろ懇願に近い色を帯びていました。
かつて僕と山崎は一人の少女に恋をした。しかしそれは二十年前の話。今となっては僕達にとって、宮路という存在は重責でした。この校舎が解体されることを知り、山崎なりに、ケジメをつけようと考えたに違いありません。
僕は山崎の指示に従うことにしました。『跳び箱さんを探す』、それはあくまで隠喩であり、本来の目的は宮路の死を世間に対してつまびらかにすること。
そこで早速、階段の下にある体育倉庫に向かいました。
先程までは煌々と灯りがともっていたのですが、山崎が既にブレーカーを落としたのか、電気のスイッチを押しても一切反応がありません。致し方なく非常口を示す緑色の小さな光だけを頼りに、僕は廊下を進みました。
薄暗くとも間取りは一本道と単純なので、迷うことなく目的地に到着。
ところがその扉は、当たり前と言えば当たり前ですが、施錠されていました。ドアノブ近くの金具に真鍮製の南京錠がぶら下がっていたのです。どこにでも売っている南京錠ですから、僕が二十年前に設置したものかどうかは分かりません。いずれにしても、工具のない状態では扉を開けることは無理そうでした。
どうしたものか、そう悩んでいる時です。二階から、ギシ、ギシ、という木の軋む音が聞こえてきました。
校舎内には僕しかいないはずです。疑問に思い、階段を見上げてみると、踊り場の壁に掛けてある大きな鏡に、不可思議なものが映り込んでいました。
天板に白い布の張られた台形型の箱、紛れもなくそれは、跳び箱でした。
鏡に映る景色は二階のものです。ここに辿り着くまでの間に気付くことが出来ませんでしたが、あらかじめそこに跳び箱は置いてあったのでしょう。
誰が何の目的でそんなことをしたのか分かりませんが、もしそれが件の古い跳び箱であれば、その中に、宮路がいるかも知れません。
そう考えて僕は、階段をのぼりました。
しかし、いざ二階に辿り着くと、そこに跳び箱はありませんでした。気のせいだったのだろうか。確認するために振り返って踊り場の鏡を見てみると、先程まで僕が立っていた一階の廊下が映っています。間違いありません。跳び箱は確かにここにあったはずです。つまり、箱は移動した。
その時にしてようやく僕は真相に気付き始めました。
これは、山崎の演出だ。
宮路の無念を少しでも晴らすために仕組まれた、不謹慎な儀式なのだ。
ならば、と、心の内で呟いて、僕は最後まで『跳び箱さん探し』に付き合うことにしました。
まず、すぐ近くの教室に入って辺りを見渡す。使われなくなった教室には、机も椅子も教卓もありません。そして跳び箱さんもいませんでした。跳び箱さんはかなりの大きさですから、見落とすことはないでしょう。
ギシ、ギシ、ギシ……
案の定、教室の外から音が聞こえてきました。
そこで次の教室へと移動。
ギシ、ギシ、ギシ……
次の教室に入っても外から木の軋む音がします。
つまりこの教室もハズレです。
ギシ、ギシ、ギシ……
更に次の教室もハズレ。
そんなことを繰り返しながら、僕は一つひとつ教室を調べていきました。
そしてとうとう、一番端にある教室に辿り着きました。それにもかかわらず、跳び箱さんの姿を確認できません。
いったいどこにいるのだ、そう思った時です。
「出して……」
声が聞こえました。
亡霊などいるはずがないと思いながらも、暗闇の中、無意識の内に恐怖心を抱いていたようです。それが切っ掛けとなって、二十年前の彼女の声がフラッシュバックしたのでしょう。
いわば、幻聴。
全身に絡みつく粘度のあるような空気を振り払おうと、僕は首を大きく横に振りました。それから気を取り直して別の場所を探そうと踵を返した時、視界の片隅に動くものがありました。
廊下を、階段方面に向かって、四角い影が通り過ぎたのです。
すぐに後を追ったのですが、ハッキリと姿を確認することは出来ませんでした。とりあえずその進行方向から、次は一階を探せということだろう、と当たりを付け、僕は階段をおりました。
再び一階に降り立つと、すぐ異変に気が付きました。
先程まで確かに閉じていたはずの体育倉庫の扉が、開いていたのです。
なるほど、ここがゴールか。
冷静にそんなことを思い、僕は迷わず、扉をくぐりました。
そこは階段の下という立地の所為か、非常灯の明りが全く届かず、一歩進む度に身体が暗闇に溶けていくかのようでした。
二十年前、この暗闇に宮路の命は溶けてしまったのだ。
幾ばくかの後悔と憐憫を覚え、祈るように目を閉じた瞬間、バンッと硬い音が響いて、扉が閉じました。
すぐ引き返してドアノブを握りましたが、どういう方法で固定しているのか、全く動く気配がありません。扉自体も、木材で出来ているとは思えないほど硬く、強固です。
もはや完全なる密室。流石にやり過ぎではないかと思い、向こう側にいるであろう山崎に訴えるように、扉を何度も叩きました。しかし応答はない。それでも繰り返し腕を振りました。暑さと緊張で汗が滴り落ちていきます。
そうしているうちに、非科学的と思われるかも知れませんが、背後に気配を感じました。音が聞こえた訳でもなく、空気が揺れた訳でもないのに、何かがそこにいると思えたのです。
後ろを振り返って、その気配の正体を探ろうとしましたが、目の前に広がるのは漆黒の闇だけです。
そこで僕は懐からスマートフォンを取り出し、カメラを起動させ、暗闇に向かってシャッターを切りました。フラッシュが瞬いて、ほんの刹那、目の前に色が蘇ります。それで十分でした。倉庫内に何があるのか概ね理解できました。
体育倉庫の最奥には、跳び箱が、いいえ、跳び箱さんが、いました。
とは言っても、木の軋む音はしませんし、当然、動きだす訳がありません。
二階で移動していた跳び箱さんは、その速度から察するに、山崎が用意したダミーでしょう。ある意味、本物の跳び箱さんは、暗闇に鎮座する、目の前の棺。
この対面こそ最後の演出と考え、僕は淡々とスマートフォンを操作し、山崎に連絡を入れようとしました。
ところが、電話が使えませんでした。見れば、電波が届いていません。
今日日、いくら屋内とはいえ、全くアンテナが立たないという状況があるとは思えません。時計やカメラや文書作成といった機能は普通に使えますので、考えられる可能性は、ジャミング。山崎は旧校舎一帯で電話やメールが使えないよう、あらかじめ妨害電波を飛ばしていたに違いありません。
そこまで考えが至った時、僕は大きな勘違いをしていることに気が付きました。
山崎は、イタズラめいた儀式をすることが目的ではなかったのです。
ダミーの跳び箱を用意したり、違法行為であるジャミングを行なったり、これほど大掛かりなことをするのですから、その覚悟は相当なものでしょう。ひょっとすれば同窓会も彼が発案者かも知れません。
山崎は、僕のことを、宮路と同じ方法で殺すつもりなのです。
既に倉庫に閉じ込められて二時間が経とうとしています。室温は高く、床が湿るほど汗が流れ出しています。このままいけば熱中症になる可能性は極めて高いでしょう。仮に熱に侵されなかったとしても、この校舎に次に人がやってくるのは幾日も先のことです。
とは言え、山崎を恨むつもりはありません。
むしろ甘えていた自分自身を呪っています。
僕は知らず知らずのうちに、心に余裕を持っていたのです。
宮路の遺体が発見されようと、死亡したのは二十年前のことですから、犯人の特定には至らない可能性があります。至ったとしても、時効の上、当時の僕は十歳の子供です。多少の社会的制裁があっても法的に裁かれることはあり得ません。
それが心の余裕となって、跳び箱さん探しをすることが出来たのです。
そんな僕に対して、山崎の覚悟は計り知れないものでした。
命をもって命の償いをする。
僕が死亡すれば、この状況です、山崎は殺人犯として裁かれるに違いありません。それも計画に織り込み済みなはずです。それどころか、もしかすれば彼は自ら命を絶つつもりでいるかも知れません。
その覚悟を前にして、宮路を殺した張本人である僕が命乞いなど出来るでしょうか。答えは明白です。それだけのことを僕はしたのです。
覚悟は出来ています。
彼女の味わった苦痛を味わうことこそが、今の僕に出来る償いです。
「出して……」
先程から目眩と共に再び幻聴が訪れています。
この文章をご覧になっている方の中に、もし宮路の知り合いの方がいらっしゃるのであれば、どうか、彼女の墓前と、彼女のご親族に、この言葉を届けて下さい。
申し訳ありませんでした、と……
文章作成日時:2015年7月20日 23時49分
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■メールファイル201507202212
From: 山崎 悟志
おい、磯貝。どこにいるんだ?
このメールを見たら、すぐに返事をしてくれ。
悪かった。反省してるよ。
『跳び箱さん探し』なんて無茶をさせて、
申し訳なかったと思ってる。
辛かったんだ。
お前が宮路を閉じ込めて死なせてしまったことは、
二十年前、すぐ気が付いた。
でも一番悪いのは計画をした俺だ。
それを認めることが出来なくて、
お前だけに遺体の探索を任せようとしたんだ。
最悪だよな。
一緒に警察に行こう。
入口の鎖は解いてある。
だから早く戻ってきてくれ。
着信日時:2015年7月20日 22時12分
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■画像ファイル201507202150
撮影日時:2015年7月20日 21時50分
文・画: gojo