表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/46

シャロンと弟

 

 何だろうと見れば見覚えのある家紋付の馬車。そして出てきたのは、見覚えのある憎らしいほどの美少年、レヴェルトだ。

 近寄って来た彼は、見た目からして麗しいその姿で周囲の視線を余すことなく惹きつけている。十二歳だというのに、この凛々しいまでのその姿に魅了されるのは当然のことなのだろう。


「レヴェルトは仕事終わったの?」

「ああ、一緒に帰ろう」


 ありがとうと頷き、レヴェルトにエスコートされ馬車に乗り込む。正直言えば歩いて行くのは疲れるので助かったと、椅子に身を沈める。


「明日からまた学校始まるね」

「……休みが無い」


 愚痴を零すレヴェルトにクスリとつい笑みが零れた。

 史上最年少で宮廷魔道士である弟は、仕事が次から次へと舞い込み、目が回るくらいに忙しい毎日を送っている。この歳で、普通の大人以上に働く弟には尊敬の念以外抱けない。時間を持て余し読書ばかりしている私とは大違いだ。


「シャロン、最近何か"視えた"か?」


 私の予知能力の存在をレヴェルト以外知らないために頼るのも全て弟になってしまい、そんな風に過ごしてきたため、呼び捨てに何ら違和感をもた無いのが現状である。

 レヴェルトはいつも私のことを気にかけ、事あるごとに声をかけてくれているのだ。


 レヴェルトはいつもの喜怒哀楽を表に出さない表情で、こちらを見る。空気はどことなくピリピリしているが私は気にすることなく笑んだ。


「うーん、特にないよ」

「何かあれば俺に──」

「報告する、でしょ?」


 心配をかけているのは重々承知で、申し訳なさがつのる。

 こんな頼りない私でも弟の体を心配しているのだ。少々のことぐらい、私が頑張れば何とかなる。と、我慢ばかりしてしまう私のことを理解している弟は複雑そうな顔をして息を吐いた。

 レヴェルトは優しい、優しいのだ。深い親身の情を感じるたびに全てを預けてしまいそうになる。


 私はレヴェルトの姉。甘えて過ぎてはいけないのだ。


 流れ行く景色を外目に、一切の思考を拒否するようにゆっくりと目を閉じた。

 レヴェルトが胸を抉るような辛さを抱えてこちらを見ているとは気づかずに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ