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クロウさんのポートレート6

 シルクハットをかぶったクロウさんをこのごろ見かけない。

 長い旅に出掛けてしまったのだろうか。

 右手のしっくいの壁に沿って、私は工場への道を歩く。

 左手に広がる草むらに、子供達が潜んでいる。

 子供達は家がないのか、それとも家を捨ててきたのか、自分と同じくらいのハサミをもって、あぶなっかしくクロウさんを探していた。

 クロウさんがいないと、いろんな生き物が原っぱに出てくる。

 翼をもった首だけの犬や、小さな天使たち。

 小さな天使たちはムチを使って、犬たちを狩っている。

 捕まえて乗り物にするつもりなのだろうか。

 残酷な子供達は天使たちを捕まえて、その美しい翼をもぎ取ってしまう。

 天使たちは私には分からない言葉でわめき散らして、子供達の手のなかで暴れまくる。

 子供達は天使など、バッタかトンボくらいにしか見えていないのだろう。飽きてしまうと、草むらに放って捨ててしまう。

 草むらには、天使たちの哀れな死骸が、土へと環っていく。

 首だけの犬にまたがった天使が、勇敢にも子供達に戦いを挑んでいる。

 切り刻まれていくのは決まって犬のほうで、キュンキュン鳴きながら撤退していく。

 無秩序な空間と化した原っぱには、一つの規則かクロウさんのような見張り役が必要なのだろう。

 クロウさんの旅行は長引いている。

 ハレーすい星を追いかけていって、土星を巡っているのか。

 あの気難しい友人を連れての旅行だから長くなってしまうのだろうか。

 私はあまりの無秩序に腹立たしく、しっくいの壁を蹴った。

 こんな荒れ果てた草原を見ていては、気分が害してくる。

「やめろ、やめろ」と叫んでも、効力はなく、縦横無尽に殺戮は繰り返される。

 月さえ恐れて、隠れたまま、出てこない。

 草むらを照らすのは唯一星々のみで、彼らでさえ、子供達の石粒手を恐れて、空高く上ったきり、前のように降りてくることはない。

 悲しくなってないてしまうと、私は布団にくるまって寝ていた。

 目には涙がたまっている。

 今も子供達は秩序を放棄して、草むらを荒らしているに違いない。

 だれかに止めてもらいたい。

 できれば、クロウさん自身に。

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