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絶対音声  作者: 樒 七月
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5.帰り道に約束をして

 駅に向かう道を涼と千尋は並んで歩いた。道幅は広く、歩道があるために並んで歩いても問題はない。千尋は隣を歩く、自分より少し背の高い涼を疑いの眼つきで見ていた。一緒に帰ろうとした涼の真意がわからない。

 その視線に気付いた涼は、横目で千尋を見た。

「何?」

「…別に。そういえば、葛西くんと仲良いよね。美術がきっかけって言っていたけど、何?」

 涼の問いに、千尋は一瞬目を逸らしたが、すぐに思いついたように涼に目を向けて質問を返した。咄嗟に思いついたことだったが、気になっていたのには違いない。

 千尋の質問に、涼は懐かしむように目線を上げ、そしてククッと喉の奥で笑った。

「明日、あいつに絵を見せてもらえばわかるさ」

 楽しそうに、少し意地の悪い笑みに変えた涼は、速度を変えずに歩いた。涼の答えにしばらく考え込んでいた千尋は足の動きが鈍くなり、涼との距離は広がった。千尋は顎に手を当てて考えており、それに涼は気付かなかった。

 少し歩いて、隣を歩いていた千尋がいなくなったことに気付いた涼は後ろを振り返り、千尋の様子を見て口元に笑みを浮かべた。

「黒瀬」

「…え? ああ、ごめん。絵、ね。明日見せてもらうよ」

 涼は千尋が追いついてから、また並んで歩き始めた。駅で別れるのだから、そのまま先に行ってしまえば良かったのだが、涼はそうしなかった。千尋は涼の一面を知り、その優しさに心が温かくなった。

 駅で別れるまで、他愛もない会話は途切れることなく続いた。

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