三話
(注意)同姓との性描写や暴力的な表現が多々あるので苦手な方はご遠慮願います。
初めて佐藤さんを見た時、俺に似ていると思った。正確に言うと小学生の時の俺に似ていると思った。
将来の事なんて一切期待していない様な死んだ瞳。生きるって事を作業の様に淡々とこなす姿。それでも、どこか期待を持っている様に見える。
人を怖がっている仕草も、全てがあの頃の俺にそっくりだ。まさか佐藤さんまで俺と同じ経験をしたことがあるとは思っていないが、似たような酷い境遇にあることは分かる。
俺は小学二年生の頃から虐待されてきた。
俺の家族は物心ついた時には三人だった。母と俺と二つ下の妹、力を合わせて生きてきた。母曰く父は妹が産まれる前に亡くなったみたいだけど、それ程苦労することはなかった。
が、俺が小学二年生の時に母が新しい父と言って連れてきた男のせいで全てが壊れた。
初めて会った時は少しおじさんだけど優しそうな顔つきで、好感触だった。それは妹も同じだった。
しかしそれは表面上だけで新しい父は最低な人間だと知るのは、すぐ後。
ある日、俺は妹に借りた本を返すために妹の部屋に入ろうとしたが、扉の前で止まった。少し開いた扉の隙間から酷い光景を見てしまったからだ。
大きな父の腹の上で跨がって妹がぴょこん、ぴょこんと飛び跳ねている。それが二人とも服を着ていたら微笑ましい家族なんだろうけど、残念ながら裸だった。
こちらからじゃ妹の背中しか見えないからどんな表情をしているのか分からないけど、妹は動く度にすすり泣く声を大きくさせた。
反対に妹が泣けば泣くほど父は汚い顔を歪めて悦んだ。
止めに行きたかった、が、俺の足は情けないことに意思に反してただ震えるだけだった。
そしてそのまま父が最高なトコロに達して妹を離して服を着た辺りで、やっと身体が動いて自分の部屋に走って戻った。
その頃の俺はまだ子供だったからその行為が何なのかも、どんな悪いことなのかも分からなかったけど、妹を泣かすような酷いことだということは理解した。
だから何をしてでも良いから、それを止めさせたかった。俺は直接掛け合うことにした。
「お父さん、今日お父さんと妹がイケナイコトしてるの見ちゃった」
「それ……誰かに言ったかい?」
いつもの優しい父の笑顔は、どこか違っていて少し恐怖を感じた。
「言ってないけど……」
「そうか、なら良いんだ。あれはね、イケナイコトじゃないんだよ。大人になったら皆する良いことなんだよ」
「でも、妹はずっと泣いていた。妹が痛い、痛いって言ってたのがお父さんには聞こえなかったの?」
「直に慣れるよ。それまで我慢しなくちゃいけないんだよ」
それから父は蛇の様な目で僕の足先から舐めるように見回して言った。
「お父さんと試してみるか? それでイケナイコトかはっきりするだろう?」
「……僕としたら、お父さんは妹に痛いことしなくなる?」
「ああ、しないよ」
「じゃあ……」
良いよ。と言おうとした口は父の口によって塞がれた。父の汚い舌が僕の舌と触れ合い、唾液を残していった。
頭がガンガンするような刺激が全身を駆け巡り、腰から床に落ちた。父は「そんなに良かったのかい?」と言ったが違う。俺の身体を走ったのは恐怖の感情だ。
ひょいっと小さい俺の身体は父に持ち上げられてベッドへと運ばれた。
「地面じゃあ、痛いからねぇ」
そんなところに配慮するならこんな怖い思いをさせるようなこと止めれば良いのに。と、思ったが当然言えるはずもなく。
父はゆっくりと俺の服を脱がしていくほどに汚い面を歪ませた。その顔を見て思わず「ひぃっ」と叫んでしまったが、父は反応しなかった。
今なら妹の気持ちが痛い程分かる。ナニをされるのか分からなくて、抵抗出来ないのが分かっていて、死にそうな程に怖いこの気持ちが。
妹は何回俺に『お兄ちゃん助けて!』と叫んだんだろう。声にならない叫びでも、俺は気づくべきだった。初めて父と妹の行為を見てしまったあの時も飛び込んで助けてやれば良かった。
ごめん。頼りない最低なお兄ちゃんで。
心の中で妹に謝ると俺の頬に冷たいものが流れていた。自分自身の涙だった。それを見ると父は更に喜んで、流した涙をペロペロと舐めた。
ザラザラの生暖かい舌が不快で叫びたかったけど、妹がされた時に助けなかった俺にそんな資格はないと思って必死に耐えた。
けど流石に俺の弱い部分に父の汚いモノを押し付けられた時は声をあげてしまった。
「ひっ、やぁっ……」
「嫌じゃないでしょう。お前は出来る子だって信じているから、ね?」
「無理っ……だって、ば……っ」
父は俺の言葉なんて無視して入れた。ガンっと頭を鈍器で殴られた様な衝撃が連続して身体を襲う。
涙でグシャグシャになった俺とは反対に腰を振る父は最高の笑顔を見せていた。
「ほらっ。出来るだろ……偉い偉……いっ」
「……痛いって……止めてぇ……抜いてっ。ひっくぅ……ぅぅ」
「気持ち良くなるから、ね……?」
父の言葉とは反対に痛みはどんどん増していき、痛すぎて息が出来なくなる程だった。
けど父はその姿にすら興奮して達した。白濁のナニかを僕の上に撒き散らして、何度も望んだ終わりを迎えた。
「……はっ、ぅぅっ、ひっく」
「泣かないで。次にはもっと良くなるから、また頑張ろうね」
「もう、……ひっく、妹には手を出さない?」
「ああ。だから、お前が頑張ってくれるか?」
「……ぅん」
妹を守ることが出来るのは俺だけ。母に言ってガッカリさせたくない。その想いだけで、何度も何度も父に犯された。
当時の俺は妹が傷つかないようにするので精一杯で自分の事なんて考えなかった。
毎日家に帰ると父がいるから帰るのが憂鬱になるが、俺が家にいないと妹が標的にされてしまうという使命感に刈られていつも必死で。
でも、その緊張が高まりすぎて学校では死んだ様な目で、生きる活力もないまま流されて生かされていた。
死ぬことすら許されないのは、次の標的に妹が選ばれてしまうのが怖かったから。
何度も父を殺したいと望んだが、何も知らない母は父の事を愛しているから、悲しませることは出来ない。
俺だけが我慢すれば何とかなるんだと言い聞かせて、ひたすら生きてきた。
しかし、父は知ってか知らずか行動を更にエスカレートさせていく。
父との関係を持ってから三年目、小学五年生になった時。いつも事を致す父の部屋には知らない男性が三人並んでいた。
「お父さん、誰この人達」
「お父さんの仕事仲間でね、お前の事を話したら是非会いたいって言ってくれたんだよ。ご挨拶しなさい」
「……はじめまして」
「はじめまして。お話は聞いてるよ」とオールバックの知らない人。
「あの、五万円プラスすれば本番OKって本当ですか?」とスーツを着た知らない人。
「勿論ですよ。基本料金の一万円だったらペッティングだけですからね。この子を直接見てその気になりましたか?」
「ええ。正直。じゃあ、先払いで」とお札を父に渡そうとする父よりも太った知らない人。
結局、三人とも父に沢山のお金を渡していた。
そんなにも本番ってのをしたいのかな?と、楽観的に考えていると一番最初にオールバックのおじさんが僕の事を抱き上げた。
「わあっ!?」
「キミ。小学五年生って言っても顔は幼いし、声も可愛いね。本当に男の子?」
「は、はは……一応」
「食べたくなってきたよ」
「それは、勘弁して頂けると……」
オールバックのおじさんは慌てる僕を片手で固めたまま笑った。後ろに突っ立っている二人のおじさんもニヤニヤ笑っている。
最近は父に犯されても絶望感に満ち溢れて無抵抗に済んでいたのに、久し振りに初めて犯された時の感覚が戻ってきた。
「……やっ! 服は脱がさないで……お願ぃ、しま……」
「ふふ。無理だよ」
俺の頼みとは反対に彼らの表情はどんどん緩んでいって笑顔になっていく。人間と思えない様な酷い仕打ちを受けた後、俺は放置された。
腰がジンジンと熱を持っているのを感じて、やっぱり夢ではなかったのだと再確認した。汚い体液は独特の臭いを発していてスゴく気持ち悪かった。
こんな感じに父の仕事仲間と呼ばれる人達は週に一度くらい来ては父にお金を渡して、犯していった。父の時と同様に俺はすぐに慣れていった。
ただ無心になって俺は妹と母を守るスゴい仕事をしているんだってヤられている時もずっと、誉めていた。
俺は中学に入ると同時に、明るくてクラスで中心にいる様な奴を目指して頑張った。小学の時はただ父に怯えて何も楽しんで来なかったから、居場所を作りたかったのだ。
その頑張りは成功したみたいで、友人が出来た。一緒に帰る奴も出来た。自分の居場所が出来た。笑える様にもなった。
その後、妹は成長して全寮制の中学に入ったお陰で妹が父に犯される心配がなくなって、俺は時間を気にして帰ることもなくなった。
まだ父の性処理玩具ではあるものの全てが上手くいっている様な気がする。
やっぱり、佐藤さんはあの時の……小学生の時の俺に似ている。