二日目:朝~昼 列車により高速移動中
谷底の真ん中には、どこまでも続くレールがあった。そして、そのそばにはくすんだ赤い屋根を持つ小さな駅も。
「変なトコに建ってんなぁ。……【地震来たら】終わりじゃね?」
そのホームに立って、タドは向かいにある崖を見上げた。その隣では、ジンが折り畳み式の携帯電話をいじっている。
「気にするな。今すぐ来るわけじゃねぇんだから」
「……なあジン、【地震】って何て言えばいいんだ?」
「知らん。ヤニックに聞いてみろ」
冷たい一言に追い払われ、彼は大人しくヤニックの元に向かう。土汚れを未だに気にしている彼は、タドが突くと小さく声を上げた。
「なんだ、びっくりするじゃないか」
「なあ、【地震】……えぇと、地面が揺れること、ここでは何て呼ぶんだ?」
「は?」と言って、目を見開いたヤニックは首を傾げる。
「あぁ、どっかではあったって聞いた事があるなぁ。確か……地震かな? あれって本当に起こったのかな。迷信って言う人もいるけど」
「あ、いや……。俺の居た国にもそんな伝説あったからさ。なんとなく気になって」
タドが肩をすくめて後ずさった先に、ジンが来ていた。
「【言っただろ? 俺達の常識は通用しないんだって】」
彼はそう言って悪戯っぽく笑う。
「【や、だからってさ……。いや、突っ込んじゃ駄目なのは分かってる。でもなぁ……】」
ぶつぶつと呟くタド。その前に、音もなく列車が滑り込んだ。真っ黒な列車。電車ではない。汽車でもない。原動力の分からない列車が、ホームに到着する。シルが列車を指してジンを見上げた。
「どうなってんの、アレ。【魔法】?」
「【魔法】は魔法だ」
「分かった。で、コレやっぱ魔法なの?」
「知らね」
「えぇー……」
「取り敢えず、乗るぞ。……そうだ」
唸りを上げてホームに滑り込んだ列車の前で、ジンは兄弟達を振り返る。
「【人の良さそうな人見つけたら、惜しまず声かけろ。金持ち優先で仲良くなっとけ。後々得するから】」
苦笑交じりに返事をしたのを聞くと、彼は開いたドアから足を踏み入れた。
列車の赤い座席は左右で向かい合う形に設置されていた。その半分程に人が座り、数人は立って言葉を交わしていた。それは、『ちょっとそこまで』と言うかのような軽装の者から、旅行に行くかのような大荷物を持った者まで様々だ。共通しているのは、彼等は皆それなりに裕福そうであるということ。
「ヤニック~? 何ためらってるの?」
もっとも、それに気付いているのはヤニックだけのようだが。
ただでさえそんなに裕福でもない服屋の軽装だったうえ、そこに泥汚れまでついているヤニック。元々この国の物でない服を着た四兄弟。車両の注目を集めるのは必然だった。ひそひそと囁く声が耳に付く。ヤニックは赤面したが、シルやヒア、タドはくすくすと笑いながら言葉を交わしあい、ジンはそんな彼等を適当な場所を見つけて座らせる。隅に座って縮こまるヤニックは、自分に視線が針のように刺さっているかのような気分だった。
「気にしない、気にしない」
隣でシルがそう言って笑った。そのさらに隣で、タドとヒアが小声で歌を歌いながら控えめに手遊びをしている。
『【アルプス一万尺、小槍の上で、アルペン踊りをさあ踊りましょ。ランラランラン……】』
リズムも詩も、言葉すら馴染みのないものだが、陽気な音楽は彼の気分を少し楽にした。
窓の外へ目を向ける。きっとそこには緑の大地が、……無かった。
「崖しかない……」
がっくりとうなだれたヤニックの頭を、シルは笑いながらぽんぽんと叩いてきた。それがすこしくすぐったくて、彼ははにかみながら微笑んだ。
そこに、深い青のドレスを着て、大きな鞄と小さな鞄を一つずつ持った女性が歩み寄って来た。スカートの丈は足首までしか無く、皮のブーツが見える。その頭には大きな帽子をかぶっていた。帽子からは長く、力強くうねった黒髪が流れ出していたものの、一つにまとめられているために鬱陶しさはみじんも感じない。
どこか、異国から来たらしい。少しなまりが残る言葉で、彼女は話しかけてきた。
「次の駅を過ぎれば、美しい景色を見ることができるわよ。列車は初めて?」
「え? ……はい」
「それにしても……ずいぶんな格好ね。いったいどうしたら、そんなに汚れることができるのかしら?」
「洞窟の中を転げ落ちたら……」
「まあ。そんな危険な事をするということは、冒険家?」
頬を手で挟み込み、青い女はちらりとヤニックの小さな荷物を見る。そして手を下ろしながら言った。
「……にしては荷物が少ないわよね。一体どちらまで、何をしに?」
「当てもなく、旅をしに?」
すかさず答えたシルが、女の視線を受けて誤魔化すようにあははと笑った。そして手遊びに飽きたらしいタドとヒアを振り返り、小声で尋ねる。
「ちょっと、ジンどこ行った?」
「そこで誰かさんたちと話してるよ~」
「口説いてんのかも。金持ちそうだし」
シルと共にヤニックも二人の視線の先を追った。そこではジンが、彼よりも背の高い貴婦人達や、その連れらしき男性を相手に喋っている。その表情は四兄弟の長男の物ではなく、むしろ末っ子のように子供らしい。しかし子供子供しているわけでもなく、少し生意気っぽさもにじませていて、年の割に低い身長と丁度マッチしている。それを使って貴人達に近づいているのだろう。
その光景を見たシルは脱力し、ふかふかの背もたれにもたれかかった。
「……ねえタド、ジンが寄ってったのか、女の人たちが釣られたのか、どっちだと思う?」
「知るかよ。……俺的には後者であって欲しいけどなー」
「ちょっと、私の事を無視しないでいただける? 何を話してるの」
「あぁ、ごめんなさーい。ちょっと兄の話を」
おどけたようにシルが答える。女の寄せられた眉が、ピクンと跳ねた。
「まだ居るの? お兄様はどなた?」
「あれです」
シルの指した、女性(と、その連れ)に周りを囲まれた少年、もとい青年を見る。その青年は彼女と目が合うと、にっこりと口だけ笑って見せた。
「……似てないわねぇ」
ぽつりと漏れたその一言に、誰も言葉を返さなかった。
そこに、涼やかな男の声、車掌の声が流れてきた。
『間もなく野原ー、野原にございます。花摘み、草摘みにお越しの方はどうぞお降りください』
その声に反応したのは六人だった。その内三人は親子。二人は恐らく商売でやって来たのだろう、大きな籠を持っている。そしてもう一人は、
「おっと……僕は次で失礼します」
「あら? もう行かなければならないの? さっき乗ったところでしょう?」
「えぇ……、残念ながら」
彼は寂しそうな表情を浮かべ、そして一番近くに居た貴婦人に顔を近づけながら、言う。
「ですが、もしよろしければ住んでらっしゃる所を教えていただけますか? いつかまた、会いに伺います」
「まあ……本当に?」
「気が向いたら……あは、冗談ですよ。必ず伺います」
「もう……うふふ」
そうして彼は、ジンは、五ヶ所ほどの貴人の住所を聞き出して地図に印をつける。そうこうしている内に電車がホームに滑り込み、ドアが開いた。
「それでは、アフリア嬢、バレーヌ男爵、バレーヌ夫人、シャレ嬢、ダラス伯爵、ダラス夫人、エテュアン嬢。失礼します。またお会いできる日を楽しみにしております」
彼は一礼すると、無邪気な少年の笑みを浮かべ、振返った。
「行くぞ」と視線でシル達を促す。ジンにくっ付いて降りた五人は、彼が行くままに前の方の車両へと進み、丸々一つが個室になっている一等車の車両へと乗り込んだ。ドアを閉め、列車が走り出す。花々が織る、虹色の絨毯が飛ぶように過ぎて行く。
そんな中に、馬鹿でかい笑い声が一つ。
「あーっははは! あーっはっはっは! ちょっとぉ、ジンっ! 何あの顔っ、可愛すぎるわ! 反則よ反則っ! あはははは!」
「そんなに笑うことですか、ラディスラヴァ?」
どさっと備え付けのソファの隅に身を沈め、ジンは冷ややかな瞳でその青い女を見下ろした。貴人に向けていた表情は、すっかり可愛げの無い仏頂面にすり替わっていた。
赤い絨毯の敷かれた床を叩いて笑いこけていた青いドレスの女、ラディスラヴァは、彼の淡褐色をした瞳を見上げる。
「ねえねえ、ジン、今度私、貴方に可愛い服作ってあげ……」
「結構です」
「最後まで言わせてちょうだいよ、可愛い服作ってあげるから、その時ちょっと付き合っ……」
「嫌です」
「500リールでどう?」
「37,500リールなら考えますよ」
「くっ……また出せるような、出せないような微妙な額を突いて来るわね……っ」
ジンとラディスラヴァの間で火花が散る。そこに水をかけるように、ヒアの声が響いた。
「ねえ、それっていくらなの~?」
「15万円」
「……こんなことに15万で、出せるか出せないかの額なんだ」
呆れとも笑いとも取れない、シルの声。ちなみに、言うまでもないがヤニックは完全に蚊帳の外だ。きょろきょろしていた彼は、半笑いのタドに誘われて共に窓の外を眺めに行った。
「えぇい! いいわ! 出してあげる! 帰ったらすぐ作るから、絶対着てちょうだいよ! ……一度口にした条件を変えようなんて、考えていないでしょうね? そんな事したら、仕事は受け付けないわよ」
「…………わかってますよ。37,500リール」
「他人を金として見ないでいただける?」
謝る気は無いようで、ジンはすっと視線を逸らす。ラディスラヴァは強気な溜息を一つ吐いて、持っていた大きな鞄を開いた。
ヒアはとっとと次兄達の方へ行ってしまっていたが、シルは黙って二人の会話を聞いていた。不機嫌そうな兄に声をかける。
「いいの?」
「何が」
いつもより一オクターブ低められた声に、彼女はぎこちない笑みを浮かべて冷や汗を垂らす。
「可愛い服」
「37,500リールが付いて来るからな」
そう言って、彼は眉をはね上げて口角を少しだけ上げた。
「……えー」
「ジン。ご注文のモノ。六着でよかったわね?」
「はい。ありがとうございます」
設置されていたテーブルの上に二人が視線をやると、他の車両に居た貴人たちのような、豪華な衣装が並んでいた。
「お代はいつもの通り、返却後。お子様方のサイズは合うかしら?」
「試してみます。妹の方はお願いできますか。ドレスなんか着たことないんで」
「あら、そんなの簡単よ。教えてあげるわ。いらっしゃい、……えっと」
「あたしはシヴィルです。シヴィル(シル)。こっちはヒルデガート(ヒア)」
「よろしく。私はラディスラヴァ・イエフ(ライディ)よ。それじゃあ、さっそく着てみましょ」
「タド、ヤニック。お前等はこっちだ」
立ち上がったジンが、テーブルの上の服を三着分取ってソファへ戻る。そこから一番遠い、車両の最も後ろの方へ女性組が集まった。
「わぁ……すごい。こんな上等な生地、初めて見た。こっちは皮だ。何の皮だろう」
ブツブツと呟きながら上着を眺めるヤニック。決して触れようとしないが、目はらんらんと輝いている。
「結構簡単なつくりだから、教えなくても着れるだろ。さっさと着替えろ」
そう言いながらジンは金棒付きのベルトを外し、上着を脱ぐ。白いインナーに付いた血に、タドが眉をひそめた。
「ジン、それどうしたんだよ?」
「ん……ああ、ちょっと切っただけだ。気にすんな」
「うん。あれ、ヤニック、おーい。早く着替えろよ」
真っ白な、少しレースも付いたシャツに腕を通しながら、タドは上着を凝視し続けるヤニックに声をかけた。
反応がない。
顔を覗き込んでみると、彼は驚いたようにピョンと飛んで下がった。
「早く着替えろよ」
「えっ!? で、でも、こんな高価な服、僕なんかが……僕なんか、ただの下町の服職人なのに」
慌てて手を振っている顔が赤い。そして、その視線はしっかりと服を捉えて離さない。
「馬鹿、着替えてくれなきゃこっちが困る。身分なんかごちゃごちゃ言ってないで、着る」
ジンの言葉に肩を震わせ、次いで震える手でシャツに触れる。やわらかく、温かい生地の手触りが彼に伝わる。
「ふわぁ……羽みたいだ」
「感想はいいから」
頬にそれを付けて一人舞い上がっていたヤニックは、ジンの言葉に地上へと引きずり戻された。
慣れない型の上着に手間取りながらも、何とか形にはなったヤニック。その頃には、当然ながら兄弟は着替え終わっていた。
「着れた? ……中々上手に着れてるじゃない。そうそう、剣を渡し忘れてたわね。鞄の底に入ってるから、自分で取ってくれる?」
「はい」
ごそごそと大きな鞄を漁り、その底からジンが取り出したものは、半分に折れた剣だった。
ジンは一瞬動きを止め、その後に、そっと剣を元の形に戻してみた。
「便利でしょう、その折り畳み式の剣。魔界出身の友達に手伝ってもらったのよ」
「いやいやいや、大丈夫なんスかコレ! 使おうとしたらポッキリ……」
「これは飾りなんだから、使えば即ポッキリだろ」
タドにかぶせるかのように言ったジンの言葉に、ラディスラヴァ改めライディは苦笑する。
「……確かに飾りだけど、強度は普通の物と同等よ。でも、使った時は研いでから返してちょうだいね」
「お前等、絶対に使うなよ」
ジンがあまりに真面目な顔をして言うので、兄弟達は苦笑しながら「はーい」と気の抜けた返事をする。
「さあヒアも、これでいいわよ」
「ありがとうございます~。ジン、タド、見て見て~! お姫様!」
黄色い、ふんわりとしたドレスを着たヒアは、くるりと一回転して兄の方へ駆けて行く。
「いいじゃん」
タドに褒められ、彼女はにへらっとした笑みを浮かべた。そしてジンを見つめる。
……見つめる。
…………見つめ続ける。
「はいはい、可愛い可愛い」
「えへへ~。ありがと~」
見つめられていることにようやく気付いたジャイズンの適当にしか見えない褒め方であっても、彼女は頬を染めて微笑んだ。それを羨んだのか、今度は深紅のドレスを着たシルが「あたしはー?」と尋ねる。
「綺麗じゃん?」
「ん」
「へへ、ありがとー」
何やらほのぼのとした空気を発していた兄弟の中に入って行けず、ヤニックは窓の外を眺めていた。ライディも居心地が悪かったようで、彼が膝立ちするソファに寄って来る。
「貴方も、なかなか決まってるわよ」
「へっ? あ、ありがとうございます」
彼が慌ててソファに座り直すと、ライディはクスクスと笑ってその隣に腰かける。
「そんなに硬くならなくていいのよ?」
「はっ、はい。……あの、その……ラディス、えと」
「ラディスラヴァよ。ライディで構わないわ」
「すみません。えと、ライディさんは一体、何者なんですか?」
女々しくそろえた脚の上で、ヤニックは指をいじいじと動かす。ライディから返事が返ってこない。彼がそっと顔を上げてみると、彼女はハッとしたように目を瞬かせた。
「あ、ごめんなさい。私は仕立て屋よ。服の貸し出しもするけどね。貴方は?」
「え? ぼ、僕は普通の服屋です! 小さい町の……」
「まあ、そうなの。なんでこんなところに?」
「あの、ジャイズンさんの、次の公演が王都なんだそうで、それで、それを観に」
「公演? 何のよ?」
「え? ジャイズンさんは俳優なのでは……」
「そう見える?」
「いえ、あんまり……」
「むしろ、全然でしょう? 駄目よ、見知らぬ人に着いて行っちゃ。いくらそれが子供でも」
彼女は呆れはてた顔で首を振る。次いで、話題が尽きることも無く楽し気に会話をする兄弟へ、鋭い視線をやる。正しくはジンへ、だが。
「ジャイズン、ちょっとおいでなさい」
「なんですか? そんな怖い顔してると、化粧が崩れますよ」
そうおどけながら、彼は二人が座るソファのすぐそばまでやってくる。
「これくらいで崩れないわよ。それより貴方、何考えてるの?」
「ん?」と、小首を傾げたジンに、ライディは目の前の机をドンと叩く。彼の小指の先がピクッと跳ねた。
「【人間連れまわして、何考えてるのって聞いてるの!】」
大声を上げた彼女に、ジンは「しー」と口に立てた人差し指を当てる。
「【ふざけんじゃないわよ、私、霊法に違反することはしたくないの。まったく……、通りでこの言語使ってなかったわけね】」
「【落ち着いてください。崩れたのは化粧じゃなくて口調でしたか】」
「【落ち着けるものですか! というか、落ち着かせる気あるの!?】」
「【ありますよ? きっと】」
「【ざっけんじゃないわよ!】」
「【あ、落ち着かせる気になってきました。落ち着いてください】」
早口でかわされる謎の言葉。ヤニックは自分が悪いのかとおろおろしていたが、兄弟達三人も顔を見合わせたりしていたので、多分違うだろう。……多分。
そうこうしているうちに、ジンは勢いに任せて立ち上がっていたライディをソファに座らせた。
「【大丈夫ですよ。俺はまだ死んでません】」
「【え? そうだったの?】」
「【えぇ? 知らなかったんですか?】」
「【全く、全然。聞いた事も無いわ】」
「【ん。じゃあ、覚えといてください。そういう訳で、別に霊法には触れませんので大丈夫です】」
「【触れてるわよ。何回も何回も世界間を渡ってるじゃない】」
「【いいんです、そういう生物なんで。上も認めてますから】」
「【……なんだか分からないけど、突っ込むだけ疲れそうね……】」
「【霊界に帰ったら、ちゃんと休んでくださいね】」
「【あら、優しいじゃない】」
「【好感度上がったでしょう?】」
「【最後の一言で下がったわ】」
ふふと笑うライディ。さっきまでの緊迫した雰囲気は何処に行ったのだろう。
言葉が分からないことでさらに置いてけぼりを喰らう羽目になったヤニックの隣に座っていた彼女が立ち上がった。
「それじゃ、私は次の駅で下りることにするわ。何しに行くのか知らないけれど……気をつけてね。特に貴方」
「え? は、はい」
人差し指を突きつけられたヤニックが反射的に返事をすると、ライディはそれでも微笑んで荷造りを始めた。と言っても、片付けるだけだが。
「ジン、服はどうするの?」
「ヤニックの以外、持って行っていただいてもいいですか?」
「構わないわよ。じゃあ、また取りに来てね」
「はい」
軽く頭を下げたジンに倣い、他の四人もぺこりとお辞儀をする。ライディは彼等の服を鞄の中へとしまうと、それを持ち上げた。
「軽くなったわ」
そうにこりと笑って、下町の駅へ降りて行った。
何でもない会話をしながらその後数駅。涼やかな車掌の声が流れた。
『間もなく王都ー、王都、終点にございます。皆様、どうぞお降りください』
「王都って~、王様が居るんだよね?」
「王様居なかったら王都になんないよ」
「やっぱ売ってるモンも高ぇのかな? 王室御用達、的なノリで」
「お前等、あんまはしゃぐなよ」
ヒア、シル、タドをジャイズンが呆れたように叱る。「はーい」という答えが帰って来た時には、てんで違う方を向いていたのだが。
やがて、列車は平べったいがかなりの規模を持つ建物の中へと吸い込まれていった。




