表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

下校途中にて

 少年は住宅街にある、石造りの長い階段を降りている。両側には階段に沿って家が隙間なく建ち並んでいる。階段のステップは前後左右の幅が広く、また段差も低い。黄色いスティックで足元を探りながら、少年は建物の間を縫うように下ってゆく。

 鮮やかな赤い屋根の家の前を過ぎる手前、その家の玄関が開いた。中からはメガネをかけた中年の女性が出てきた。手には、短冊状の竹を折り合わせて作られたかごを持っている。

「あら、こんにちは。今お帰りなの」

 少年は立ち止まると、女性の方へ体を向けた。

「そうです。おばさんはどちらへ」

「夕食の準備よ」

 女性はかごを少年の方へ突き出したが、少年の目を見て思い出したのか、すぐにその手を引っ込めた。

「そうだ。ちょっと待ってて。あなたに渡したいものがあるの」

 女性はそう言うと、玄関を再び開け、家の中に入っていった。しばらくすると、女性は先程とはまた違うかごを持って出てきた。女性は少年に近付き、スティックを持っていない方の手に持ってきたかごを握らせた。

「このにおいはリンゴですね」

「そうよ。ご近所の人からの貰いものなんだけど、なにぶん量が多くて。お母さんとぜひ召し上がって」

「すごい重いですね。こんなにたくさん、どうもありがとうございます」

「いいえ。持って行ってくれるとこっちも助かるわ」

 少年は頭を軽く下げた。女性もそれにつられて、軽く会釈をした。

「それじゃ、気をつけて帰ってね。あとお母さんによろしく」

「はい。ありがとうございます。さようなら」

 少年はもう一度軽くお辞儀をすると、また階段を下って行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ