怖がる必要なんてない
「秦?あ、もしかしてこの子秦って名前?」
「え、えぇ」
「秦ちゃんか、いい名前だねぇ」
水谷は秦の頭をなでながら言う。頭をなでられても秦はなんの反応を見せない。
「・・・・・・」
「まじかよ、ずっとここにいたなんて・・・」
「・・・驚きだな」
つぶやくような声で会話をする。
「なんだなんだ?また俺一人を仲間外れにして。・・・ってかなんでみんなそんな深刻な顔してんだ?」
「・・・」
「なんで黙り込むんだよ?」
「水谷、ICPが今までずっと敵として戦っていた人の名前がわかる?」
「なにいってんだ。シンだろ?」
「えぇ、そのとおりよ。じゃあ、そこにいる女の子の名前は分かる?」
「秦ちゃんだろ。あ、秦とシン。読み方一緒だな」
「同一人物だからね」
「へぇ、そうだったのか・・・・・・え?」
水谷の表情が固まる。
「だから、秦とシン、同じ人よ」
「・・・・・・」
水谷の顔からあせがだらだらと流れ出す。
「・・・お、俺、用事思い出したからかえるわ」
「まぁ、待てよ」
「坂本、とても大事な用事なんだ。急いで帰らないといけない」
「なんの用事なのー?」
「セリアが知る必要話ない」
「えーいいじゃん。なんの用事?」
「それはだな・・・・あんな用事だ」
「へー、そうなんだ~」
なにがそうなんだだよ・・・
「じゃ、これで俺は帰る」
「駄目よ」
「どうしてだよ!俺は急いで帰って仕事をしなきゃいけないんだ」
「用事は?」
「え?あ、仕事じゃなかった用事が・・・」
「用事なんてないんでしょ?それに、どうして怖がる必要があるの?あなたはずっと前から一緒に話したりしたんでしょ。秦はどんな人だってわかってるはずよ」
「・・・確かに、秦はおとなしくていい奴だよ。でも、こいつはあのシンじゃないか」
「私たちも最初は怖かったけど、それはお互いの気持ちが違っただけ。ちゃんと話し合えば争うことなんてなかったの」
「そうか・・・なら、大丈夫だな。ね、秦ちゃん」
「・・・・・・」
話し始める秦と水谷。
「秦に頼んで、水谷君を剣で刺すように頼もうかしら・・・」
「そんな物騒なこと考えんなよ」
「なんか水谷君を見てるとなんかこう、イラッとくるわ」
「まぁ、分からなくもないが刺すのはひどいだろ」
それから作戦本部にいた全員で楽しく話した。いろいろと・・・
「ん?」
机の上にある封筒があるのを気づいた。
なんだこれは?手紙?でも、俺が作戦本部きたときはこんなものなかった気が・・・