開発品
「・・・・・・」
「・・・・・・」
古都耶と瑛司は会話をすることもなく、作戦本部にいた。
「・・・これで完璧ですわ」
先に沈黙を破ったのは古都耶のほうだった。
どうやら、いじくっていた開発品の調整が終わったらしい。
「・・・って、ラジコン?」
「まぁ、そうですわね」
このラジコンのモデルはVeyron 16.4。塗装は全体を真っ黒に塗ってある。
古都耶はコントローラーらしきものを取り出し、操作をする。すると、ラジコンは勢いよく走りだした。
「おぉ、すげぇな」
「もっとすごいのはこれからでしてよ」
白衣のポケットに入っていた携帯電話を取り出し、どこかに電話を始める古都耶。会話の内容からして、同じ開発班のメンバーだろうか?
「・・・えぇ、今すぐに。では」
電話を切ると、にっこりと笑ってこちらを見た。
「今、赤坂がグラウンドにいるらしいので、実験に使いますのよ」
古都耶が自分で持ってきたと思われる、バッグの中からノートパソコンを取り出した。
ラジコンにはカメラが取り付けてあり、ラジコンのカメラからこのノートパソコンに映像が送られてくるらしい。その映像を見ながら操作することによって、ラジコンが遠くにあろうがちゃんと動かせるらしい。
「赤坂で実験って言っても、ラジコンだろ?どうやって実験するんだ?」
「それは見てのお楽しみでしてよ」
古都耶がコントローラーを操作する。ラジコンは勢いよく作戦本部を飛び出していった。ノートパソコンから見れる映像は、人と人の隙間や階段などを映し出していた。
ノートパソコンから見れる映像、つまりラジコンはあっという間にグラウンドまでたどり着いた。映像からグラウンドのちょうど真ん中あたりを眠そうに歩いている赤坂の姿が確認できる。
「よーく見てなさい。ここからが面白くてよ」
ラジコンは、真っ直ぐ赤坂に向かって走っていく。
カメラ越しに赤坂の声が聞こえてくる。
『ん、なんだありゃ?』
「さ、いきますわよ」
ラジコンについてあるボタンの中で一番目立っていた赤いボタンを押す。
この後のことはなんとなく予想できた・・・
『ラジコンか?なんでこんぎゃ――――』
映像は途切れてしまったた。でも最後に赤坂の悲鳴のようなものが聞こえた。
「爆発・・・したのか?」
「えぇ、その通りですわ。あのラジコンにはプラスチック爆弾を仕掛けておきましたの。あ、映像を切り替えないといけませんわね」
ノートパソコンを操作してさっきとは違う場所からの映像が出てくる。
『・・・・・・』
「・・・効果は抜群だったようだな」
「もちろんですわ。・・・さてと、実験は終わったことですし、私は研究室に戻りますわ。・・・城谷さん、まぁまぁ楽しかったですわよ」
「俺は何もしてないけどな。・・・・楽しかったというかよかったよ。お前の実験が見れて」
(赤坂のあれを楽しかったといっていいのか・・・すごいとは思ったけど)
「次いつ会えるかわかりませんが、今度はもっとすごい開発品を持ってきて差し上げますわ」
「あぁ、楽しみをしてるよ」
「・・・・・・今回のやつよりも、もっとすごい開発品ってどんなのが出てくるんだ?」
俺は恐怖と好奇心を持って古都耶が作戦本部から出ていくのを見ていた。