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ノンアルコールの夜  作者: クレイジーピエロ


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大事な人のために


「で、その客がさ」

リョウが笑いながら話を続けている。俺もノンアルコールのモヒートを飲みながら、その話に耳を傾けていた。

Bar Twilightはいつもの穏やかな雰囲気に包まれている。美月がカウンター越しに微笑みながら、俺たちの会話を聞いている。


「ヨシトさん、リョウさん、楽しそうですね」

「ええ、リョウの話が面白くて」

「俺の営業トークは一級品だからな」


リョウが胸を張る。

その時、扉が乱暴に開いた。

五人の男たちが店に入ってくる。全員、見るからに柄が悪い。

「おい、ここにいるんだろ?」

先頭の男が店内を見回す。

美月の表情が強張った。


「お客様、少し静かに」

「うるせえ」


男がカウンターを叩いた。グラスが倒れて、中身がこぼれる。

俺の中で、何かがプツンと切れた。


「リョウ」

「ああ」

俺たちは同時に立ち上がった。

「お前ら、黒田一家か?」

「そうだよ。お前らだろ、俺らの仲間に手を出したのは」

「だったら外でやろうぜ」

俺は低い声で言った。

「ここは関係ない人がいる」

「へえ、優しいじゃん」

男たちが笑う。

「じゃあ外で、たっぷり可愛がってやるよ」

俺とリョウは店を出ようとした。


「ヨシトさん」

美月が不安そうに声をかけてくる。

俺は振り返って、できるだけ穏やかに笑った。


「大丈夫です。すぐに戻りますから、美月さんはお仕事頑張ってください」

「でも」

「大丈夫」


そう言って、俺たちは男たちと一緒に店を出た。

路地裏に移動する。街灯の光が薄暗く照らしている。

「さあて」

リョウが首を鳴らした。

「久々に暴れるか」

俺は煙草を地面に捨てて、踏み消した。

「俺の大事な人の店で暴れやがって」

怒りが込み上げてくる。

「久々にキレちまったよ」

「おい、大事な人って」

リョウがニヤニヤしながら言った。

「かっこいい事言うじゃん」

「うるせえ」

「感動したわ」

「後で殴るぞ」


男たちが笑った。

「イチャイチャしてんじゃねえよ」

「じゃあ、始めようか」


リョウが拳を鳴らす。

一人が突っ込んできた。

俺は軽く避けて、相手の顎に拳を叩き込んだ。

鈍い音がして、男が倒れる。

リョウも二人を相手にしていた。一人の腕を極めて投げ飛ばし、もう一人の顔面に蹴りを入れる。

「遅いんだよ」

リョウが笑いながら言った。

残り二人。

一人が俺に向かってきた。拳を振るってくるけど、軌道が読みやすい。

避けて、カウンターで脇腹に肘を入れる。

「ぐはっ」

男が膝をつく。

そのまま顔面に膝蹴りを叩き込むと、男は完全に動かなくなった。

最後の一人がリョウに向かっていく。

でもリョウは余裕の表情で、相手の攻撃を全て避けている。

「そろそろ終わりにしようか」

リョウが相手の足を払って、倒れた男の腹に蹴りを入れた。

「ぐあっ」

五人全員、地面に転がっている。

「雑魚すぎだろ」

リョウがため息をついた。

「こんなんで仕返しとか言ってんの? 笑わせるなよ」

俺は一人の男の襟を掴んで、持ち上げた。


「二度と、あの店に来るな」

「く、くそ」

「分かったか?」

「わ、分かった」


男を離すと、彼らは這うようにして逃げていった。

「さて」

リョウが服の埃を払った。

「戻るか」

「ああ」

俺たちはBar Twilightに戻った。

扉を開けると、美月がカウンターの向こうで心配そうにこちらを見ていた。


「ヨシトさん、リョウさん、大丈夫でしたか?」

「ええ、問題ありません」


美月さんの顔が少し赤い。

そして、妙にソワソワしている。


「美月さん?」

「あ、はい。良かったです、無事で」


彼女は視線を逸らした。

何だろう、いつもと様子が違う。


「美月ちゃん、もしかして」

リョウがニヤニヤしながら言った。

「ついて来ちゃった?」

美月さんの顔が真っ赤になった。

「す、すみません。心配で」

ああ、そういうことか。

美月さん、俺の言葉を聞いてたんだ。

「大事な人の店、か」

リョウが肘で俺を突いた。


「ヨシト、ちゃんと言えよ」

「後で殴るからな」

「怖い怖い」


美月さんは照れながらも、少し嬉しそうに笑っていた。

俺は席に座って、ノンアルコールのモヒートを頼んだ。

美月さんがカクテルを作る手つきが、少しだけぎこちない。

でも、それがまた可愛かった。

リョウがハイボールを飲みながら、俺たちを交互に見てニヤニヤしている。


「お前ら、いい雰囲気じゃん」

「黙れ」

「素直になれよ、ヨシト」


美月がクスッと笑った。

店内に、また穏やかな空気が戻ってきた。

でも、心の奥では分かっていた。

これで終わりじゃない。

黒田一家は、必ず報復してくる。

そして、その先には花菱会がいる。

でも、美月さんを守るためなら、俺は誰とでも戦う。

グラスを持ち上げて、モヒートを一口飲んだ。

美月さんが、じっと俺を見つめていた。

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