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ノンアルコールの夜  作者: クレイジーピエロ


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12/14

裏社会の影


いつものようにBar Twilightのカウンターに座っていると、扉が開いてリョウが入ってきた。


「よう、ヨシト」

「リョウ、今日は一人か?」

「ああ。ちょっと話があってな」


リョウは俺の隣に座った。美月が笑顔で近づいてくる。


「リョウさん、いらっしゃい。今日は何にしますか?」

「ハイボールで」

「かしこまりました」


美月がカクテルを作りに行くと、リョウは声を潜めて言った。


「お前、また喧嘩したろ?」

俺は少し驚いて、リョウを見た。

「何で知ってんだよ」

「昨日の夜、路地裏で四人相手に喧嘩したって聞いたぞ」

「誰から聞いた」

「昔の仲間が、色々教えてくれるんだよ」


リョウはニヤリと笑った。

美月がハイボールを持ってきて、カウンターに置く。彼女は他の客の対応に移ったけど、耳はこっちに向いている気がした。


「で、問題なのはな」

リョウがグラスを傾けながら続けた。

「お前が殴った奴らの中に、黒田一家の下っ端がいたらしい」

「黒田一家?」

「ああ。花菱会の傘下の半グレ集団だよ。最近この辺りで勢力伸ばしてる」


花菱会。

その名前は聞いたことがあった。地元の暴力団で、昔から色々と噂があった。


「マジかよ」

「マジだ。まあ、今のところは大丈夫だと思うけどな。下っ端一人殴られたくらいで、組織が動くとは思えない」

リョウは軽く笑っているけど、目は笑っていない。


「でも、花菱会が本格的に絡んでくるようになったら、本当にやばくなるぞ」

「分かってる」

俺は煙草に火をつけた。


「お前、昔の仲間って言ったけど、まだ裏と繋がってんのか?」

「繋がってるってほどじゃないよ。ただ、情報くらいは入ってくる」

リョウは肩を竦めた。

「俺も昔は色々やってたからな。完全に切れるもんじゃないんだよ、ああいう世界は」


美月がカウンターに戻ってきた。彼女の表情が少しだけ硬い。

聞いていたんだ。


「ヨシトさん」

「はい」

「大丈夫ですか?」

彼女の声が心配そうだった。


「大丈夫です。ちょっとしたトラブルなんで」

「でも」

「美月さん」

俺は彼女の目を見た。

「心配かけてすみません。でも、大丈夫です」

美月は少し迷ってから、頷いた。

「分かりました。でも、無理はしないでくださいね」

「はい」


リョウがハイボールを飲み干して、立ち上がった。

「じゃあ俺、そろそろ行くわ。お前も気をつけろよ」

「ああ」


リョウが店を出ていく。

俺は一人、カウンターに残された。

黒田一家。花菱会。

面倒なことになってきた。

でも、今更引き下がるわけにはいかない。

美月を守るためなら、俺はどんな相手とでも戦う。

グラスを持ち上げて、ノンアルコールのモヒートを一口飲んだ。

美月がカウンター越しに、じっと俺を見ていた。

その目には、不安と、でも少しだけ信頼があった気がした。

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