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ノンアルコールの夜  作者: クレイジーピエロ


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11/14

過去からの報復


あの日から一週間が経った。


美月とは毎日連絡を取り合っている。他愛もないメッセージだけど、それが嬉しい。

今夜も、Bar Twilightに向かっていた。

いつもの路地裏に入ると、街灯が少なくて薄暗い。


「よう」


前から声がした。

顔を上げると、そこに田中がいた。

そして、その後ろに三人の男。


「久しぶりだな」


田中がニヤニヤしながら近づいてくる。

俺は立ち止まって、煙草を消した。


「何の用だ」

「何の用だ、じゃねえよ。お前、俺のこと殴っただろ」

「お前が美月さんに絡んだからだ」

「それでも、やりすぎなんだよ」


田中が指を鳴らすと、後ろの三人が前に出てきた。

みんな、俺より若い。二十代後半から三十代前半くらいか。ガタイはいいけど、素人っぽい動きだ。


「今日は仲間連れてきたんだ。覚悟しとけよ」


田中が合図すると、一人が拳を振り上げて突っ込んできた。


遅い。


俺は軽く体を捻って避け、そのまま相手の脇腹に肘を叩き込んだ。


「がっ」


男が呻いて膝をつく。


「おい!」


残りの二人が同時に襲いかかってきた。

右から来た拳を掴んで捻り上げ、左から来た蹴りを膝で受け止める。

そのまま掴んだ腕を引いて、男の顔面に膝蹴りを入れた。


「ぐあっ!」


男が倒れる。

もう一人が後ろから羽交い締めにしようとしてきたけど、俺は頭を後ろに振って後頭部を相手の鼻にぶつけた。


「うわっ!」


男が鼻を押さえてよろめく。

振り返りざまに顎に拳を叩き込むと、男はそのまま地面に倒れた。

三人とも、もう動けない。

田中が青ざめた顔で後ずさりしている。


「お、お前」

「帰れ」


俺は低い声で言った。


「二度と、美月さんに近づくな」


田中は何も言わずに逃げ出した。

残った三人のうち、一人が血を拭きながら立ち上がった。


「お前、やってくれたな」


その男は他の二人とは違う、妙な凄みがあった。


「俺に手出した事、後悔するぞ」

「どういう意味だ」

「いつか分かる」


男はそう言い残して、仲間を引きずるようにして去っていった。

俺は一人、路地裏に残された。

右手の拳が少し痛む。久しぶりに本気で殴った。

煙草に火をつけて、深く吸い込んだ。


「後悔するぞ、か」


その言葉が、妙に引っかかった。

でも今は、美月のところに行かないと。

俺は服の埃を払って、Bar Twilightに向かった。




「いらっしゃいませ」


扉を開けると、美月が笑顔で迎えてくれた。


「ヨシトさん、今日も来てくれたんですね」

「ええ」


俺はいつもの席に座った。右手がまだ少しヒリヒリする。でも、美月さんには気づかれないように隠した。


「ノンアルコールのモヒート、お願いします」

「はい、かしこまりました」


美月さんがカクテルを作り始める。

その穏やかな姿を見ていると、さっきの喧嘩が嘘みたいだ。

でも、あの男の言葉が頭から離れなかった。


「俺に手出した事、後悔するぞ」


グラスが目の前に置かれる。


「どうかされましたか? 少し疲れてるように見えます」

「いえ、大丈夫です」


俺は笑顔を作った。

美月さんを心配させるわけにはいかない。

ミントの香りを吸い込んで、俺は静かにモヒートを飲んだ。

でも、胸の奥に小さな不安が芽生えていた。

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