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恐怖の予感

 夜


 私は核物質を搭載したトラックが港から出荷したという情報を聞き、早速トラックの信号が途絶える山間部にやってきた。


 ーーマスター、そろそろ来ます。


 数時間前


 ーーマスター、完成しました。


 オフィスの椅子で仮眠していた私はsakiの声で起こされた。三人は私が寝る前にしていた映画鑑賞を続けていた。


「おはよう、太陽。sakiが呼んでいたわよ」


「あぁ、saki。出来たか」


 sakiを呼ぶと私のデスクの引き出しが開いた音がした。その中を覗いてみると先ほど私が指示して作らせた潜入用スーツが収まっていた。


「汎用型スニーキングスーツ。マスターの要望通り機能性、運動性重視に作り上げました」


 試着中


「うん、着心地は悪くない。あとはこの上に色々入れるハーネスを付ければ……何見てるんだ?」


 映画を鑑賞していた三人が近くまでやってきて、まじまじとコチラを見ていた。


「太陽さん。もしかして、私たちもこれを着なきゃいけませんか?」


「いや、これは俺だけだ。そもそも、瀬奈達に俺の仕事をやらせるわけにはいかない。心配するな」


 スニーキングスーツを着た瀬奈。恐らく身体の一部が凄いことになるだろう。いや、前と後ろで二つか。


「太陽、いくら動き易さ重視とは言え、こんな薄そうなスーツで大丈夫なの?もっと防弾機能を付けた方が……」


 小神子がそう指摘してきた。


「小神子、ゲームと違って、現実は一発撃たれたら一貫の終わりなんだ。だから、当たらなければどうということはない。という方針でスーツを作った方が任務の成功率も上がるだろう……何だよ」


 三人がまるで信じられないものを見るような目で私を見ている。


「あなたが言っても説得力が無いわ」


「どういうことだ?」


 単純に気になったので聞いてみる。するとかぐやが言った。


「自分の身体に聞いてみろ」


 そう言われてしばらく間を置いた後合点がいった。確かに傷だらけの身体の人間が言えたことではない。するとかぐやが後ろに回って未だまじまじと見ていた。


「太陽お前、結構良いケツしてるな」


 大胆なセクハラ発言。自分の身体を褒められたところで何とも思わないが、今回は何故か怒りのようなものが込み上げてきた。別にわざわざ口にすることでも無いだろうとか、見るところはそこじゃないだろう、とかそんな言葉で済ませれば良いのに


「ぶっ飛ばされたいのか?」


 と、返してしまった。どんな顔をしていたのかわからないが、かぐやが一瞬にしてシュンとなった辺り相当怒ってるように見えたのか。そそくさと瀬奈の後ろに逃げた。


「な、なんだよ!散々私を揶揄ってる癖に!言われる側の気持ちがわかっただろ!?バーカバーカ!」


 見ていて惨めになってきた。


「まぁいいや。saki、トラックの監視を引き続き頼む」


 そうして待っていると夜を迎えた時トラックに動きがあったため行動を開始。現在に至る。


 茂みに潜みトラックが来るのを待つ。私は最大十五メートルは伸びるアンカーフックガンを準備して待った。そしてトラックが過ぎ去るのと同時に発射、それに引っ張られる形で私もトラックにとりついた。


「saki。聞こえるか」


 返答がない。やはり聞いた通りジャミングのようなものが飛んでいるせいで位置情報や通信障害が起きているせいで外部から捉えられないようになっていると見える。ここからはアドリブと現場判断になりそうだ。


 光が見えた。出口に着いたのだろうか、トンネルを抜けて出口に出る瞬間、アンカーを外してトラックから飛び降りた。光の先には、巨大な塔を中心に様々な重機が大量に走ったり、配備されたりしている光景が広がっていた。


「これはすごいな。重機重機重機。色々探り甲斐がありそうだ」


 まずは近くの建物から探ろう。近くの建物までの距離は……建物が十メートルと仮定して、私の片手の指関節の長さと、そこにもう片方の指関節を合わせておおよそ十三センチ、最後に腕の長さである六十五センチくらいだから大体……五十メートル。言ってしまえばほぼ目の前にある。大した距離ではないがついつい測ってしまう悪癖だ。


 周囲に監視カメラは見えない。偵察したところ見張りの兵士もいない、遠方にカメラもない、赤外線センサーも無ければ、ドローンの類も飛んでいない。一体どんなセキュリティをしているか全く謎であった。それでも一応の警戒をしつつ建物に近づいた。三、四階はありそうだ。大きいほど収穫が期待できる。


 白い壁、白い床、白い蛍光灯という白白白。照り返しが激しく、非常に目に悪い。夏場のここに日の光でも入れば日焼け必至だろう。正直長居はしたくない。そんな余計なことを考えていながらでもわかるが、人の気配がない。そういえば外の重機も中に人が乗っていなかった。人工知能の類が動かしていたのだろうか。


 全て四つほどあった建物のうち、三つが外れ。最後に訪れた建物に何もなければここがどういった施設なのか分からずじまいになりそうだった。


「おっとこれはなんだ」


 一室に入ると、無数の線引きと地図が壁いっぱいに貼ってある部屋だった。地図には私やシークのメンバーと、恐らく咲シリーズのことだろうかunknown協力者と書かれた三つの写真が貼られていた。


 机の上や床にはいくつも書類が散らばっており急いで逃げたのだと思わせるような現場だった。その中から書類の一枚に手を取った。


 ーー監視対象報告書 天道太陽


 私の監視していた際の報告書のようだった。瀬奈と一緒に刺客をボコボコにした時も監視していたようだった。そこには刺客が何故首が吹き飛んだかの疑問を払拭するものもあった。任務の失敗を見ていた監視役は情報漏洩を防ぐために遠隔で頭を吹き飛ばしたのだそうだ。


 他に何か無いか見ると何者かの気配を感じた。気づいた時には私の後頭部に銃を向けられていた。


「監視対象がのこのことやってくるとは。こちらからお迎えする手間が省けて助かりました。天道さん」


 男の声、日本語を話しているが片言、向こうの国の人間だろうか。私は両手をゆっくりと上げて後頭部で手を組んだ。


「コチラをむきなさい。ゆっくりと」


 私は言われた通り、男の方を向いた。そこにいたのは痩せこけた顔に軽薄そうな目をしたいかにも胡散臭そうな青年が立っていた。


「あんた誰だ」


「勝手に口を開かないでくれます?まぁ、良いでしょう。私は大海東重工のマオと申します。以後お見知りおきを」


 恐らく現在進行形で日本語を勉強しているであろう身に、よくもまぁそんな流暢な日本語が出てくるものだとつい感心してしまう。


「天道太陽さん。あなたは以前の改造人間の件以来目障りな存在となりましたので、お仲間共々死んでいただきます」


「やっぱり、あいつらと大海東は繋がっていたのか」


 とある政治家と大手企業が結託して、改造人間を作り、海外の紛争地域へ放出していたビジネス。やはり一枚岩ではなかったか。


「えぇ。しっかりと。残念ながら私達の専門外ではありますがね。しっかし、こうも簡単に抑えられるとは思ってもみませんでしたよ。噂ほどの腕は無いようだ」


「どんな噂か気になるな」


「それを知る必要はありません。もう抹殺しますので。そうそう、あなたのお仲間をこれからどうするかですが、素材としては申し分ないので是非、うちの精力剤を投与させた男社員の相手をさせて、半永久的に人的リソースを提供するのと、三人仲良く改造人間として迎え入れるのどっちが良いですか?」


 男のその言葉を聞くと思いつく限りの怒りに触れる言葉が脳裏をよぎった。腸が煮えくり帰る、逆鱗に触れる、神経を逆撫でする、怒髪天を衝く、堪忍袋の緒が切れる、こんな具合だ。


 私は銃口を向けられた顔面を左に避けると、後頭部で組んでいた右腕に出来た輪に銃口を通すようなイメージで相手に接近、そのまま左手で銃を握っていた右手を掴むと同時に、右手で渾身のストレートを叩き込んだ。あまりの咄嗟の行動に驚いたのか吹き飛ぶと同時に男から銃を取り上げるのは造作もなかった。


「たまにいるんだよ。仲間を人質にとったつもりで良い気になってる奴が。だがな、そんなもん俺の前じゃ逆効果だ。じゃあ聞こうか。ここは何だ、何が狙いだ」


 私は男に馬乗りになった。男は殴られたのが原因か、涙目になっていた。見た目からそう見えるのだがお坊ちゃん気質なのだろうか。


「さっさと話さないと、爪を一枚ずつ剥がしていくからな。その後はこのグロックを使ってお前の指を一本ずつ撃つ。こいつは十九発入るから、足の指も含めて好きな指一本選ばせてやるから、それ以外を撃つ。まず一枚目」


 私は勢いよく男の右手の人差し指の爪を剥がした。すると男が暴れて地団駄を踏むと私の背中を蹴り始めたが、私は意に介さず続ける。


「次はどこが良い。あと十九本だ。まだまだこれからだぞ」


「わかった言う!」


 指の爪一枚剥がれたくらいで根を上げた。痛覚に耐える訓練をしていないのだろうか。


「こ、ここは……小型核爆弾搭載型重機開発工場兼ミサイルサイロだ」


 おっと、これは予想外だった。


「そうか。で、この国で何を企んでる」


「単純な話だ……小型核爆弾搭載型重機を秘密裏にこの国の脳幹に位置する場所や各主要都市に配置して、一斉に自爆させる……一台の威力は大したことはないがそれが、大量にあると充分な威力だ。もしそれがダメでもあのミサイルを放てば、国の崩壊なんて一発で充分だ。それも今日この後」


 マズイ。時間的にも通勤ラッシュにド直球、国の脳幹を攻めるなら絶好の機会だ。


 ここで私は理子の言葉を思い出す。


 ーー大海東……確か中国の会社だったかしら。ここ最近重機を周りでよく見かけるようになったわ。


 ここで私は最悪の結末を想像してしまう。理子だけではない。完全に二、三手遅れた。このままではこの国が、最悪世界が滅亡する事態だった。


「おいお前!あのトラックを遠隔で自爆させるなら、停止のスイッチがあるはずだ!どこにある!?」


 いつにも増して大声で男に叫ぶ。


「て、停止スイッチは無いです……重機そのものを破壊するか爆弾を一つずつ解体するしか方法はない」


「なら起爆スイッチはどこだ!?誰かが持っているはずだ!」


「それは……私も知らされていない。だが、現場のどこかにいるエージェントが持っていると聞いた事がある……」


 核爆弾は何も銃弾や火をつければ爆発するわけではない。大雑把な仕組みとしては中の点火装置が作動して、その後核分裂反応を引き起こさせることで初めてあの恐ろしいキノコ雲が立つ。それだけは阻止しなければ。


 私は一旦男を絞め落として気絶させた後拘束。すぐさま、ミサイル発射を司る機器を破壊して施設を脱出。空になっていたトラックに乗り、最初の位置に戻ってきた。そして、近くに停めていた愛車のNM4に乗りsakiに連絡する。


 ーーマスター。やっと……


「saki!今すぐ言うものをありったけ用意して……の指定するポイントに俺の愛車に載せて配置してくれ」


 ーーかしこまりました。


 私はsakiに用意するものを伝えて、私はバイクで……まで急いで走った。


 数分後


 今日で二度目の理子の職場の近くにやってきた。相変わらず通勤ラッシュど真ん中だった。


 ーーマスター、配置完了しました。いつでも行けます。


「わかった。カメラはどうだ」


 ーー半径二キロ範囲内のカメラをハッキング完了。


「必ず一人不穏な動きをするはずだ。見落とすな」


 ーー了解しました。


「よし、始めろ」


 ーーでは、ご武運を。


 次の瞬間、私のスマホの画面がぷつりと消えた。それと同時に未だについていた街灯や電気という電気が同時に消えた。その十秒後、私のスマホが真っ先に起動した。そして位置情報のアプリで近くのポイントが赤く光った。


 仕組みとしてはこうだ。トラックが自動制御されていることを逆手に取り、システムと爆発が同期されていると仮定して、電磁パルス。通称EMPを用意して……の地域全体を覆うようにEMPを搭載した車を配置、それと同時にsakiには監視カメラを使って男の言っていたエージェントを捜索、一般的な端末だと約一分ほどで復旧するのとは違い、シークの端末は十秒ほどで復旧する。起動と同時に怪しい動きをしている人物を特定して私が急行、無効化するという算段だ。


 また、重機に関してはシステム復帰と同時にsakiがハッキング、遠隔操作で港に送り返すというものだ。


 私は位置情報で赤く光った地点に向かった。そう遠くない。感覚また五十メートルと言ったところだ。それほど近くならバイクではなく足で行った方が都合が良い。ポイントに近づくと突如一人逃げ出した人物がいた。間違いない。


 私は人をかき分けながら進みついに追いついて男を捕らえた。四千年の歴史の母国語を話しながら何か訴えていたが、私は意に介さず持ち物を探った。そして男が持っていたたった一つのもの。スイッチを見つけた。取り上げて胸ポケットにしまい男を絞め落とした。


「saki。後は任せたぞ」


 私は近くまで自動操縦でやってきたマスタングに男を乗せて車を発進させた。

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