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06th.27『地下への入口』






「……………………」


 建物を出て、トイレ男は少し考えた後、黒女達の所に戻る事にした。行かないと黒女が臍を曲げそうだと思ったのである。


「……………………」


 丁度トイレ男の後から出て来たやさぐれ女の後ろを付いていく。


「……喋れないのは判っていますが、それでも付いてくるなら何か一言お願いします」


「……………………」


 人目が有るからであろう、まだ女声女言葉で話すやさぐれ女であった。


【付いてくぞ】


「遅い」


 書いて後ろから渡したが、そう一蹴されてしまった。ならどうすればよかったのだろうか。トイレ男には判らない。


 路地裏に入り、やさぐれ女の隠れ家の近くまで来た。


「ここで待ってろ」


 人が居なくなりいつもの粗野な口調に戻ったやさぐれ女はそう言い角に消えた。


 少しして見慣れたやさぐれ男が戻ってきた。


「行くぞ。早く道憶えろよ」


「……………………」


 これでも憶える努力はしているのである。


 道中は特に何も会話も無く、二人は館に着いた。


「この時間だとアーニ達は地下の訓練場だ……いつもならな。今日はまだリニングクスやってんかも知んねぇが」


「……………………」


 前者の場合だと地下、後者だと二階。


 トイレ男は先に二階を見る事にした。


「俺ぁ帰るから、後は好きにしろよ」


 やさぐれ男はそう言い残し、建物を出て行った。「…………」、優しい奴である。


 トイレ男は二階に上り、例の部屋のドアを開けた。が、そこは照明すら点いておらず、誰も居ない。白女が居るかも知れないというだけだ。


 トイレ男は扉を閉じて、他の部屋を見て回った。が、どこにも誰もいない。鍵が掛かっている部屋が四つ、掛かっていない部屋が二つ有った。掛かっていない部屋には棚とベッドが有ったので、恐らく寝室なのだろう。部屋数的に、黒女に黒男トリオ、後は茶男と白女orやさぐれ男の部屋だと思われる。「…………」、鍵を掛けてないのは黒女と大黒男か、と何と無く予想が付いた。


 トイレ男は一階に降りて、さて地下への入口はどこだろうと考え込んだ。


「……………………」


 当然ながら、二階へと続く階段の近くには無い。蓋がされている様子も無い。


 なら、未だ入った事の無い一階の部屋のどこかに階段が有るのだろう。


「……………………」


 トイレ男は探す事にした。


 が、どの部屋も鍵が掛かっているのであった。


「……………………」


 トイレ男が見付けたドアは三つ。その全てに鍵が掛かっていた。


 部屋は諦めて廊下を隅々まで、それこそカーペットの下や調度品の裏まで確認したが、それらしき物は無かった。


「……………………」


 もうトイレ男に一階でできる事は無い。


 トイレ男は少し考えて、帰る事にした。別にどうしても行かないという訳では無いのだ。階段を捜している所を茶男に見られてもマズい(あの男はトイレ男を全知だと思っており、それが今の待遇に繋がっている)ので、諦めて帰るのだ。


 そして玄関に手を掛けたトイレ男であったが、触れる前にドアが開いた。


 外開きの扉の先に居たのは黒女だ。


「あ、ツァーヴァス」


「……………………」


 やさぐれ男は確かに地下か二階に居ると言っていたのだが。


【地下に居るんじゃなかったのか?】


「うん、そうだけど? というかそうだったからここに居るんだけど」


「……………………?」


「あ、知らない? 地下の入口って外に有るのよ」


「……………………」


 トイレ男の時間は無駄になった。


「ほら、ここの下って地下水路が通ってるじゃない。だから下手に掘れないのよ」


「……………………」


 地下水路とは水路とは名ばかりの廃墟である。嘗てここに水を通し井戸を使わずとも水を手に入れられる様にするという計画が有ったらしいが、衛生上の問題を解決できず計画は凍結、後には金と労力ばかりが掛かった地下空間のみが残された。


 因みに、下水は別の水路を通って街の外の川に棄てられる。


「んじゃ、入口まで案内するから着いて来なさい」


「……………………」


 元より地下に行く積もりだったし、特に帰って何かするという訳でもないので頷いた。


 それを見たのか見てないのか、黒女はトイレ男に背を向けてスタスタと歩き出した。トイレ男は建物を出、ドアを閉めてそれを追う。


【そう言えば何で戻って来たんだ?】


「貴方に付いとけって言われてたの完璧に忘れてたわ」


「……………………」


 そう言えばコイツも監視役だったか。


 ここ数日ですっかりそんなイメージが薄れてきていた黒女であった。トイレ男としてはもう『賑やかし役』という印象が強い。


 それから少し歩いて、二人は或る一角に来た。


「……………………」


 トイレ男の記憶が正しければ、以前髭面が放り込まれていたゴミ箱が目の前に有る。


 黒女はそのゴミ箱の隣に有る別のゴミ箱を開け、躊躇無くその中に入り込むとしゃがんで何かをし始めた。


 少しして、彼女の姿が消えた。


「!?」


 慌ててゴミ箱を覗き込む。


 中身は髭面が押し込まれていたのと同じ様に綺麗だった。多少の埃は有れどゴミは無い。こんな所に有れば誰かしら棄てそうな物だが……と思って、周囲を見渡してみた。道端にはゴミが散乱している。「…………」、そういう事なのだろう。


 トイレ男はゴミ箱の中に入ってみた。そしてしゃがみ込んで、黒女が何をしていたのかを探る。直ぐにそれは知れた。よく見るとゴミ箱の底に埋め込まれる形で三つのボタンが有る。彼女はこれを押したのだろう。問題はどれを押すかだ。


「……………………」


 トイレ男は横一列に並んだボタンの内、右端のを押してみた。「…………」、何も起こらない。真ん中。「…………」、何も起こらない。左。「…………」、何も起こらない。


「……………………」


 どうやらボタンは単体では意味が無く、複数同時に押すか決まった順番で押すかしないといけないらしい。


 トイレ男は先ずは左中・中右・右左・全部をそれぞれ同時に押しても何も起こらない事を確かめた。では、決まった順番で押せという事なのだろう。


 トイレ男は左中右の順番で押してみる事にする。が、


「……!?」


 左のボタンに手を掛けた途端底が()()、トイレ男はその真下に落ちていった。




     ◊◊◊




 別に落ちたといっても垂直落下という訳ではなく、滑り台の様に斜面を滑り降りるという感じであった。


「……………………」


 そしてトイレ男は見事着地に失敗し顔を床に擦り付けるのであった。 痛い。


「順番を教えるのを忘れてたわ。右右右右右右右右右右右の順番で押せばいいわ。でも連打の感覚が早過ぎると反応しないから」


「……………………」


 右しか無ぇじゃねぇか! 残り二つはダミーかよ!! そう心で叫んだ。


「……………………」


 気を取り直して立ち上がる。抱き締めて庇ったお陰か、トイレには傷一つ無い。


【ここは何をする所なんだ?】


「ここは訓練場ね。私が騙界術の訓練をしたり、ハミー達が運動の訓練をしたりするの」


「……………………」


 そういえばやさぐれ男も地下の訓練場とか言ってたなと思い出したトイレ男であった。


 黒女が指差した先を見ると、そこでは黒男トリオが人形相手に短剣を突き刺したり首を掻っ切ったりしていた。壁際に腕を組んでそれを見守る白女も居る。


 黒男が人形の胸に短剣を刺した。黒男はそれを抜き、また刺す。抜く。刺す。それを繰り返している。驚くべき事に、刺さる場所がズレる様子は無い。


 小黒男が人形の首を切り付ける。何度も何度も切り付ける。あの体格でそれ程筋力も無いだろうに、残像すら残す速度で振るわれる短剣はそれ程掛からず人形の首を切断した。


 大黒男は人形を後ろから抱き締めている。一応手に短剣は握っているものの、使う様子は無い。何してるんだ? と思うも、直ぐに人形が破壊されたのを見てそういう事かと納得した。大黒男は格闘家なのだ。三人とも戦い方が違う様で見ていて楽しい……実践して欲しいとは思わないが。


「それで? ここに来たんなら何か用が有るんでしょ?」


「……………………」


 いや特に無い……と書こうとして、トイレ男は止めた。


 黒女と二人きり(正確には黒男トリオや白女も居るが、こちらの声は聞こえまい)のこの状況、あれをするにはピッタリだ。


【あぁ、幾つか話したい事が有ってな】


 トイレ男は質問⸺黒女や白女の能力、そして組織の正体等に就いての疑問を遂に解決する事にした。

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