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06th.17『"約束"の結末と最悪な第二印象』






 茶男の主張は『俺達が"裏"に居る以上、どこかの組織に抗争を仕掛けられたりそこまでは行かずとも暴力沙汰になる事は多々有る。その場合に一人も相手を殺さない事は舐められる事に繋がり兼ねないので、それぐらいは許して欲しい』という事だった。


「…………、解、った」


 手を下ろしたトイレ男は了承した。それぐらいならまぁ、という事である。相手も"裏"に居る以上人の一人や二人は殺しているだろう。流石にソイツが殺されるのは自業自得というか因果応報というか、自己責任である。


「……言ったけ、ど、曲解す、んなよ? 『俺は直、接手を下してな、いからセーフ』とか、瀕死にし、て放置とかも駄、目だかんな」


「解っている。『殺人とそれに準ずる行為』だろう? もう人を傷付けるのも怖いぐらいだ」


 敵を殴れなくなったらどうしてくれる、と茶男。


「……………………」


 トイレ男としては余りにアッサリ通ってしまい裏が有るのではと疑った結果としての念押しだったが……無いのだろうか。


「ほな、二人ともそんなんでえぇかー」


「あぁ」


「……おぅ」


「ほな、"約束"しましょか」


 約束師(なこうど)がそう言うので、トイレ男はまだ"約束"の内容を決めただけで、"約束"その物はしていないという事を思い出した。すっかり終わった気になっていた。


「んじゃ、行くで〜。二人とも手ぇ出して小指絡めてぇな」


 トイレ男は右腕でトイレを持っていたので、空いている左手を出した。が、小指を絡めてと言われてもどうすればいいのか判らない。そこに茶男の右手がやって来て、小指でトイレ男の小指を絡め取った。茶男がその状態で拳を握ったので、真似する。単体で見ると、小指だけが握られていない変則的な拳の形となった。


「んぁんぁ、じゃ『指切り(げん)(まん)、嘘吐いたら針一〇〇〇本飲ーます。指切った』て二人で言うてな。『せーの』で行こか」


「あぁ」


「……解っ、た」


 地味に長い。詰まらずに言い切れるか不安なトイレ男であった。


「んじゃ、せーの」


「「指切」りg」


 案の定最初で詰まった。


「「「……………………」」」


 無言で見詰め合うトイレ男と茶男、そしてそれをニコニコ眺める約束師(なこうど)


「せーの」


「「ゆ」びk」


 二回目の挑戦も失敗した。


「「………………」」


「せーの」


「「y」ub、!?」


 それから何十回か試して、漸く成功した。


「はぁ、はぁ」


 茶男は息切れしていた。


「んぁー、結構時間掛かりはりましたなぁ。んま、これで"約束"は交わされましたわ」


「……ちなみ、に、破っ、た罰則はな、にが有るん、だ?」


「んぁ? さっき言った通り拳万と針一〇〇〇本ですわ。一万回殴られて、針を一〇〇〇本飲まされはるんですよ」


「!?」


 致死性のバチだった。バチという幼い言葉に似合わぬ危険性である。


 んぁんぁ、破らんかったら関係有りまへんわー、と何でも無い様に笑う約束師(なこうど)だったが、トイレ男は引き攣りながらしか笑えない。いざという時に破れないのは……少し怖い。いや、情報を漏らさず、組織の人間に攻撃しなければいいだけなのだが。


「ほな、ワテは帰りますわ。約束師(なこうど)さんは今日も大忙しやけんの〜」


 今日はもう終わるだろ、というトイレ男のツッコミが放たれる前に約束師(なこうど)は部屋から出て行った。「…………」、まぁ"裏"の住人たる彼の稼ぎ時はこれからなのかも知れないが。


「さて」


 トイレ男が何と無く開けっ放しのドアの方を見ていると、茶男がそう切り出した。


「これで貴様は曲がりなりにもウチの組織のメンバーだ。という事で、他のメンバー達に自己紹介をしに行ってもらう」


「…………あぁ」


 組織の他のメンバー達に挨拶をしに行く⸺詰まり白女にも会うという事だ。気が進まない。進む訳無い。


「……今日はも、う遅いし、明日にし、ねぇか?」


 俺明日も仕事なんだけど、と主張してみる。


「一徹ぐらい大丈夫だろう」


 え? 何それ、今日は寝させないぞって事ですか?


 トイレ男は思った。ここに居ると緊張するのだ。そして緊張すればする程眠気が消えてゆくのだ。早く帰してくれ、でないと今夜寝れなくなっちゃう。


 そしてそれはそれとしてお腹空いた。晩御飯がまだなのである。


 茶男の案内で、暗かった部屋から廊下に出る。そう言えば約束師(なこうど)は部屋を明るくした物を置いて帰ったな? と思いつつ背後を振り返り、彼が置いていった物を見る。大きな白い、卵型の物体だ。中でユラユラしているのが見えるが、異様に明るい。普通のランプよりもとても明るいのである。何なんだあれ、と深く観察する前に、扉が閉じられてしまった。


 疑問の追求は諦めて、茶男の後ろを追う。彼は二階に降りると、その一室にノックも無しに入った。


「あっ、お父様」


「何だ親父?」


 部屋の中には、黒女に黒男トリオ、そして壁際に白女も居た。「…………」、やさぐれ男は見えない。


 黒女と黒男トリオはテーブルの各辺に座って何やらカードゲームに興じていた様だ。そして白女は、それを少し離れた所から静かに眺めている。参加したい、というよりは他にする事も無いので見ているという様に思えた。


「紹介する。今日からウチの組織に入る事になった、ツァーヴァスだ」


「……よ、ろしく」


 トイレ男は態々嫌な態度を執って敵対する事も無いだろうと、軽く手を挙げて挨拶しておいた。


 黒女と黒男トリオは「あれ? こないだの奴じゃん」「私が連れて来たのよ」「何でトイレ持ってんだよ」「何で居るんだ?」等と、カードゲームをそっちのけで卓に身を乗り出して議論(?)している。唯、白女だけがジッとトイレ男の方を見ているので居心地が悪かった。


「ほら、お前らも自己紹介ぐらいしろ」


「あ、はい」


 茶男に注意されて、黒女と黒男トリオは立ち上がり、それぞれ自分の名前を述べた。白女は静かにこちらに歩み寄ってきたかと思うと、「……宜しく」とだけ言って戻った。「…………」、名前は?


「彼は"子"ではなく、白やハインツと同じ待遇で加入する。サポートメンバーだな。まぁ、仲好くしろ」


「「「「はぁーい」」」」


「……………………」


 え、コイツらと仲好しこよしししないといけないんですか? 平気で人を殺せる様な奴らと? え? トイレ男は逃げたくなった。


「それと、暫く依頼は請けない事になった。ツァーヴァスとの取引の結果だ。あ、コイツの正体に就いて探る事は止めろよ? 俺でも判らないんだからな。無闇に知ればどうなるか判らん」


「「「「……はぁーい」」」」


 黒女達は、全員微妙に動いてトイレ男から離れた。「…………」、別に寂しいとは思わなかった。


「それじゃ、後は好きにしろ」


 茶男はトイレ男にそれだけ言うと、部屋から出て行った。帰ってもいいのだろうか?


「「「「……………………」」」」


 黒女達はトイレ男から微妙に距離を置いていた。茶男からの、最後の警告が無ければクエスチョンマシンガンをしていた所であるが、茶男が変な事を言った所為で話し掛け辛くなったのである。


 トイレ男もトイレ男でどうしたらいいか判らずオロオロしているので、場の雰囲気は最悪だった。


「……………………」


 それに白女が軽く溜息を吐いてから、動いた。


 再びトイレ男の元に歩み寄ると、


「……そのトイレって、何なの?」


 と質問した。


「……………………」


 トラウマに直接話し掛けられたトイレ男は冷や汗マシマシである。背中とかもうぐっしょり濡れていた。


「…………ぁー」


 それでも、目の前に居る相手を脳内でフルボッコにするという珍しい経験をして、


「……趣、味だ。持、ってると安、心する」


 とだけ言えた。


「……………………」


 ほら、怖くないよ? とでも言いた気に白女は黒女達の方を向いた。


「「「「……………………」」」」


 黒女達は別の意味で距離を取りたがっていた。


「……………………」


 質問を間違えたか、と白女は後悔した。


「……………………」


 いや普通はこうなるよな、とトイレ男は思い直した。白女が気を遣ってくれたのは明らかであるのに、これじゃ台無しである。


「…………ぁー、」


 トイレ男は少し考えて、


「…………親の形、見なんだ」


 と嘘を吐いた。


「「「「……………………」」」」


「……………………」


「……………………」


 どうやら選択を誤ったらしい。場の雰囲気は最悪だった。


「…………帰、るわ、じゃあな」


 トイレ男は逃げた。


 もうあの場所に居たくなかった。






━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 自己紹介の具体的な部分は端折らせてもらいました。既に全員本文中で名前出てるのにもう一度言うのも(くど)い気がしたので。


 一応、以下に地の文での呼び名と本名の対応表を載せておきます。


 黒女…………アーニ

 黒男…………ハミー

 大黒男………ディグリー

 小黒男………ペテル

 茶男…………ジエクラ

 白女…………--(未出)

 やさぐれ男…ハインツ


 約束師(なこうど)………ナコード


 トイレ男……ツァーヴァス・ニフロス・アマリア

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