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第八話「天の音に響かせ続け!第二次試験!」

 天井に突き刺さるようにめり込む消しゴム。落ちてくる事のないそれは受験者達に体育館の天井に永遠と放置された幾つものボールを思い出させる。ボトッ…。

「あっ、落ちた」

 音がしてから消しゴムが落ちるまでの時間、きっと三秒そこらの出来事だったのだろう。しかしその一部始終を見た者達にとっては感覚その数倍の時間を感じた事だろう。それはストログも例外なく。

 

 消しゴムが落下し床に転がる。——カリカリ、カリカリカリ——

 それはペンのカリカリ音。——何事か。再び大講義室にはこのなんとも言えぬやかましい音響が響き始めたのだ。カリカリ音は徐々に増えていき数十秒後には受験者の皆で(かな)で始める。その光景にストログは驚愕する。誰もカンニングしている様子はなく解答用紙に向き合い、答えを書いている。

 これの真相を探るべく、彼は紙を懐にしまい立ち上がる。


 ここから試験官ストログの推理が始まる。

 これではまるで試験開始直後の時と同じではないか。——っ!あの消しゴムで受験者達から目を離してしまった間にまたリプレイプロジェクターを使用したのか?もし使用しているならば彼らの方に近づけば景色は現在のものに変わるはず——

 ストログは受験者達の方へと近づく、一歩、また一歩と。

「——っ。変わらない。何もしていないのか。ならばなぜ…?」

 席には受験者三十名が揃っている。誰も席から離れないでどうやって!間違いなく彼らは今、正答を書いている!しかし彼らのこの目!これは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のようなものではなく、夏休みの宿題を()()を見ながら埋めていく()()()()()()()()()()()()()()()!間違いなく何かをしている!ふっ…私ももう甘い試験官としてではなく、厳しめに見ていくしかないようだな…!

 ストログは暇すぎるあまり探偵ごっこに拍車をかけたか、思考を巡らせてなぜ受験者らが突然答えを埋めていけるようになったかを推理する。

 まずことの発端はヘブンイレイサー(※天井に消しゴムめり込みの件)からだ。あれを引き起こしたのは受験者名簿から耀偽(かがりぎ)を見るに間違いなくカムイ。しかし彼女も何か不正しているようには見えん、机にも問題用紙と解答用紙だけ。椅子の下、となりのマガツ、何もないか…席に消しゴムがない、ヘブンイレイサーはやはり彼女で間違いないようだ。しかしこれは今正答を書けている証拠ではなく別のものに過ぎない。

 ストログはカムイの机にヘブンイレイサーの消しゴムをそっと置くとさらに周りを見渡す。すると、影雷が机に潜り込むのを目撃する。

「忍びの少年!何をしている!?」

 空気が張り詰める。カリカリとしたペンの音はピタッと止み、それはストログを確信させる。こいつが何かをしていたな、と。

「い、いや〜、また消しゴム落としちゃって…」

「次落としたら私を呼べと言ったはずだが?」

「す、すみません…」

 ストログは影雷に注意するもそれは影雷を少しも動かさないようにするため。目を離さず足を急がせ近づくと彼の席を隅々まで探る。受験者らは冷や汗を流し、空気はさらに張り詰める。

 探る、念入りに探る、——しかし何も不正したようなものは見当たらない。

 なぜだ?この忍びの少年を探る際の受験者達の焦り、緊張感、張り詰めた空気。あれは本物だった。確実に()()()()が何かをしていた。でなければここまで正答を書けるはずが——ッ!?

 ストログは見つけた。見つけてしまう。気づいてしまう。確信させてしまう。この状況で最も不自然なものを見つけたことで。

「君の解答用紙だけ……白紙だな…」

 大講義室はもはや無酸素状態となる。白紙なだけの解答用紙。これが最もたる不自然。

「知らぬうちに君以外の受験者のあらかた解答用紙を正答で埋めたようだ。君以外は、な。…なぜ君だけ…まるっきり逆の状況の、白紙の解答用紙なんだぁぁぁ!?」

 バンッ、とその解答用紙を影雷に突きつける。これは影雷が何かしらの方法で正答を受験者全員に知らせた状況証拠。影雷は受験者全員に模範解答用紙を渡し終え、いざ自分も答えを写すぞ、と戻ったタイミングで運悪く見られてしまったものなのだとストログを確信させるものだったのだ。

「これは皆が不正行為をした可能性があるな。もはや皆失格にするしか——」

「おいおい、ストログさん、判断が早いんじゃねぇか?」

「どういうことだ?君の解答用紙だけが白紙なんだ、これほど不自然なことがあるか?」

 首を傾げてなぜかと問うストログ。彼にとってはこれ以上ないほどの疑う根拠、影雷はどう切り抜けるのかマガツ達受験者は彼らの会話に全神経を研ぎ澄まして聞き耳を立てる。

「そこだよ、ストログさん。不自然なだけ。俺だけ答えが何一つわからないだけ…それがどうした?どこがこの白紙なだけの解答用紙に全員が関わる不正行為の根拠があるってんだ?俺はタイミング悪く消しゴムを拾ってるのを見られただけ。そりゃアンタを呼ばなかったのは不正してたかもと疑われても仕方ないが、これもなんら根拠にもならないだろ?」

 影雷の言葉にストログは納得することのできない様子を見せる。しかし、実際のところ明確に証拠になるものでもない。十中八九影雷が何かを仕掛けていた疑惑をもたらすだけ。影雷はストログ自身が確固たる証拠ではないものでここまで問い詰めているということへ反論したのだ。ストログは諦めざる終えない。

「……確かにな。確かにその通りだ。なんの証拠にもならん。うむ、きっと本当に君だけが皆と違い正答をひらめくことが出来ず、さらには運悪く消しゴムを拾ったタイミングで偶然私が見てしまったのだろうな。すまない、私のせいで大事な試験時間を減らしてしまった」

「はぁ。わかってくれたか!良かった。それならまた試験官の席でみんなを監視し——」

「あぁ。そうだな。誰も不正行為はしていないようだし終わっていないのは君だけのようだ。なら…もう一度君に濡れ衣を着せぬよう、私は最後、君のそばでしっかりと試験官の役目を果たそう」

 影雷、窮地。マガツは心配し何かできることはないかと考える。このままではストログは影雷を監視し続け、試験が終わるまで目を離さないだろう。そうなれば模範解答用紙を見る隙がないままタイムアップ。影雷のみ不合格となる。またもし影雷が無理矢理にでも模範解答用紙を見ようものなら再び皆が疑われる。受験者達は影雷への恩がある。皆が何か出来ることはないかとほんの少し身動きを取ろうとすると——

「お前達皆動くな!」

 今までで一番の怒鳴り声が大講義室の空間を響かせ揺らす。皆ビクッ、としたまま動きを止める。直感で理解する。今のストログにはどんなに些細なことであっても見逃すことはないことを。

「今から忍者少年が試験を終えるまで、少しでも動いた者はその瞬間に不正行為の疑いで失格とする。これは皆が不正行為していないことを見極めるためだ。理解してくれ」

 今まで甘く見ていた分、最後は厳しくさせてもらうぞ受験者達。そして忍者少年、君は本当に運が悪かったな。きっと君はこの試験の時間、一番に皆のために動き、努めたのだろう。しかし、私は君が机に潜るのを見てしまった。最後の最後に悪いが試験官としてどんな不正も見逃さんぞ!


 ——カリ、カリ。カリ、カリ。カリカリ、カリカリ。

「——っ!?」

 カリカリカリ、カリカリカリ。カリカリカリカリ、カリカリカリカリ。

「な、なぜ!なぜ、なぜなぜ、なぜなぜなぜなぜぇ!この忍者少年、解答用紙に正答を書き始めることができているんだぁぁぁぁ!?」

 ストログは影雷を四方八方から見渡し探る、そして大講義室全体も、しかし——

「何も不正している様子はないぃぃい!他の受験者らが何かをしている素振りもない、それどころかなんで書けてんだ?って顔をしている!?天井も、壁も、床も、不正など、どこにも無い!忍者少年!まさか、本当にただ閃いたとでも言うのかぁぁぁぁ!」

 大講義室にはストログの叫びと影雷が解答用紙に答えを書くペンの——

 カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ——


 影雷がペンを置くと数秒間の静寂が大講義室の空間を覆う。ハッ、とストログは影雷の解答用紙を見る。

「……満点だ。まさか本当に…どうやって…」

「言ったでしょ?不正行為はしてなくて、ただ消しゴム拾ってただけだって」

 ストログは影雷のその言葉を聞き、フッ、と笑いをこぼす。

「これで皆、解答用紙を埋め切ったようだな、もう動いて問題ない。君達は自由だ」

 大講義室の張り詰めた空気は解放され皆が一斉に——

「いっっっやったぞぉぉ!」

 受験者達は喜び、それを皆で分かち合う…という瞬間に——

「ちょっと待ったぁぁぁぁ!」

 聞き覚えのない声が大講義室に響く。ニヤリと不気味な笑顔で笑い、何かを企む顔で立ち上がる。なんということだろうか、まだこの第二次試験は続くようだ。

第八話をお読みいただきありがとうございました!


今回はマジでメチャクチャな回に仕上がりましたw

次回はなぜ受験者の皆が解答用紙を正答で埋めることができたかが発覚します!

そして最後に皆が歓喜するのを止めた奴は一体なんのつもりなのか?

次回で第二次試験は完結させるつもりなのでそれまでお楽しみに!

ただ文字数が半端なくなりそうなので時間がかかりそう。ぜひブクマしてお待ちを!


この作品を読んで何か心を掴めるものがありましたら私作者は感激します。

もし『面白い』『続きを読みたい』など少しでも感じましたら

下にある評価をいただけると幸いです!是非お願いします!


私作者は執筆がかなり遅いため投稿に三日以上かかることも多々ありますので

是非ブックマークなどをしてお待ちいただけると幸いです…!

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