第4話
「邪魔だ! どけどけェッ!」
俺は雄叫びを上げながらガードレールを横殴りに振るう。
その一撃はバリケード前にいたゾンビを一気に薙ぎ払った。
腕から全身にかけてとてつもない衝撃が走るも、パワードスーツはびくともしない。
戦闘用に調整された機体は恐ろしいほどに頑丈なのだ。
一発でひしゃげたガードレールを投げ捨てた俺は、上機嫌に両手を動かす。
「ははは! さすが最新型は違うなっ!」
そうこうするうちに、起き上がったゾンビが俺に殺到してきた。
奴らは数に任せて押し潰そうとしてくる。
俺は踏ん張って押し返そうとするが、少し厳しそうだった。
アスファルトに足がめり込み、徐々に後退してしまう。
「鬱陶しいな、この野郎っ」
前腕から高振動ブレードを展開させて、クロールのような動きでゾンビを切り裂きながら進む。
さらに背面から散弾を発射し、しがみ付いてくるゾンビをズタズタにした。
腐肉の壁を崩したところで、あとは片っ端から殴り倒していく。
ゾンビの力は強いが肉体は脆い。
その怪力もパワードスーツには劣るレベルであり、少々強引な戦法でも死ぬ心配はなさそうだった。
とにかくモール内への侵入を防げればいい。
そうして入り口付近のゾンビを全滅させた時、大地が揺れ始めた。
俺は血みどろの拳を下ろして怪訝に思う。
(地震か?)
大通りの向こうから、巨大なボール状の何かが転がってくる。
道路を砕き、左右の建物を削りながら迫るのは、途方もないサイズの肉塊だった。
表面には無数のゾンビと放置車両、アスファルトがへばり付いている。
転がることで進路上の物体を巻き込み、さらに大きくなっているようだった。
肉塊の進む先にはちょうどショッピングモールがあった。
速度はそれなりなので、あと数分もせずに到着するだろう。
俺は苦笑いして再び臨戦態勢に入る。
「おいおい、ふざけんなよ」
両手に搭載された機銃を使用する。
連続で放たれた弾丸が肉塊に命中したが、少し血が弾けただけだった。
肉塊の移動スピードは少しも落ちない。
すべての銃弾を撃ち尽くした俺は嘆息する。
諦めて逃げるという選択肢はなかった。
(消耗が激しいが手段は選んでいられないな……)
俺はスーツの胸部のレバーを操作し、切り札の砲身を出す。
スーツに残るエネルギーの99%が凝縮され、極太のビームとして発射された。
ビームは肉塊の中央に風穴を開ける。
停止した肉塊は血飛沫を上げながら瓦解する。
肉塊の正体は極限まで肥大化した一匹のゾンビだった。