第2話
「おおっ、珍しいな! こんな場所に保管されていたのか」
俺はパワードスーツに駆け寄って状態を確かめる。
大きな損傷はなさそうだ。
見慣れないパーツが付いているのは、俺が眠っている間に開発された改良版だからだろう。
その証拠に機体側面の型番が俺の知るバージョンより新しかった。
強化外骨格。
それは最新テクノロジーの一つだ。
全身各所に搭載された人工筋肉により、装着するだけで重機にも匹敵する力を発揮できる。
防御性能も高く、銃弾はおろか戦車砲すら受け切るバージョンもあった。
このスーツはそこまでのスペックではないようだが、戦闘用としてカスタマイズされたモデルのようだ。
パワードスーツは俺も警官時代に何度か世話になったものだ。
対テロや強盗との戦闘等、危険な任務では必須級と言える装備であった。
そんなパワードスーツが、ゾンビから狙われる俺の目の前にある。
使わない手はないだろう。
「これがあればなんとかなりそうだ……!」
俺は大急ぎで装着の準備を進める。
パワードスーツは一人でも素早く装着できる構造になっている。
それでもゾンビに追い詰められた状況では一秒すら惜しい。
焦りながらも装着し、視界に映し出される映像からスーツの情報を確認していく。
「エネルギー残量……まだ余裕があるな。故障も特に無し……最高だ」
扉が破られてゾンビが部屋に入ってきた。
よろめきながら俺に近付いてくる。
俺は速まる自分の鼓動を聞きながら啖呵を切った。
「かかってこいよ。ぶっ飛ばしてやる」
ゾンビが噛み付いてきた。
俺は努めて冷静に左腕をかざし、遮るようにガードする。
ゾンビの黄ばんだ歯が前腕の装甲を噛み砕こうとして、逆に折れた。
無理な力がかかったせいか、ゾンビの顎が出血して歪んでいる。
ゾンビは己のダメージを無視して噛み続けている。
痛みは感じないらしい。
ここまでの生態はだいたいホラー映画のイメージ通りだった。
とにかく検証は完了した。
俺は右の拳を振りかぶって力を込める。
「喰らいやがれ」
俺はゾンビを勢いよく殴り飛ばす。
ゾンビは壁に激突して動かなくなる。
顔面が破裂し、手足を痙攣させていた。
再生能力のような厄介な特性はないらしい。
ちゃんと急所を破壊すれば死ぬようだ。
拳を下ろした俺はスーツの性能に満足する。
(この感じなら安全に探索できそうだ)
なぜか施設内にゾンビがいるのだ。
俺が眠る間に何があったのか調べなければならない。