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魔法少女シークレットサービス  作者: 龍殺トライピオ
6/6

05.この依頼、何かおかしい





「はぁ」


宙月と接触した帰り道、俺は帰りにスーパーで買い出した食材の入ったビニール袋を両手にため息をついた


依頼を受けたはいいが、これからどうするか


原因も敵も分からない状態で人一人を守るとか普通に馬鹿げてる


どうしろってんだよマジで


心の中で悪態をつきながらビニール袋を持ち直した


そういえば、家の方はどうなってるんだろうか?


帰ったとたん敵と鉢合わせとかは勘弁してほしいなあ


という俺の願いが通じたのかは分からないが、家は今朝出た時のままだった


玄関や窓に挟んでおいた紙切れも、廊下に張っておいた紐もそもまま


俺の心配が杞憂だったのか、もしくは俺よりも数段上の手練れなのか


まあ、例えそうだったとしてもそんな奴が相手じゃどちらにせよ俺に出来ることなんて限られてる


考えるだけ無駄だな


取り敢えず今日のところは問題無しということにして、昨日の荷解きの続きをすることにする



大体の荷解きを終え晩飯を食う頃にはすっかり日も暮れ、時刻も午後10時を回っていた


思いの外荷解きに時間がかかった


まあ、荷物とは言ってもその大半は組み立て式の本棚が幾つかとそこに収まる大量の漫画&小説だったが


お陰で殺風景だった部屋が一気に馴染み深い自室へと姿を変えた


はぁ、落ち着く


と、そんなこと言ってる場合じゃねえや


依頼人と会ったことを報告しなきゃなんねえんだった


「もしもし、親父か?」


登録済みの番号を選択すると何度目かの呼び出し音の後、電話が繋がった


『タローか 首尾はどうだ?』


親父にしては珍しく無駄話がない


それだけ親父も今回の依頼を警戒しているってことか


「今日依頼人に会ってきた」


俺が言うと親父が無言で先を促す


「依頼人に関しては俺は現時点では何とも言えねえ まともでは無さそうだったけど、護衛対象の身は案じてるみたいだった まだ敵とは断定できない」

『そうか』

「ただ、あの子がヤバいヤマに関わってるのは間違いないと思う プロの匂いはしなかったけど、堅気でも無さそうだった」


あの男は”自分の権限”では開示できない情報だと言っていた


つまり、あの男は少なくとも何らかの組織に属していて、その組織の意向で俺に護衛の依頼を出しているのだろう


それなのに、わざわざ証拠になるような書類で仕事を持ってきたり、打ち合わせに知り合いでもない個人店を指定してきたり、動きがどうも素人臭い


でも、だからといって半グレやチンピラって感じでもないんだよな


一体何者なんだ?


「書類はターゲットのプロフィールとか変なところがやけに細かかったし、それに金払いも良すぎる 200万ポンと出してきたよ」

『やっぱりか・・・ なあタロー、お前今回の仕事、どれくらいでオファー来たと思う?』

「どういうことだ?」


俺が聞き返すと数秒の沈黙の後、親父が言った


『1億だ』

「憶っ!?」


想定外の金額に思わず声のトーンが上がる


「マジかよ、嘘だろ?」

『それも前金でな お前が任務を完遂すれば成功報酬としてもう2億入る』


つまり3億の仕事ってことか


いくら後ろ暗い業界だと言ってもうちみたいな小規模事務所に一件で億単位の報酬が舞い込む仕事なんてそうそうない


親父がこの依頼を受けることにしたのはその辺りの事情もあったってことか


「でも、いくらなんでもおかしくないか? うちみたいなとこに初見客がそんなデカい仕事を依頼するなんて」


俺が聞くと親父が少し躊躇いがちに答えた


『今回の依頼人な・・・ 俺は政府の人間なんじゃないかと思ってる』


親父の言葉に、最後の確認をした時の男の顔が脳裏を過った


あの時俺は、本来のボディーガード任務に求められる専守防衛ではなく、あえて先に仕掛けて敵がターゲットに近づく前に始末すると断ったのだ


それを聞いた時のアイツの表情


俺は今日あの時まで、勘違いで畑違いの殺し屋に護衛の依頼をしたのだと思っていた


でもそうじゃなかった


あの顔は、俺が自分の希望通りの働きをすることに満足した表情だった


アイツは護衛の依頼をしておきながら、鼻から俺に殺しをさせるつもりだったんだ


まともな人間の感性じゃない


だが、もし親父の推測が正しければアイツは俺なんかに依頼しなくても何人だって殺せる武力を行使できるはずだ


それをなんでわざわざ俺なんかに・・・


ダメだ分かんね


俺は所詮現場担当だっての もともと頭使う戦いは苦手なんだよ


『とにかく、相手の素性が知れない以上油断はするなよ どんな奴と戦うことになるかも今のところはわからねえんだ 向こうが情報を開示してきてないのを見るに、最悪国の部隊とかち合う可能性だってある』

「わかったよ、無茶はしない」


俺みたいなただのバイト殺人者が一線級の戦闘集団とやり合って勝てる訳ない


それに、国を敵に回せば親父やナナミさんもただでは済まない


親父の言う通り、俺は一人だけで生きてるわけじゃねえんだ


『まあ、お前にとっても何年ぶりの学校だろ 仕事だけじゃなく、ちゃんと楽しんで来いよ』


親父がいつもの調子に戻った


「まあな 彼女の一人でも作って戻るから楽しみにしとけよ」

『・・・お前、相手は女子中学生だぞ? その辺りちゃんと分ってるんだろうな?』

「・・・・・・」

『まあお前の趣味にとやかく言う筋合いはねえが、避妊だけはちゃんとしろよ?』

「うるせえな!俺はそんなに節操なしじゃねえわ ってかそもそも気が早すぎだろ!」


その後、ゴムがどうのピルがどうのと聞いてもいない避妊の全てを語り始めた親父を無視して電話を切った


ったく、まだ女の知り合いすらいないってのに


ああいうの、地味に精神的ダメージ来るからやめてほしいんだよな


伊達に二十歳直前になって童貞やってないっての


それにしても、学校、か


これもまた7年ぶりだよな


12で殺しの世界に入って、中学もまともに行ってないからな


やべえ、勉強ついてけるかな


何だっけ?因数分解とか微積分とか


名前は知ってるけどチンプンカンプンだよな


殺しに数学の公式とか使わないし


まあでも、あくまで仕事で来てるんだし・・・


ん?でも考えてみれば葵ちゃんの行動を把握するためにも友達と仲良くなっておくのは悪いことじゃないよな


ということは楽しんでもいいのか?学生生活


フフ、ようやく俺の人生にも彼女を作るチャンスが巡ってきたようだな


まあ? 俺こう見えても19ですし


周りの男子中学生なんて俺から見りゃただのガキですからね


大人の余裕でね、こう、全身から発せられるオーラがそこらのガキどもとはもう違う訳ですよ


それがね、分かる娘にはね 分かっちゃうわけですね


だからね、俺的にはね 女子中学生なんてウェルカムですから


直ぐにドストライクでドスケベライクなJC彼女が出来たって何もおかしくない訳ですねはい


・・・・・・はぁ、何言ってんだ俺


もう寝よ



横になり、懐から写真を取り出して眺める


もう傍から見たら俺完全に盗撮魔の犯罪者だよなこの状況


「葵ちゃん、一体君は何をやっちまったんだい?」


当然のことながら写真の中の彼女が答えてくれるはずもなく、かと言って記憶の中の幼い彼女も沈黙を守り、俺の問いかけは虚しく夜の闇に消えていくのだった




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