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魔法少女シークレットサービス  作者: 龍殺トライピオ
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03.引っ越し





親父から正式に任務の指示を受けてから約24時間後


俺は昨日まで住んでいた家を引き払い、新幹線に乗って新たな任務地へと向かっていた


荷物はもう新居に運んである


後は俺が現地に行くだけだ


座席に体を埋めながら書類をパラパラと見直して時間を潰した



御牧原市


東京から新幹線とローカル線を乗り継いで約二時間、人口3万人と少しの小規模地方都市


まあ、要は田舎町だ


田舎だし本当は車があった方が色々と便利なんだが、仮にもこれから中学生になろうという人間が運転しているところを見られたらまずいだろうと思い素直に鉄路を選択した


依頼の護衛対象が住んでいる町で、俺の故郷でもある


今回の任務は個人警護、早い話がボディーガードだった


これが実は結構珍しかったりする


俺たち殺し屋の仕事は、言うまでもないが人を殺すことだ


対してボディーガードとは人を守ること


この二つには繋がりがあるように見えて、その実月とスッポンほどの差がある


何度も言うが、殺し屋の仕事はあくまでも殺人代行、もっと詳しく言えば依頼人の代わりに秘密裏に標的を始末しそしてそれを見破られないことだ


つまるところ、どんな手段であってもターゲットをしっかり、そしてこっそりと殺せればそれでいい訳で、何もターゲットと正面から殴り合って勝つ必要は無いのだ


むしろ、戦いになればその分足が付くリスクが増すし、万が一負けて死んだりしたら元も子もない


生活に困ってるわけでもないのに、たかが金に命かけるのは馬鹿らしいからな


そういう訳で、基本的に戦って勝つ力が求められる警護任務は警備会社やPMC(民間軍事会社)、対象が要人だったりすると軍や公安組織の仕事と相場が決まっているのだが・・・


「それをわざわざうちみたいなところに依頼、ねえ?」


嫌な予感しかせんな 俺は一体何をやらされるのやら


まあ、仕事で受けた以上はやるが



「それに警護対象がこの子じゃあな・・・」


写真を眺める


中学の入学時に撮ったものだろうか 紺色のブレザーに身を包み、真面目な表情でカメラを見つめている


写真を見た時は大人びたように見えたが、一目であの子だと分かったようにまだ顔立ちには幼さが残っている


というか普通に幼い、可愛い


まあ、中学生だからそんなもんか



7年ぶりの再会だけど、俺だとは分からないだろうな


あの子と最後に会ったのは第二次成長期直前の12歳の時


それから俺も成長した まあ、背は思ったよりも伸びなかったが


それに仕事の関係で一回整形もしている


外見で昔の俺に辿り着くことはまずないだろう


仕事のことを考えると好都合な反面、少々寂しくもある


それにしても、こんな可愛い子が一体なんだって命を狙われるのか


まあどんな理由にせよ、そいつらにはこの子を付け狙いやがったツケをきっちり払わせてやらねえとな



そう言えばと思い出し、書類と一緒になって茶封筒に入っていた身分証一式を取り出す


中学生という設定上運転免許証はないが、パスポートとこれから通う市立御牧原中学校の生徒手帳が入っていた 偽造だが


黒い活字で、『築島孝太郎』と印刷されている もちろん、こちらも偽名だ


というか、この業界に入ってから本名を名乗ったことなんて数えるほどしかない


築島、なるほど 俺は親父の実子っていう設定になってるのか


それにしてもこうたろうって・・・


「親父め、面白がってるな」


まあ、もう学校への編入手続きも済んでいるんだろうし、今更になって変更も出来ない


俺が何を言おうが、これからは築島孝太郎として生活するしかないってことだ


新幹線から1時間に1、2本しかない地方鉄道に乗り換えて30分弱


御牧原市に到着した


無駄に新しくなっていた小さな駅舎を出ると目の前には数年前と同じ、駅ビルなんてものは存在しない小さすぎるロータリーと、基本的に建物の高さは2階が基本の寂れた町があった


「こうも変わらないもんなんだな」


まあ、流石に5年以上も離れてれば細かいところで変わっているところはあるんだろうが、後でその辺りの確認もしておくべきか


などと頭の片隅で考えつつ、歩いて新居に向かった



疲れた


声を発するのも億劫で、俺はそのまま押し入れの中に設置したベット代わりのアウトドアコットの上に転がる


今日から俺の住居兼セーフハウスになるのは、駅から歩いて20分ほどの場所にあるアパートの一室だった


家についてすぐにあちこちひっくり返して盗聴器や隠しカメラの類がないことを確認して、もしもの時のための逃走ルートを確保したり、ホームディフェンス用の武器を配置し終えるころには空は橙色に染まりカラスが鳴き始めていた


もう他の荷解きは明日でいいや


明日は依頼人と今回の仕事について話をする予定だったか


書類を再度めくると、最後のページの下に親父の筆跡で時間と集合場所が走り書きしてあった


普通殺しの仕事の場合、俺みたいな現場担当は依頼人と会うことはない


俺は上の指示通りに任務をこなすだけで、それ以上余計なリスクを抱える必要なないからな


まあ、今回は護衛任務ってことで例外ではあるんだが、それにしても俺自身今回の仕事については色々聞きたいことがある


出発前に親父に言われたことを思い出した


「今回の依頼はどうも臭う、気を付けろよ その子、なんか面倒な事件(ヤマ)に巻き込まれてるのかもしれねえ」


親父も依頼人に会って不審な空気を感じ取ったってことだ


そして、この世界で長く生き抜いてきただけあって親父の勘は当たる


もし葵ちゃんが何か重大な事件に関わっていて、強大な敵に命を狙われているのだとしたら その時は・・・・・・


なんにせよ、明日になって依頼人に会ってみないと何とも言えない


明日のことは明日考えよう



ふと、目が覚めた


携帯を開くと液晶には午前0時が表示されている


「便所・・・」


用を足し寝床に戻るが、どうにも寝付けない


コンビニで飲み物でも買うかと思い、財布を持って家を出た


外はもう4月になるとは言えどまだ肌寒く、部屋着のまま出てきたことを少しだけ後悔した


0時と言えば都会ではまだまだ街が起きていたが、ここみたいな片田舎になると明りも少なくしんと静まり返っている


そう言えば田舎ってこんな感じだったかと何となく思い出しつつも、数年間で他所の土地に慣れ切った今の俺にはとても新鮮に感じられた


「お…!」


帰り道、買った烏龍茶をチビチビやりながら歩いていると俺の目に見知った顔が飛び込んできた


葵ちゃん・・・


そこには写真よりも少し成長したように見える少女がいた


道端でもう一人の誰か、少女と女性の中間くらいに見える胸のデカい娘と何か話している


並の変態ではこの暗がりではいくら街灯の明かりがあるとはいえ一瞬で顔を確認することは難しいだろうが、俺くらいになると女の子限定で24時間鮮明に顔面を判別することが出来る


ましてや相手は思い出のあの子だ 見間違えるはずねえ!


え、何?普通にキモイ? うるせえ黙れ


まあ、そんな話は置いておいて


流石に7年ぶりに再開すればもっとこうクるものがあるんだと思ってたが、そうでもないんだな


予想外の場所でこうもあっさり見つけてしまったからだろうか?


それにしても女の子が二人でこんな夜中にどうして外を出歩いているのか


全く、世間には悪い大人がいっぱいいるんだからもっと用心しなきゃダメでしょうが


もう一人の方もかなりの上玉だし・・・


・・・まさか、そういうバイトをしてるのか?


お、お兄さんは認めんぞそんなこと!


まあ、半分冗談だったけど、そう言う事なら葵ちゃんが命を狙われている事にも納得がいく


客か店の関係者か、その辺の連中とトラブルにあった、と


まあそんなことで殺し屋が出てくるところまで話がややこしくなるなんてめったに無いが、絶対にないとも言い切れない話だ


流石にこの距離じゃ話してる内容までは聞こえないか 何とか近づけないかな


暗がりに身を隠しながら二人に近づこうと苦心してみるが、そうこう言っているうちに二人は分かれて別々の方向に歩き始めてしまった


俺が住んでいたころから住所が変わって無ければあの子が住んでるのはこの近くだったな


まあそれを考えて部屋を借りたんだから当たり前ではあるが


取り敢えず葵ちゃんの方を尾行することにしたものの、それ以上これといった収穫もなく俺は帰路に着いたのだった




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