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魔法少女シークレットサービス  作者: 龍殺トライピオ
3/6

02.引きこもり





「・・・・・・今なんて?」

「言った通りだ お前は今年から中学に行け」


ちょっと待ってほしい


何だって? 中学?


まあ、確かにまともに行ってなかったけど


何で今更・・・


「なんだ?裏社会だけじゃなく表の世界も知って来い的なアレか?」

「まあ、そういう意図もあるな」


じゃあなんで中学なんだよ?


普通こういう時の定番は高校だろ?


まあ、流石になんか事情があるんだろうが


「・・・仕事か?」

「話が早くて助かるな」


俺の問いに仏頂面の親父が答える


「でも、まだ昨日の潜伏期間が」

「新学期に向けてすぐに引っ越すんだから問題ないだろ 実質高飛びみたいなもんだ」


そう言うと、親父はちょっと厚めの紙封筒を投げてよこした


「ここしばらくでお前が稼いだ分だ 向こうでの生活の足しにしろ」

「いや、まだやるとは言ってないんだけど・・・」


俺がそう言うと親父が俺の顔をじっと見て話し始めた


「なあ、タロー 俺がお前を拾ってからもう7年だ」

「ああ、もうそんなになるのか」

「お前には俺の技術を叩きこんで、取り敢えず現場を任せられるくらいにはなった」


親父は真面目な表情で話を続ける


「7年も一緒にいると俺でも情が湧いてくる しっかりした学校に行かせてやりたかったとか、出来るならまともな人生を歩んで幸せになれるようにしてやりたいってな」

「ダウト!それは嘘だ 今から仕事やらせようとしてるアンタが言う事じゃねえよそれ」


俺がそう言うと親父は気まずそうに眼を逸らした


やっぱり、どうも今日の親父の雰囲気はおかしいと思ったんだよ


「いや、だって、言ってみたかったんだもん こういうセリフ」

「ああ、はいはい 分かったから、それで本音は何なんだよ?」


口尖らせてんじゃねえよ気持ちわりい


ゴツイ初見完全ヤクザのおっさんがやっていい顔じゃねえよそれ


「まあ、アレだ・・・俺だって人間だからな、流石に自分の倅がもうすぐ成人って年になってんのに、部屋に籠りきりでどんどん陰の者になってくのを平然と見てられるほど人間出来ちゃいねえんだよ」


って、息子どうこうの下りはマジだったのか


まあ、それにしても・・・


「いや、なんだよそれ!?息子が引きこもりで困ってますって、悩み普通かよ!?」

「悪いか!?俺だってなあ、子育て初めてなんだよ!」

「あんたの口からそんな普通の父親みたいなセリフ聞きたくなかったよ!」


「まあまあ、二人とも落ち着いて ほらあなた、お茶持ってきましたよ」


ヒートアップしていきり立つ俺と親父だったが、そんな中に女神が降臨する


ナナミさんがお茶と菓子をお盆にのせて持ってきてくれた


取り敢えずそれを飲んで一息つく


「それで、なんだよ?引きこもりやめて本格的に仕事しろっての?」

「そうは言ってねえよ 俺だって殺しが生きがいの殺人マシーンを育てたかったわけじゃねえ お前の、殺しを仕事だと割り切ってるスタンスを俺は結構評価してるんだぜ?」

「だったら」

「だが・・・それとこれとは話が別だ」


そこで一度言葉を区切り、俺の眼をじっと見る


「お前が仕事以外で人と関わろうとしないで、家に引きこもってる理由・・・」

「・・・・・・」


「人が、怖いんだろ」


やっぱ、バレてたか


俺はあの夢を見るようになってから、徹底的に対人関係を遮断した


会話をするのは、関わるのは最低限仕事に必要な人脈だけ


そうすることで自分を守ろうとした


いつか俺の中の枷が外れてみんな殺してしまうんじゃないかと思った・・・あの時みたいに


それが怖かった


「でもなあ、タロー 人間は一人じゃ生きてけねえんだ

例えお前が最強の殺し屋になったとしよう 今よりもっと強くなって、いずれは俺も超えたとする」


まあ当分無理だけどな、と付け足して親父は話を続ける


「それでもな、人は飯が食えなきゃ死ぬんだよ 水道や電気が止まっても、物流がストップしても終わりだ それに・・・」


親父がナナミさんを抱き寄せる


「俺たちみたいな人種は守るもんがねえと遅かれ早かれダメになる 自己嫌悪に囚われて破滅するか、倫理観も何もかも失ったバケモンになり果てるか、な」


ちっ、見せつけてんじゃねえよバカップルが


「じゃあ、どうしろってんだよ 彼女でも作れってか?」

「まあ、そう焦るな」


そう言うと親父は俺に紙の束を渡した


「?」


見ると、今度の仕事についての詳細が記載されている


業務内容、任務地、その他もろもろ・・・・・・


「・・・御牧原市立、中学」


そこにあったのは俺の生まれ育った町の名前だった


そこで、俺の中に一つの気付きが生まれた


今日の夢、このタイミング、まさか・・・


紙をめくっていくと、数枚目の警護対象のページにその答えが載っていた


「・・・・・・葵ちゃん」


「その子を守れ それがお前の次の仕事だ」


そこにあったのは、あの時、俺の前に立ちはだかった女の子の名前だった


隣には、ずいぶんと大人っぽくなったすまし顔の美少女の写真が添付されている



・・・過去を清算しろってことかよ



「・・・分かった」


親父を見返して宣言する



「俺はもうあの時のガキとは違う この仕事、プロとして請け負った」




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