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第2話 新生活と人狼幼女とライラの朝ごはん

 当初3話完結予定でしたが、1話1話を短くまとめて投稿する予定に切り替えました。10話はいきたくない。

 朝、小鳥が賑やかに鳴くのは早朝の冷えた空気が鳥の唄声を良く通らせるから、らしい。

 錆びたトタンの色様々な屋根が繋がったように並ぶ発展途上な街並みの一角に、そんな鳥たちの会話する声を聴いてもずぶとく眠り続ける少女 ライラック・プラーミヤは居た。


 彼女の起きる時間が迫り、彼女の部屋の窓辺に置かれた機械が太陽光を検出し、いま起爆する。

 清々しい朝に響き渡る爆発と鳥達が羽ばたく音。あらかじめ開けていた窓からは黒い煙が登り、ライラック・プラーミヤはその類稀な本能から爆発音を聞き分けると頭を起こした。


「なんの爆発音……って目覚まし時計か。」


 ようやく目を覚ましたライラが階段を駆け下りると、なにやら良い香りがしてくる。

 匂いに釣られたライラの訪れた、リビングルームと言うにはちょっとボロ屋な1階の机の上には、厚切りのベーコンがタワーのように何枚も重ねられた大皿の迫力のある一品を始めとした朝ご飯が用意されていた。

 ライラはまず、厨房に立つ背中のまっすぐに伸びた後ろ姿の綺麗な女性に話し掛ける。


「サリアさんおはよー」


「おはようございます、ライラック様。

 ささ、まずはお顔を洗いになってください。頭髪の乱れはわたくしが直させて頂きますので。」


「うぅん、ご飯のあとでいいよぅ……」


 座席に着こうとした背中をサリアに押されたライラが洗顔を終えると、少女がぼーっとする一瞬に寝癖は直っていた。


「突然の来客があっては困りますので手早く済ませましたが、後でしっかりと整えさせて頂きます。

 それでは、ライラック様の本日のご予定ですが。午前から午後にかけては電気工事業、夕刻より本作業、夜は銀行の視察となっております。」


「うぅぅ……学校よりハードじゃなぁい…?」


「がっこーよりはーど?」


 今度は朝ご飯の席に座らされた少女のまだ眠気の覚めない会話に入り込んだのはライラの真正面の席に座る、茶髪の中に狼の耳を紛らせた幼女だった。


 ライラに言わせれば『自称神さまの変てこ生命体』より更に幼い姿をしたこの子どもは、つい1週間前に彼女がこの家の前に棄てられているのを拾っただけの関係だった。

 けれど子どもの好奇心旺盛さは純粋無垢なもので、ライラの一語一句を不思議に思っては意味も解らないまま同じ言葉を繰り返していた。


「スミレ……学校、知らないの?」


 スミレと言うのが、ライラが人狼の少女に名付けた名前だった。泥だらけで打ち捨てられていた彼女の瞳の色がガラス玉みたいに綺麗なガラス玉な紫色をしていたからなんて安直な仮の名付け方だったが、少女本人がいたく気に入ってしまったものだから。

 特にライラが少女の名前を呼ぶと犬のように近付いてきては、何かある度にスミレはライラに頭を撫でるよう甘えてくるのだ。


「ライラック様も、イルターナの都市構造はご覧になったでしょう。開発の進んだ都市部のビル街と、その中心部を郊外を覆うこの街並み。

 郊外と都市部での生活水準は天と地ほどの差が御座います。」


「ふーん……」


 未だ寝ぼけた頭で生返事を返すライラが朝ご飯に用意されていた最後の分厚い肉に伸ばした先のフォークは、空を突く。ライラはその目を擦るが、目の前にあるのはやっぱり、真っ白な大皿だけ。

 ライラはその視線をおそるおそる目の前にいる少女に向けると、そのクソガキは頬いっぱいに何かが詰めたまま満面の笑みを浮かべた。


「むふー♡」


「そんなッ、さっきまであんなにあったのに!!?」


「あらあら…」


「…ゴクッ…はい、お姉ちゃんにあげる。」


「こらースミレー!野菜も食べなさいーー!あと私のお肉返してぇーーー!!!」


 そんな様子で、賑やかな朝の時間はすぐに過ぎ去って行った。

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