大学生の頃に経験したホラー体験談
それは、2011年の夏。某岐阜の大学に通う大学生がいた。
ある日、その大学生は友人と肝試しに心霊スポットを回ることになった。
不法侵入になるにも何のその、若いエネルギーに身を任せ、数々の岐阜の心霊スポットを巡っていた。
そのうちの1つに13号トンネルという心霊スポットがある。
そこは、口裂け女の発祥の地ともいわれ、トンネル開通後事故死、飛び込み自殺が相次いだ、めちゃくちゃやばい心霊スポットである。
大学生3人組は、その心霊スポットがどれだけやばいかをその時知らなかった。
帰るころには、現実を知ることになる……。
13号トンネルへ行くためには山を進む必要がある。
心霊スポット巡りをしていた日は、夜ながら快晴で絶好の心霊スポット巡りだった。
しかし、山の天気は変わりやすいのか、13号トンネルへ向かう途中、山の中で突然の雨が降ってきた。
「お、おい……今日はもう帰ろうぜ……?」
「馬鹿野郎お前、ここまで来て帰れるかよ。13号トンネルの奥へ絶対に行くぞ」
山を登る途中、ずぶ濡れになりながら川を渡った。霊は水場に集まると聞く。
このような状態で心霊スポットを目指すなんて、不吉な予感を感じずには居られなかった。
足元を泥で汚しながら、会話も少なく学生3人は山の奥を進む。
その足取りは重いが、一歩ずつ13号トンネルへと近づけていく。
しばらく無言で足を進めると、無事にたどり着いた。
「めっちゃ雰囲気でてるな……」
「絶対やばいよ……入るのやめよ?」
何もかも飲み込みそうなほどに真っ暗。
懐中電灯で先を照らしても、すぐに暗くなって奥が見えない。
懐中電灯では、光がまるで足りてない。
そんな中に入ってしまえば、本当に生きて帰れるかわからない。
「何言ってるんだ、ここから帰れるわけないだろ?入るぞ」
そのメンバの中で1番の陽キャである1人が、先人切ってトンネルへ入っていく。
残りのメンバは、不吉な予感が払しょくされないまま、後ろに足を進めていく!
「マジで暗いな」
「おい、足元に気をつけろよ」
「うわぁ!!あれはなんだ!!」
「えっ!何!?なんかあったの!?」
「はは!冗談だよ」
「もうー!やめてよ!」
軽い冗談を交えつつ、ゆっくりと前へと進んでいく。
トンネルはそんなに長くない。
歩けば15分もあれば最奥まで行ける距離だが、いくら歩いてもたどり着かない。
懐中電灯は足元しか照らさない。前も後ろも、完全悩みの中、団体は前へと進んでいった。
「……」
しばらくすると、誰も言葉を発さなくなった。
足音も呼吸音も聞こえないほどの、耳鳴りがするくらいの無音。
ただまっすぐ進むのみの時間が経過する。
自分が何を考えているかもわからない時、その時がおきた。
(熱いよー……熱いよー……)
「うわぁぁああぁあぁあああああっっっっ!!!!!!」
耳元のすぐ隣、今まで経験したことのないほどの距離から、少女のような声が聞こえた。
トンネルの中なのに、まったく響くことのない、耳元から、脳に直接響くような声。
全身の鳥肌が立ち、心の底から全力で大声を出した。
「おい!!輝美びっくりさせんなよ!!」
「おいおい誰だよ!今ふざけた声出したの!!俺は悪くないぞ!みんなも聞こえただろ?あの熱いよーって声が!!」
「……?何言ってんだよ。今めちゃくちゃ静かだっただろ?誰も何もしゃべってねえよ。輝美が急に叫ぶまでは」
おいおい嘘だろ……?あんなにはっきり聞こえたのに、聞こえたの俺だけなんてことあるのか?
そう考えると、急に身体が重くなるのを感じた。脳が凍る。ここにいてはいけない。
早く帰らないと、と気持ちが焦る。声が聞こえてからすぐに最奥へとたどり着いた。
「なんだよ、もう行き止まりか。暗いだけで、たいしたことなかったな」
陽キャのつぶやきに、全力で身体がアラートを出す。いや、ここはマジでやばい!急いで帰った方がいい!
「よし、もういいだろ。急いで帰ろうぜ」
「おいなんだよ輝美。そんなに慌てるなよ……たく。おい、お前らもいくぞ」
周りの声を無視して急いで帰る。一心不乱に。
懐中電灯で足元を光らせながら、来るときよりもずっと早く、外に向かって全力で歩く。
他のメンバを置き去りに……少しでも早くここから離れたい。
「やっと外に出た!!おい、早く帰ろうぜ!!」
後ろに声をかけ、車に向かって歩く。
来るときはあんなにも時間がかかったのに、帰りはあっという間だった。
急いで車に乗るために扉を開ける。
「……!?か、肩が上がらない!!おい!!!!だれかドア開けてくれ!!肩が上がらねえんだ!!」
「おいおい冗談はやめろよ、早く乗れよ」
「いやマジだって!!ほんと頼むから開けてくれよー!!」
右肩が動かない。痺れるというよりは感覚がないようで、右腕がないようだった。
周りはふざけてると思ったのか協力してくれない。何とか左手でドアをあけて、車に乗り込む。
「マジで怖かったなー」
「マジ来るのやめとけばよかった……。」
「おいおいテンション上げろよー、これも夏の思い出だろ?」
帰り道、仲間の奴らは談笑していたが、自分は全くそんな気分にならなかった。
トンネルの中で聞いた声を思い出して、震えながら車に揺られる。
その日は、それで無事に帰路につくことができた。しかし、そこから2日間右腕は動かなかった。適当に塩を撒いたら動くようになった。あの時塩を撒かなかったら、今ここに輝美はいなかったかもしれない……。