EPISODE;3 「礼」
「住み込み?」
「そう♪」
「お前ん家でか?」
「うん」
こりゃまた唐突にきたな〜
「却下」
「え〜〜〜〜〜!!」
え〜〜はこっちの台詞だ!なんであったばかりの奴の家で住み込みでバイトしなきゃならんのだ!
「なんで?どうして?」
沙織はなぜ断られたのかわからず、納得できないでいた。
「確かにバイトは探しているが、住み込みしてまでバイトをしようなんて思ってないんだよ。やっと引越してきて片付けが終わったっていうのに」
「じゃあじゃあ!住むところがなければ来てくれた?」
沙織は机を乗り出しながら言った。まぁ確かに住むところもなかったら最高だけど、家があるのに住み込みはな〜
「まぁもしなかったらな、喜んでいってたかもな」
冗談で軽く受け流すつもりだったが、これが後にものすごい災いを呼んでしまう・・・
「そっか〜良かった〜」
沙織は一人安堵の息をしていた。
「何が?」
一人何かを安堵する沙織を見て、すごい嫌な予感がする。
「すぐに終わるから少し待っててね!」
沙織はそれだけ言うと、部屋をすごいスピードで出て行った。
「・・・台風みたいな奴だったな」
まぁけど、これで良かったな、いきなり住み込みでバイトなんて言われた時はどうしようかと思ったけど。
恭介はそう思いながら玄関の鍵を閉める。
それから5分後
恭介はバイト探しの雑誌を眺めていた。
ガンッ!
「うおっ!」
突然ドアに何かがぶつかったと音がし、びっくりしてしまった。
ドンドン!
「お〜い、開けてよ恭介〜!」
またあいつか、ってか恭介って呼び捨てかい。
ドンドンドン!
「ねぇ〜〜〜寝てるの〜〜?」
寝てないけど、居留守しとくか、まためんどうなことになりそうだし。恭介はそう決めると音をたてないように気をつける。
「ねぇ〜〜〜〜〜ってば〜〜〜〜」
ドンドンドンドン!!
無視。
「ねぇ〜〜〜〜!」
ドンドンドンドン・・・
無視・・・音がやんだ・・・やっといったか。
「はぁ〜〜〜〜」
恭介は大きく息を吐くと再び雑誌を広げ・
バキン!!!ヒュン!
ようとしたら雑誌に丸い穴が開いた。
扉を見ると、鍵の部分がなくなっていて、目の前の机に弾がめり込んでってえええ!!
俺があまりのことに絶句していると、沙織が平然と部屋に入ってきて、さっきと同じところに座った。
「お、おま!なにしてんだよ!」
「なにって、部屋入っただけだよ、居るなら開けてくれればいいのに〜」
まぁ確かにそれもあるけどこんな開け方はないだろ!?
「ここ俺の部屋だぞ!?鍵どうするんだよ!」
もう部屋から出られないじゃん!
「それなら大丈夫だよ」
「何が!?」
「さっき此処の部屋買ったから」
は???
「待て、買ったって、この部屋をか?」
「うん」
「嘘だろ?」
「嘘じゃないよ〜、ほら」
そういいながら沙織が紙を渡してくる。それはこの部屋の番号とこいつの名前・・・
「マジかよ・・・」
どうやらこの部屋の所有者になったのは本当らしい。
「なんでこんなことを・・・」
引っ越してきて一週間、まさか命を助けた女の子に家を取られるなんて思っても見なかった。
「なんでって、もちろんお礼を受け取ってもらうためだよ♪」
お礼っていうのはさっき言ってた住み込みバイトのことだよな、けどこれじゃあお礼っていうよりも強制的だよな、
「もし断ったら?」
「残念だけど家に住めなくなるね」
つまり俺の住処を全て奪うってことだよな。
「そんなことできるわ・・・」
わけないっていうはずだったがその言葉を呑み込んだ、実際に一度取られてる、それにもし神社に帰ってみんなになにかあったら。
沙織のほうを見ると、ずっと笑顔でこちらを見続けている。
俺に選択肢はない・・・か
「わかった、そのお礼を受け取ろう」