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星の勇者  作者: アシラント
98/157

レイジvsブレイブ②

「ガアアアアアアアアア!!!!」


レイジは相手を威圧する音を喉から発しながらブレイブに襲い掛かった。ブレイブはレイジの刀を盾で受けてカウンターの勇者の剣で反撃した。


『入る!』


ブレイブは剣が確実に当たることを予感した。しかしレイジは左手に勇者の刀を抜刀してブレイブの反撃を受け止めた。


「なにっ!?」


ブレイブは驚いた。今まで自身の全力の攻撃を受け止められた人物はひとりもいなかったからだ。しかしレイジはそのブレイブの攻撃を真正面から受け止めた。それがブレイブにとっては信じられない事だった。


『僕の攻撃を...全力の反撃を、左手の刀だけで受け止めた!?そんな人、今まで見たこと無いぞ!?僕の攻撃は最強の無敵じゃなかったのか!?』


ブレイブが驚いていると自身の腕にレイジのマグマのような熱さが伝わってくる。


「...っ!?あっつ!!?」


ブレイブは自身の左手に装備された盾からレイジの炎の熱が伝わってきたので、一瞬で後ろへと飛び退いて距離を置いた。レイジは理性を失った動物のように白目をむきながら歯を食いしばり、目の前の敵めがけて襲い掛かっていった。


「グゥアアアアアアアアアアア!!!」


狂犬のような理性のない姿でレイジはブレイブを追いかけまわした。しかしブレイブの足の速さには追いつけなかった。追いつけたとしてもレイジの攻撃は余裕をもってかわされていた。ブレイブはレイジのスピードが自身に追いつけないのを確認すると勝ち誇ったようにフッと笑った。


「その変化には驚いたけど!まだまだ僕のスピードには追いつけていないみたいだね!!」


ブレイブはケダモノのように追いかけまわすレイジに向かって煽るように言った。レイジはそれを言われて急に立ち止まった。


「ん!?立ち止まった?さすがに追いかけても無駄だって思ったのかな?」


ブレイブはレイジが止まったのを見て自分も足を止めた。そしてレイジはうつむいてジッとしたまま動かなくなった。ブレイブはその行動が逆に気味が悪く感じた。


「...レイジ?」


ブレイブは声をかけた。そしてレイジはその声に全く反応しなかった。だがブレイブは異変に気付いた。


「なんだろう?妙な胸騒ぎがするなー。」


ブレイブは肌に伝わるピリピリとした緊張感が、まるで津波の前兆の引き潮みたいに静かになった。そしてレイジの心臓の音だけがドクン、ドクンと鳴り響いていた。それに気づいた姉御はゾッとする悪寒を感じて上側のシールドを急いで起動した。


「まずい!!早くシールドを展開するんだよ!」


姉御は珍しく焦っていた。そしてシールドが起動して展開されたときに、レイジの鼓動はどんどんとその激しさを増していき、そしてレイジは顔を上げてブレイブの方を見た。その瞬間、ブレイブの全身が急速に巨大な危険信号を発した。そして急いで盾を構えてレイジの攻撃に備えた。


「グゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


レイジは心臓部のマグマが激しく光り出し、それは全身へと行き届き、まるでドラムのような爆音の心臓音とともに赤黒い衝撃波を発した。その衝撃波は瞬く間に闘技場を包み、覆っていたシールドですら震えるほどの威力だった。闘技場の床は真っ黒に焼けこげ、空間が歪んで見えるほどの熱量を発していた。


「ぐぐぅあああああ!!!?」


ブレイブは衝撃波の威力もさることながら、何よりその熱によってダメージを受けていた。皮膚は鉄板に焼かれているかのような熱さを受け、呼吸すらも喉を焼いてしまうほどの熱だった。


「かはっ!?...喉が、少し、焼けちゃった...」


ブレイブは吐血した。そしてレイジは真っ白な蒸気を発しながらその場にたたずんでいた。そして深く息を吐くとまるでロボットの排気口のように真っ白な蒸気を一気に吐き出した。ブレイブは盾で直撃はまぬがれたが、全身にやけどを負っており、フラフラしながらゆっくりと立ち上がった。


「...なるほどね。足で追いつけないなら全方位を焼けばいいって事か。バカになったのかと思ったら、全然頭いいじゃないか!」


ブレイブはレイジの行動を褒めながら闘いの姿勢に変わった。レイジは獣のように低く唸り声を上げながらブレイブの方を見た。


「...わかったよ。僕はもう逃げないよ!正々堂々と勝負しようじゃないか!レイジ!」


ブレイブはそう言って覚悟を決めて剣を構えた。レイジはそれに応えるように二本の刀を両手に持ち、ケダモノの咆哮をあげながらブレイブに近づいて行った。そして両者は刃を交えてお互いに一歩も引かない状況での殺し合いを繰り広げていた。そしてブレイブはレイジの刀を数回受けてから確信した。


「やっぱり!レイジの熱がさっきほどじゃなくなってる!さっきの衝撃波で相当熱を使ったってことだね!...なら!倒すなら今しかない!!!」


ブレイブはそう決意し、すべての魂の力を100%まで引き上げて全力で攻撃した。レイジもそれに呼応するかのように魂の力を100%まで引き上げた。両者の攻防戦は互いの武器が交わるたびにその衝撃波が闘技場を駆け巡り、激しい音と衝撃を発していた。


「レイジ!僕の!本気に!本当についてこられるなんて!すごい!!」


ブレイブは生まれて初めて家族以外で本気を出せる相手に巡り会えて最高に嬉しかった。レイジはその言葉が耳に届いてきていなかったが、ブレイブから嬉しそうなオーラを感じ取っていた。そしてレイジは怒りのままに刃を振り回していたが、ブレイブはそれを見切って頭のすれすれで避けながら一歩前へと踏み込んだ。


「レイジ!!!これで終わりだああああああああああああ!!!」


ブレイブは叫び声と同時に右手に持っていた勇者の剣を振りぬいた。レイジは迫りくる剣を両手の刀でガードしたが、ブレイブの攻撃の重さに耐えきれずに吹っ飛ばされて観客席用のシールドに背中から突っ込んだ。


「グアアアアア!!!」


レイジは痛みで声をあげながら吐血し、そして真っ黒に燃えていたバーニングレイジも消えて意識を失い場外へと落ちた。そこで実況者が言った。


「じょ、場外です!!!勝者は、騎士の天才『ブレイブ』!!!」


勝敗が決して観客席に張られていたシールドは消えてブレイブには観客の称賛の嵐が降り注いだ。ブレイブはその称賛を浴びて、嬉しそうにガッツポーズをとった。そしてそのまま場外に落ちたレイジの元へと駆け付けた。それは姉御たちも同じだった。


「レイジ!大丈夫かい?」


姉御はレイジの体を抱きかかえて言った。レイジは薄く目を開いた。


「...あれ?姉御?...俺は、何をしていたんだ?」


レイジは全身に痛みを感じながら聞いた。姉御はその質問に驚いた。


「レイジ...あんた、何も覚えていないのかい?」


「...ああ。確か、バーニングレイジを発動させてから、怒りに身を任せて...それで...その先は覚えていないな。俺は...負けたのか?」


レイジは自身が場外にいることを理解して言った。姉御はただ黙ってうなずいた。そしてブレイブが闘技場から降りてレイジのそばに来た。


「レイジ!最高の闘いだったぞ!!正直、どっちが勝つのか最後までわかんない、すっごく緊張した試合だったよ!こんな試合ができたのはこの闘技場に来て初めてだよ!ありがとう!」


ブレイブはお礼を言ってからレイジに手を差し伸べて握手をしようとした。レイジはよく覚えていなかったために実感はなかったが、断る理由も無いために握手をした。そして救護の係員が担架を運んで来た。


「レイジ選手!担架で運びます!少々痛みますが我慢してください!」


係員はレイジを運ぼうとしたがヤミナが止めた。


「あ、あのー。その前にう、ウチのヒールロボで応急処置だけでも...」


ヤミナはそう言って背負っているリュックから円盤に4本の足が生えた謎の機械が何体も出てきた。係りの人は驚いた。


「うわ!なんだこれ!」


係りの人をよそに、ヒールロボはレイジの周りに取り付き、傷薬を塗ったり部分麻酔を打ったりして応急処置をした後、レイジの背中にもぐりこみ、立ち上がってレイジを持ち上げた。係りの人はポカーンとした表情をしていた。そしてヤミナが言った。


「あ、あの...どこに運べば...?」


ヤミナに言われて係りの人はハッとして言った。


「...では、私について来てください!」


そう言って係りの人は救護室へと走って行った。レイジはヒールロボに乗せられて運ばれていった。そしてネネがヤミナに聞いた。


「...ヤミナ。あなたそんなロボットも開発していたの?」


ヤミナは猫背になってヘラヘラと笑いながら言った。


「う、うん。元々ウチはそういうのの専門。拠点に居座って守りを固めるのが仕事だった。今の機械も負傷した仲間を助けるためにウチが作ったもの。ウチ、自宅警備員に関しては誰にも負けないから...」


ヤミナは自信なさそうに言った。それを聞いたあんこはヤミナのすごさに驚いた。


「すごいねー!ヤミナちゃん!そんなことまで出来るんだ!ヤミナちゃんがいればドラゴンフライはすごい事になるかもね!」


あんこは素直に褒めた。ヤミナはフヒヒッと不気味に笑って照れていた。そして姉御はパンと手を叩いて注目を集めてから言った。


「とりあえず、レイジの様子を見に行こうか。まあ、死ぬほどのケガじゃないから大丈夫だとは思うけど、一応ね。」


そういわれてみんなは頷いてレイジの運ばれていった救護室に向かった。

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