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星の勇者  作者: アシラント
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覚悟を決める

固有名詞紹介


「シールド」


シールドとは、町や都市を覆うように張っているバリアーのこと。このシールドは薄水色の透明なもので、物理的な衝撃はもちろんのこと、空気や電気、電波すらも通さない完全な防壁として機能している。そのうえ幻獣がこれに触れると神のへそくりを触った時と同じやけどをする為、シールドさえ張っていれば幻獣に襲われる心配はない。


この電波を通さないという仕組みのせいで他国との連絡手段が人の足を使っての手紙のやり取りという旧時代的なものになってしまっている。そのため、現在では通信機の類は役に立たず、骨董品として扱われている。


もちろん、シールドの外でのやり取りならば通信機も使えるが、外の世界は幻獣や盗賊などの危険が沢山あるのでほとんどの人にとって必要がないため生産されることは無い。


ちなみに、マフィアタウンはシールドを張っていなかったが、あれは元々その地には幻獣が寄り付かなかったためである。その理由はビャッコがその地に住み着いており、ほかの幻獣はビャッコよりも弱く、争う危険を冒したくなかったためである。


そしてネネの故郷の町は元々シールドを張っていたが、セイリュウが村の外に姿が変わる毒をまいていたため、行商人や外で狩りをするものの服や体に付着し、それが村の中に充満して感染した。

そのせいで村人は自分たちの姿を外の人間に見られるわけにいかず、鉄板で村を覆った。

ヤミナはこの船を造ったのがゴゴの父だと知って驚き、開いた口がふさがらなかった。そしてゴゴはガッハッハと笑った。


「まあ!驚くのも無理はない!なにしろ俺のパパは天才ってやつだからな!」


ゴゴはニッコリと笑った。ヤミナはハッと意識を現実に戻してレイジの陰に隠れながら聞いた。


「あ、あの、それって、本当の話?」


「もちろん!」


ゴゴは自信満々に答えた。それを聞いたヤミナはゴゴという存在に興味を持った。


「ふ、ふひひ。じゃ、じゃあ、パパに会わせてもらう事って、で、できる?」


「あー。それは出来ないな。俺はパパのところから脱走したからな。戻ったら確実に殺されるな!」


ゴゴはガッハッハと笑いながら言った。ヤミナはまずい事を聞いたと思い、謝った。


「えと、その、ご、ごめん。ウチ、聞いちゃいけないこと聞いた?」


「気にするな!俺は全く気にしてない!」


ゴゴはそう言って白い歯を輝かせて笑った。そんなゴゴの行動を見てヤミナは少し安心した。


「よ、よかった。お、怒られて、殴られるのかと思った...」


ヤミナはそう言ってホッと胸をなでおろした。そしてレイジがヤミナに聞いた。


「それで、ヤミナはこれからどうするんだ?」


レイジに聞かれてヤミナはもじもじと指をいじりながら答えた。


「う、ウチはこの船のことをもっと知るために、この船に住むつもりだけど...」


「そうか。俺はいいけど、姉御は?どう思う?」


レイジは人を見る目がある姉御に聞いた。姉御は腕を組み、顎に手を当てて考えた。


「そうだねー。なにか裏がある感じはしないし、いいんじゃないかい?この船はどうせ飛ばないし、歩けるってゴゴから聞いたけど、歩く速度はとても遅いらしいしね。持ち逃げなんか出来ないだろう。まあ、いいんじゃないかい?」


姉御はヤミナを信頼するというよりこの船のことを知っているからこそ大丈夫だと判断した様子だった。ヤミナはペコペコとお辞儀をした。


「あ、ありがとう。う、ウチはそんなに度胸ないから、持ち逃げなんかしない。」


ヤミナはヘラヘラと笑いながら言った。それを聞いてレイジはうなずいた。


「確かにな。それができるのなら最初にこの船を見つけたときにもう奪い去ってるはずだしな。それに、俺はヤミナが機械好きってのは本心だと思う。そうじゃなきゃこれだけ詳しいことの説明が付かないからな。」


レイジにフォローされてヤミナはとてもうれしそうだった。


「ひ、ふひひ!れ、レイジ君。あ、ありがと。」


「ああ!」


レイジは一言そう言って笑った。そして姉御が言った。


「さて、ドラゴンフライに必要なパーツが変わってない事も確認したし、これからどうするかね。」


姉御がそう言うとレイジは言った。


「冒険しよう!まだ見たこと無い世界へと飛び出したい!」


レイジはウッキウキで答えた。姉御は首を振った。


「だめ!それはあんたがやりたい事だろう?そうじゃなくてやるべきこと、つまり、あたしたちの目標はなんだい?」


あんこは手を挙げて言った。


「はいはーい!魔王を倒すこと!」


「その通り!あたしらの目標は魔王を倒すことだ。じゃあ、なんで魔王を倒すのか、その理由が分かる人は、いるかい?」


姉御は聞いた。するとネネが手を挙げた。


「それは、平和な世の中を取り戻すため、じゃないかしら?」


「そうだね。その通りだ。あたしらは平和な世界を取り戻すために頑張っている。もちろん、レイジとネネが勇者だからってのもあるけどね。けど、勇者だからといって必ずしも魔王を倒さなきゃいけないわけじゃない。その責任を放棄して自由に生きてもいい。でも、それをしないのは何故か。分かる人はいる?」


姉御の質問に全員が黙った。そこまで考えている人がいなかったからだ。それを見た姉御はフッと笑ってから言った。


「その答えはね。そんなことをしても、一時的な幸せしか得られないからさ。」


姉御の一言にほとんどの者が首をかしげた。だが、昆布だけはそれを理解した。


「つまり、逃げたところで戦争は終わらないから闘うしかないって事でござるか?」


「まあ、そうだね。でももっと正確に言うなら、魔族はとてつもなく強い。それに対抗できるのは力を持った人間だけなのさ。だからあたしらのような強い人間が闘う。それは人類の為だとか、世界の為だとか、そう言う話じゃなくて、ただ単純にあたしたちが平和に生きるために必要だからって話よ。」


姉御の言葉にレイジは気づかされた。


「...確かに、そうだな。今は戦争中なんだよな。正直、まだ大規模な戦争をしてないから実感わいてないけど、いつ魔族たちがこの大陸を攻めてくるのか分からない状況だもんな。」


姉御はうなずいた。


「そう。あたしらはもう既に戦争の渦の中に取り込まれているのさ。どう頑張ってもそこから逃げることはできない。たとえあたしらがドラゴンフライを修理して人間たちから逃げていたとしても、いずれ魔族が人間大陸を制圧してあたしらを追いかけてくるだろうね。」


レイジは質問をした。


「じゃあ、人間たちが魔族に勝ったとしても、逃げた勇者ってレッテルが張られて平和には暮らせないって事か?」


姉御は再びうなずいた。


「そうだね。それに、この戦争に人間が勝つ可能性はほとんどないと思う。なにしろ人間たちは魔族に比べて弱いからね。17年前の戦争だって、勇者がいなかったら確実に負けて絶滅していたからね。」


レイジはその説明を受けてようやく現状を理解した。


「そうか。俺は、今が戦争中だっていう自覚が無かったな。だから闘うことを拒否してきた。だって死にたくなかったからな。だけど、今本気を出さなかったらどのみち俺は自由な人生を歩めないのか。」


姉御は深くうなずいた。


「そうだね。なんでこんな話をしたのかって言うと、レイジたちはその現状を正しく認識できていないようだったからね。自分たちがどれだけ理不尽な状況に置かれているのか。今一度確認させておきたかったのさ。」


レイジはその言葉が重くのしかかった。


「...確かにな。俺は、なんというか、ただの小競り合いみたいなそんなイメージだったよ。実際、魔族側はまだ大きな動きを見せていない。やったことと言えば最初の町を破壊して、俺たち勇者と出会って、一騎打ちをしたことぐらいだったもんな。正直、幻獣の方がよっぽど悪いことしてるって思ってたよ。」


レイジはそう言った。あんこたちはそれぞれ黙ったまま頷いてレイジの話を聞いていた。そしてレイジは話を続けた。


「でも、本当は今、俺たちはとんでもなくヤバい状況にいるんだな。逃げることはできない。対話することもかなわない。闘うしか、道が残されてないんだな。それ以外の道は、自由な人生を送ることができないんだな...」


レイジはここでようやく自分たちの置かれている状況を理解した。今までは対岸の火事のように、どこか他人事のように思っていたこの戦争を、自分たちの運命を捻じ曲げてしまうほどのとてつもなく大きな出来事だと理解した。そしてレイジは怒りが込み上げてきた。


「くそ!こんな大事な事に気づけずにいたなんて!俺はなんてバカなんだ!」


レイジにとって戦争は、物心ついた時には終わっていたものだった。だから戦争の悲惨さなんて知らない。さらにレイジは普通の人よりも圧倒的に強かった。だから何かが起きても大丈夫だろうと傲慢になっていた。そんな傲慢さに気づいたレイジは覚悟を決めた。


「...わかったよ。俺は、強くなるよ。そうじゃないと、俺は自由になれないんだろ?だったら、何が何でも強くなって、俺は魔王を倒す!そして、俺の自由な人生を取り戻す!」


レイジはここでようやく覚悟を決めた。その覚悟の言葉を聞いた姉御はフッと笑った。


「ようやくやる気になってくれたかい。全く、話したかいがあったよ。」


そしてあんこはそんな勇者っぽいレイジを見てとっても嬉しそうにしていた。


「レイジ!あたしすっごく嬉しいよ!!レイジが勇者みたいでカッコいいよ!あたし、うじうじしてたレイジが酷い人だって思ってた。けど、今のレイジはすっごく好きだよ!」


あんこはニッコニコで言った。レイジもフッと笑った。


「ありがとな!あんこ!俺は、もううだうだ言わねー。またあんこと姉御と一緒に旅ができる日まで俺は頑張る!そして、ゴゴと昆布とネネとヤミナも一緒に旅をしてくれたら最高なんだがな。」


レイジにそう言われてゴゴはガッハッハと笑った。


「俺はいいぞー!旅してりゃつえー奴と会えるんだろ?待ってるよりもずっといいじゃねーか!」


昆布は感動の涙を流していた。


「あ、兄貴ィィィィ!拙者は、いつまでも兄貴を一緒にいたいでござるよーーーー!!!」


ネネは恥ずかしそうにそっぽを向いた。


「まあ、レイジがそこまで言うんなら、一緒に旅をしても、いいけど?」


ヤミナは不気味に笑った。


「ふひひひひ!!だ、誰かにそんなに必要とされるなんて、う、生まれて初めてだよ...」


ヤミナは嬉しそうに笑った。そしてレイジは「みんな...ありがとう。」と言って頭を下げた。そして姉御に聞いた。


「じゃあ姉御!これからどこに行くのか、進路を決めてくれないか?」


姉御は顎に手を当てて考えた。


「そうだね...とにかくあたしらは強くならなきゃいけない。だからそれに適した場所がいいんだが...」


その言葉にゴゴは反応した。


「だったら!バトルマスタータウンはどうだ!?世界から最強の座を求めてつえー奴が集まる場所だ!強くなりて―んならそこしかねーだろ!?」


ゴゴは興奮しながら言った。姉御はうなずいた。


「確かにね。あたしも今そこが思い浮かんだところだよ。じゃあ、バトルマスタータウンに向かって行こうか?」


姉御の言葉に全員が「おー!」と意気込んで言った。その中にはヤミナもいた。


「ヤミナ!?お前も付いてくるのか?」


レイジは聞いた。ヤミナはヘラヘラと笑いながら言った。


「ああ、そのー、もし邪魔なら、ここで待ってるけど...そのー、れ、レイジ君ともっと話がしたいっていうか...そのー...」


ヤミナはもじもじとしていた。レイジはヤミナが何を言いたいのか分からずに眉をひそめていた。それを見た姉御はレイジをからかった。


「レイジ!あんた、モテモテじゃないか!?運がいい子だねー!?」


「ん?どういう意味だ?ヤミナは俺のことが好きなのか?」


レイジは単刀直入に聞いた。ヤミナは目玉をグルグルの渦巻きにさせて混乱した様子で言った。


「んえー!?んえーっと...ふ、ふひひひひ!」


ヤミナは明確な言葉にするのは怖かったのでやめたが、誰の目から見ても明らかにレイジのことが好きそうだった。


キャラクター紹介


「ヤミナ」


黒髪の中に紫色のメッシュが入った癖っ毛ロングの髪型、そばかすに眼鏡、三白眼の瞳、そしてふくよかなボディとめっちゃデカい胸をもった23歳の女の子。

彼女は人と接するのが苦手で常に一人で行動していた。それを可能にするほどの高い科学技術を持っていたため、そもそも他の人間を必要としていなかった。


戦闘能力はまるでなく、一般人以上に体が弱い。それは病気などではなく単純な運動不足によるものである。しかし彼女の開発した便利な機械を扱いそれを補うことができる。

また、彼女はその臆病さゆえに防衛機械の開発はすでにしており、『ドラゴンフライの番人』としてドラゴンフライで引きこもって守っている。


余談だが、今のところはこれで仲間メンバーは出揃った。これ以上増えることは無いので安心して頂きたい。減ることはあるが...

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